第六十話 誕生!!カルバラー・ギベイオン
「裏切者風情が!!」
オーシャは乗機であるFOテルモピュライの右腕と左足のアンカークローをカルバラーへ射出しながら背中の2門のフォトンランチャーを連射する。
「見え透いた手を・・・」
ナールライトは右腕のアンカークロー目掛けてカルバラーの右腕を伸長、クロー内蔵のインパクトキャノンの影響を受けないクロー真下を掴ませると機体を大きく揺すってもう1つのクローとキャノンを躱す。
その間に自身の乗艦と相手方の2隻、計3隻のストラデゴス級機動戦艦の位置をレーダーとモニターで探る。
(私を左右どちらかのストラデゴスの主砲の射線上におびき寄せるつもりか・・・手が古いな)
だがこの機械特有の融通の利かなさが今はチャンスでもあるのだ。
とはいえこの陣形を採ってくる以上は起動部隊を中央に置かなければ部隊は壊滅する。その為自身と旗艦であるストラデゴス1隻で敵の2隻の牽制に回る必要があるのだ。この為にカルバラーを目標である敵艦へ向けてくれるのは好都合なのである。
(だが、こんな事は想定しているはずだが・・・だがもしもの時は)
目の前のFOの動きに変化した。飛行形態に変形したテルモピュライが両手足のアンカーを全て射出しながら錐揉み飛行で突進してきたのだ。
射出されたアンカー4つと本体が横と縦にジグザグ軌道を取りつつ時間差で迫ってくるのを捌くのは至難である。
「流石にっ・・・!?」
カルバラーは額中央の埋込式フォトンライフルを連射するがこの程度の被弾でどうにかなるとは考えていないオーシャは避ける事をせず包囲攻撃を続行する。
「砕けろ!カルバラー!!」
「タダでは済まん!!」
テルモピュライ各部が最接近した頃合いを見計らってナールライトはカルバラーのボルテックウェイブを周囲に発射。至近距離の為に自身とテルモピュライ双方が100万ボルトの電撃の餌食となる。
「グヌゥ・・・!コイツ信じられん!?」
「グウオッ!?だ・・・がこれで!」
離脱しようとするテルモピュライ本体を左腕のクローで拘束すると電流を浴びながら上方に配置されているストラデゴスへ突進する。
「まさか自爆特攻だと!?・・・いや電撃と重力波の2重バリアーで主砲を突破するつもりか!?ストラデゴス各艦主砲発射!!カルバラーと敵ストラデゴスを堕とせ!!」
「馬鹿め!私がそんな自己犠牲精神のある男に見えるのか!?カデシュ!!」
『行きます!』
ナールライトは牧野琴音の声に自身への不満が混じっている事に気づきながらも、命令を実行してくれるだけありがたいとも感じていた。
ナールライトの指令に従いカデシュType・Dがストラデゴスから発艦。
背中の翼を本体から分離、2枚のフォトン偏向機にすると1枚を自身の前方へ、もう1枚をカルバラーとストラデゴスの間に配置した。
偏向機はストラデゴスの主砲を弾いて拡散させる。
「主砲最大出力!同時にストラデゴス回頭!2隻共だ!多少の損害は構わん!!艦首を戦場中央部へ向けろ!!」
クレド総司令の突然の指令に0.5秒だけ動揺したストラデゴスクルーは命令を忠実に実行する。総舵手は艦体各部から火花を散らし、巨大戦艦2隻が真上から見ればハの字を作るように艦首を振った。
「何!?しまった?」
ナールライトの予測ではこのまま主砲内部に偏向機ごとテルモピュライを投げ込むつもりだったのだ。このままでは主力部隊の壊滅は必至である。
カデシュType・Dも主砲を防ぐ為偏向機を転回させながら反撃の為に機体を敵艦正面に移動していく。
「アテが外れたかい!」
オーシャは隙をついて飛行形態に変形させたテルモピュライにインパクトキャノンで敵機の左腕を破壊して離脱すると全てのアンカーをカルバラーの胴体と両腕に巻き付けると至近距離でインパクトキャノンを再度発射すると捕縛した獲物に青白い十字砲火の中心部へ投げ込んだ。
「アンタがやろうとしたことのお返しだよ!!」
吹き飛んだカルバラーの翼と両前腕部はリジェネレイトシステムで即座に回復するがパイロットであるナールライトが大勢を立て直すのに若干のタイムラグがどうしても発生してしまう。
「おのれ・・・!」
カルバラーとコルトレイク・フレシェット部隊は各々藻掻きながらも射線から逃れようとするが2つの光の激流は彼等の目と鼻の先に迫っていた。
そこに2枚の偏向機が飛来し激流を押し止める。弾かれた光の飛沫が回避できなかったフレシェットを爆散させ、コルトレイクとカルバラーの装甲を焼く。
「サークレイス!!」
オーシャの通信を至近で聞いたナールライトは驚愕で体が固まる。
「馬鹿な!カンナエはまだ修復途上のはずだ!?」
だが彼女の言葉を裏付けるように2隻のストラデゴスの間から巨大な緑色の光の渦が人類連盟軍に襲い掛かる。
始原のFOの1つカンナエのフォトンスマッシャーである。
今のカンナエは人間でいえば骨と皮だけの重度の栄養失調状態である。それをスマッシャーのみを完全に復元し、全身を補給用金属カプセルの『点滴』を受けているこの機体は3機のクレシィに支えられ復讐と執念の砲火を放ったのである
主砲を防ぎきった偏向機は2つとも溶け崩れて使い物にならなくなっていた。つまり迫りくる第3の光から人類連盟の機動部隊を守る物は何もない。
「・・・そうか!牧野さん、もうこれしかない!」
「北条君!?まさか!?」
「翔!?何する気?」
「ギベイオンは置いて来ているんだよ?」
琴音の懸念を相羽優歌とレンが素早く理解しつつも物理的に不可能であると考えていたのだ。
「出来る!こいつはどこにでも来るんだ!ギベイオン来い!!」
北条翔の叫びと共にカデシュはType・DからType・Nへ瞬時に変身。
さらに背後に突如現れた黒いモノリスがスライムの様にカデシュに纏わり付きカデシュ・ギベイオンへと変わっていく。
「コイツの防御力ならば!!」
スマッシャーの前に立ちはだかり光の渦に包まれたギベイオンにサークレイスとオーシャは鼻を鳴らす。
ギベイオンを包み込み、後ろにいた機動部隊の大半を飲み込んだ光の渦は、後方で待機していたナールライトのストラデゴスに直撃した。
辛うじて離脱に成功したカルバラーはただ見ているしかなかった。
『馬鹿な奴・・聞いているか、ナールライト?あの黒い装甲は我々の造った兵器を無効化するだけだ。つまり同じくセラの民の創り出したこのカンナエの攻撃は通すのだよ」
「しまった・・・主力部隊が全滅するとは・・・!アームレイ、艦は動くか!?」
『現在第3区画まで火災が発生し推進部のある第4区画にも異常発生!!これ以上の戦闘は不可能です!!』
(ここでストラデゴスを失う訳にはいかん・・・)
「撤退せよ!後続の艦隊にも現空域の離脱を通達!!」
軋みを上げながら後退をかける旗艦を守るように2柱の前に立ちはだかるカルバラー。
目の前にはヘーレム時代から付き従ってきたタラス・ダンやグルンヴァルト、そして人類連盟に鞍替えした際に集ってきたコルトレイクとフレシェットが無数の残骸と化していた。そしてパイロットが全員気絶し、上半身だけになったカデシュ・ギベイオンが漂っていた。
「死ぬ覚悟は出来たか?」
「フ・・ッハハハハハ!!」
オーシャの嘲笑はナールライトの哄笑でかき消された。
「恐怖で精神に変調をきたしたか」
「正常だよサークレイス、オーシャ!貴様達ヘーレムが知らず、このナールライトのみが知る事実を今こそ見せてやろう!ギベイオン!!我が躯を包め!!」
「「何!?」」
ナールライトの言葉に吸い寄せられるようにモノリスの黒いアメーバ状の粘性金属がカルバラーの全身を包む。
(我が先祖達よ!!貴方方が為しえなかった覇道を今!私が為す!!変転が世の定めならばそれを終わらせる永遠の帝国を広大な宇宙全てを我が手で!!)
攻撃的な野心に相応しい形に粘性金属は変化していく。結果
フードを被ったような頭部。額に大型の、側頭部には原型機と同じ埋め込み式フォトンライフルがレールに嵌め込まれている。
2重になった肩アーマー先端からボルテックウェイブ用の角が1個ずつ、計4本を生やしている
コートではなく軍用ジャケットを着たような胴体に背中にはカデシュ・ギベイオンと同じフード型のスラスター2基を装備され、腹部には砲口が追加されている。
両腕は倍以上に大きくなったクローが甲側に1本、側面に2本
下半身は黒い追加アーマーが膝と足の甲に追加
「ギベイオンは・・・カデシュだけの装備ではないのか?」
「目覚めたモノリスは5柱全てに装備できるのだ!戦闘力を数倍に跳ね上げてな!!」
(まずは邪魔な物を片付ける!!)
カルバラー・ギベイオンは両腕のクローを前方に展開し、両腕を伸長させる。
クローは三叉のトライデント状に展開され、強化前の6倍の長さに伸びた腕のフレームはカルバラー・ギベイオンの左右で主砲発射体勢にいたストラデゴス2隻の側面装甲を貫抜くと、両腕は巨大戦艦を木っ端のように引き摺っていく。
「司令!離脱してくだ・・・」
「お前達⁉」
最悪の事態を避けられないと知ったクレシィはカンナエを突き飛ばした。流れた赤い機体をテルモピュライが受け止める。
直後に2隻の巨大戦艦が船首から激突、主砲のエネルギーが暴発し、周囲のFO部隊と艦船を巻き込みながら爆散していく様をサークレイスとオーシャはマヒした様に見ているしかなかった。
「うう!?」
「これ程の戦闘力とは!?」
「どうだ?!このカルバラー・ギベイオンの力はこんなものではないぞ!?全力を見せられるように精々足搔いてもらおうか!!」
2対1
状況的には有利ではある。だがカルバラー・ギベイオンは圧倒的な戦闘力とナールライトの気迫が戦場を支配していた。




