画家に事情説明
「いい方ですね。艦長。
皆の憧れの方ですよ。
あの人が乗った艦に乗った方が仰ってました。
優しくて厳しい方だと。
指揮は豪快かつ繊細で負けず嫌い。
乗った艦は堕とされたことがないと」
フランシスカが言う。
「ああ、それ聞いた事がある。
副長とコンビを組ませたら最強だったって。
だから2人が夫婦になる時も、
一緒の艦の艦長と副長になる時も反対は少なかったって。
私情も挟まないから大丈夫だ、
別々に乗せるより、一緒の方が強いとか。
あの方々も認めていたし、
実際2人の実力を見せたら反対派も沈黙したって。
2人別々に指揮を取らせて競わせたら勝負つかなかったって話も聞いたことある。
互いに相手が何を考えているかが分かるから、
千日手になったとか」
アルが言う。
「最強の矛と盾が一緒の艦に搭乗しているようなものだもの。
私もテストパイロットに選ばれて、
搭乗するって決まった時は嬉しかった」
オトハが言う。
「司令、挙式をって言って2人に断られてから
こっそり準備してるんだよね。
『災厄』が来て討滅したら挙げるって、
2人が言ってたから。
有能な艦に搭乗できて僕ラッキーな人間かも。
って準備準備」
いそいそと空間収納から何かを取り出すアル。
「何を持っているの? 蝋燭?」
オトハが聞く。
「うん、浄化用の。
これを均等に置いて、
火を着けて術の効果を上げる手助けアイテム的なやつ。
こっちはそこのポルターガイストとか起こしてる絵画達用で、こっちはこの処分用の」
大小計10個ほどの蝋燭が並ぶ。
そこに警備員がやって来る。
「案内しましたが・・・」
「入れて良いですよ。
但し、騒がずにと。
絵が暴れ出す可能性があるので」
アルが答える。
「騒・・・。了解しました」
そう言うと離れていく警備員。
やがて
「ああいたいた僕の絵!窮屈だろう?ここは」
「なんだか人が増えてる?
ああ、あんたらが絵を処分するのか?」
「なんでだよ、
こっちはこの子のおかげで商売繁盛したのにさ」
「納得いかない!
何故最高傑作が落選なのた!?
ペポーナのアルピノキリン、
白くて外敵に狙われやすいキリンの保護を、
とメッセージにしただけなのに!
それが問題だと!?」
「この綺麗な湖!滝!パラディオ穴場の場所だ!
浄化の力があるはずなのにこんな所に押し込むなど、どうかしている!
しかもポルターガイストを起こすだと!?
他の絵はともかくこの絵に限ってそれはない!」
「なんだと?僕の絵こそないっ!
ただガラス工芸や花瓶の静物画だそ!?」
「その花瓶はあるだろう」
「何だと?そっちこそその女の絵!」
10数人が来て次々と声を出し始める。
「おい!ここで騒ぐと・・・」
警備員が声を出す。
すると
中の花瓶やコップがカチャカチャと音を立て始める。
段々と音が大きくなりうるさくなる。
滝はザザザと音を出し、湖の中のボートが動き出す。
抽象画は描くうねり出し、目?がこちらを見る。
白いキリンの親が絵画から顔をにゅるりと出し、
子キリンは絵からぴょんと抜け出す。
絵の中の女がにこりと笑い、手を伸ばす。
皆がそれを見、固まる。
パンパン!と手を叩く音がする。
するとザザっと音がした後絵が沈黙する。
子キリンと女は手を叩いた人物を睨みつける。
抽象画の目は物言いたげに見つめてくる。
「騒がない、と聞かされていませんでしたか?
絵を描いたアナタ達が騒ぐと反応するんですよ。
こら、キリン睨まない。
ここはキミの遊び場じゃないの。
女の人も、取り憑こうとしないで。
抽象画はこっち見ないの。
段々と物騒さが増してるな?
浄化だけで済むはすなんだけど」
声の主、アルが呟く。
「貴方は?」
画家の誰かが呟く。
変装を解くアル。
「DSEA本部所属、アルマート・ヴァータイト。
惑星レンネス出身の魔導師です。
この絵の鑑定と処分担当を任されています。
貴方達が所持している絵の具や筆について聞きたい事がありまして。
通すよう言いました。
お見知り置きを」
「緑の髪の魔導師・・・」
「組織凄腕の?」
「数年前、音楽祭でフルートを演奏していた人か?」
ヒソヒソと声が聞こえる。
「見習いであちこち回ってた時、
ここの感謝祭でフルート演奏したな。
1日だけ。
来ることパラディオの支部長に伝えたら、
ソロのフルート演奏会組まれてて。
懐かしいわ」
少し遠い目をしたアル。
演奏してたんだ、と思ったフランシスカとオトハ。
訓練校でみっちり訓練中だった為、
知らなかった(リュカも同じ)
「ここにある絵画達、
ペポーナで違法に密猟・採取された材料由来の絵の具を使用されています。
そのせいで、毎晩怪奇現象が起こっています。
ピアッティ少尉、説明お願いできますか?」
「はい。
パラディオガーディアン
フランシスカ・ピアッティです。
実際に見ましたね。あれは序の口です。
夜遅くなるとキリンの親子が絵画から抜け出し走り回り、
滝や湖はザバザバと音を立ててこっちを見て!
と主張して来ます。
ボートの人物も手を振って来ますね。
静物画の花瓶やガラス工芸の器達も音を立てて
演奏会を開催してますし、
女の人は黙って立ってこちらを見つめてくるだけですが、恨めしげに見てくるので怖いですね。
映像はこちらです」
端末から投影する。
バタバタとキリンが走り回り、
滝はザーザー音を立て、
ボートの人物もリズム良く手を叩いている。
花瓶達はカチャカチャと音を立ててワインはくるくると回り、
女の人は立ったままこちらを見つめている。
ぱくぱくと口を開き何かを伝えたがっているが、
警備員が首を傾げると顔に涙が。
泣いているようだ。
「静物画と風景画は合奏し始めています。
どこから覚えたのかカルメン演奏していました。
よく見るとトイピアノも描いてありますね、
そのトイピアノがメロディを演奏してます。
世が明けると鳴り止みますが」
「こちらの最も危険な絵は、
鳴き声に爆音が聞こえる事があります。
魔除けや霊よけに布をかけているにも関わらず」
淡々と説明する。
「この"悲しみのドール達"を描いた方にお聞きしたいのですが。
どうしてこのような作品を描いたのかを」
アルが引き継いで聞く。
すると出て来て手を挙げる人が。
ボサボサ頭の男性だ。
「作者のマルコだ。
これは・・・スランプの中でぼーっとしていて、
食事を届けに来た家事手伝いドールを見ていたら
降りて来たんだ。この光景が。
飲まず食わずで描いていたから記憶は殆どない、
気づいたら出来上がっていた」
ちょうど動画でカルメン聞いたからカルメン採用。




