第13話 案内人の光、つなぎ手の影
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恒一が駆けつけたとき、
エイルは“恒一の影”に胸を貫かれ、光の粒をこぼしながら倒れかけていた。
「エイル!!」
恒一が抱きとめると、エイルの身体は驚くほど軽かった。
まるで、最初から光でできていたかのように。
影はゆっくりと腕を引き抜き、黒い霧を揺らして笑った。
――案内人よ。
――おまえは“物語を持たぬ存在”。
――つなぎ手を守る資格などない。
エイルは苦しげに息をしながらも、微笑んだ。
「……資格なんて……いりません……
私は……恒一さんを……守りたかっただけ……」
「エイル、喋るな! 今助けるから!」
恒一は必死に光を押さえようとするが、
エイルの身体は指の間からこぼれる砂のように、少しずつ崩れていく。
◆案内人の正体
残響が静かに言った。
「……案内人は“物語の外側”の存在だ。
物語を持たない代わりに、つなぎ手を導く役目を負う。
だが――影に触れれば、存在そのものが崩れる」
恒一は歯を食いしばった。
「そんな……そんな役目を……エイルはずっと……」
エイルは弱々しく首を振った。
「違います……
私は……あなたに出会えて……幸せでした……
つなぎ手としてのあなたを……信じていました……」
影が嘲笑う。
――案内人よ。
――おまえの役目は“つなぎ手を終わらせること”。
――守るためではない。
恒一は影を睨みつけた。
「黙れ……!」
影は続ける。
――案内人は“つなぎ手の終わり”を見届ける存在。
――おまえが消えるとき、案内人は“次のつなぎ手”を選ぶ。
――それが役目だ。
エイルの瞳が揺れた。
「……それは……本当です……
でも……私は……恒一さんを……終わらせたくなかった……」
恒一はエイルの手を握った。
「エイル……俺はまだ終わらない。
お前が信じてくれた“続き”を……俺は選ぶ」
エイルの瞳に、かすかな光が宿った。
◆つなぎ手の影の狙い
影はゆっくりと恒一へ歩み寄る。
――つなぎ手よ。
――案内人が消えれば、おまえの物語は“支え”を失う。
――終わりは、すぐそこだ。
「俺は終わらない。
影なんかに、俺の物語を決めさせない!」
影は笑う。
――では、証明してみせよ。
――“終わりを抱えたまま進む”ということを。
影が腕を振り上げ、黒い刃が恒一へ迫る。
その瞬間――
光が爆ぜた。
◆エイルの最後の力
エイルが最後の力で結界を張り、影の刃を弾いた。
その光は弱々しいが、確かに恒一を守っていた。
「エイル……!」
「恒一さん……
あなたは……つなぎ手……
でも……“終わり”は……あなたが選ぶもの……
影に……奪わせないで……」
影が苛立ったように唸る。
――案内人が……つなぎ手に“選択”を与えるだと……?
エイルは微笑んだ。
「あなたは……恒一さんの“終わり”を……決められない……
だって……彼は……“続く物語”を選んだから……」
影が怒りに震え、黒い霧が荒れ狂う。
――ならば……案内人から消す!!
影がエイルへ飛びかかる。
「やめろおおおおお!!」
恒一が叫び、影の前に立ちはだかった。
その瞬間――
恒一の腕の黒い傷が光り、影の動きを止めた。
影が驚愕の声を漏らす。
――なに……?
――つなぎ手の“終わり”が……光を……?
残響が叫んだ。
「恒一! それは“つなぎ手の選択の光”だ!
お前が“終わらない”と選んだから、影を拒んでいる!」
恒一は影を睨みつけた。
「俺の終わりは……俺が決める。
お前じゃない!」
影が後退し、黒い霧が裂ける。
◆案内人の消失
エイルの身体は、もうほとんど光になっていた。
「恒一さん……
あなたの物語は……必ず……続きます……
リオさんと……一緒に……」
「エイル……行かないでくれ……!」
エイルは微笑んだ。
「あなたに……会えて……よかった……
どうか……あなた自身の……続きを……」
光がふわりと舞い上がり、
エイルは静かに消えていった。
恒一はその場に膝をつき、拳を握りしめた。
「……エイル……」
影が低く笑う。
――案内人は消えた。
――つなぎ手よ。
――次は、おまえの番だ。
恒一はゆっくりと立ち上がった。
「……上等だよ。
俺の物語は……まだ終わらない」
影が揺れ、空間が震えた。
――ならば、“終わりの地”で決着をつけよう。
影は黒い霧となり、どこかへ消えた。
残響が恒一の肩に手を置いた。
「……行くぞ、恒一。
お前の物語の“終わり”を取り戻しに」
恒一は頷いた。
「エイルのためにも……俺は続く」
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次回予告
影が消えたあと、
湖面にエイルの残した光がひとつだけ漂っていた。
それは恒一の胸へ吸い込まれ、
静かに囁いた。
「……あなたの物語を……信じています……」




