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Galaxy Trail  作者: 紀之
銀河の中心へ

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第五十一話 乾いた共闘




 (ガルバオトめ!!調子に乗りおって・・!)


ヘーレム試作艦ユニタリスのオペレーターの眼を通して女帝AT01はこの個体を製造した事を心底後悔していた。最大の問題なのはガルバオトの設計図とはAT01同様のプロセス、つまり創造主たる『セラの民』オリジナルの製造法に則ったものだった。


このタイプの機械人間は心理構造が人間とほぼ変わらない上に彼女の監視や精神支配を受けつけない。

それでもこれを造らざるを得ないのはFOシクの問題だった。


この機体は表向き前線での指揮官型FOの試作機という事になっていた。だが北条翔らが推測した通り、このマシンの真価はサンバルテルミシリーズを指揮しつつ、これらとは別のアプローチでの対カデシュ・カルバラー用FOなのだ。


250km、360度をカバーするセンサーやフォトンソードを標準装備し全身を対フォトン吸収装甲で覆ったこの機体を最大限に運用するには金脳ですら難しかった。


ある意味では5柱より扱いが難しいシクは人間と同等の発想力や閃きが必要なのである。


今のところガルバオトの総合評価が『扱い辛い』で済んでいるのは彼女の期待通り、サンバルテルミシリーズを損耗させずなおかつ仮想敵2機を圧倒しているからであってこれからもそうだとは言い切れない不安が女帝を苛立たせる。

だが彼女は現状目の前の戦いの結果を見ない事にはどう対応するかを決めかねていたのだった。



「リーチは長いが懐に入れば!!」


敵FOシクの武装の欠点を見抜いた翔はフットペダルを踏みこむ。


敵機の鞭のようにしなる右腕と左足の先端からのフォトンソードをクルクル回転しながらカデシュ・ダンType・Nをシクへ肉薄させる。


「やるな!?だがここまで見抜いたかよ?」


ガルバオトは後方へ回り込むカルバラーの動きを注視しつつ、シクの躱された手足の先のデバイスからフォトンライフルを連射しながら右足を跳ね上げた。


「ライフルとソードが兼用なのか!?」


レンは驚きながらも右翼を操作し首への狙撃を防ぐ。翼先端に穴を開けながらしかし、威力を減殺されたビームが後ろ首に当たり、カデシュ・ダンのコクピットを揺らす。


「まだだ!実体剣なら!!」


翔は体勢を崩しながらシクの右足のふくらはぎのスラスター目掛けて右翼付け根のプラズマソードを射出する。


「後ろをとったぞ!」


真後ろからもカルバラーのトライデントが振り下ろされる。


「フン・・・」


ガルバオトは敵の挟撃を鼻で笑って乗機の左腕を180度回転させ先端のフォトンライフルで得物ごとカルバラーの右腕を逆に撃ち抜くとそのまま剣が突き刺さった右足を振り下ろしカデシュ・ダンを叩き伏せた。


「な‥に!?」


「グゥ!?」


「貴様ら何か忘れてやしないか?」


「ッ!?つう!?」


ガルバオトの指揮に従い遠巻きに戦場を『観戦』していたサンバルテルミⅢはシクの上下からサカデシュ・ダンとカルバラーへ右腕の回転ノコを振り下ろす。


攻撃を受ける訳にはいかない2柱は体を開いてギリギリのところで直撃を避けたが、装甲についたかすり傷から白煙が吹き上り、たちまちギザギザの傷跡が広がっていく。


「おのれ!コルトレイクは何をしている!?」


ナールライトはウイルスの影響で走査線が走る愛機のモニターがサンバルテルミⅡ3機の攻撃に苦戦するコルトレイク・ガンナーを映しだすのを見た。


「元はと言えば貴様がこいつらを造ったんだろうが。それが牙を剥く事を承知で反乱をおこしたんだろ!?まあ、今回の襲撃の為に大分改良させてもらったがな」


「改良だと!?」


「ま、攻撃が当たった時にウイルスの増殖とⅡにフォトン砲を吐く機能を付けた程度だが・・・な!!」


(強行偵察のつもりだったが連中が連携の取れない今こそ2柱打倒の絶好の機会だな)


ガルバオトには敵はバラバラに行動しているようにしか見えない。


シクは対5柱ウイルスの影響で動きが鈍った敵機2体へ両腕のフォトンソードを叩きつけるべく大上段に振り上げた。


だが親衛隊長は自部隊がすでにアーヴィダル要塞下部を臨む位置へと誘導されている事に気づかなかった。ストラデゴス級機動戦艦が要塞上部の大型ハッチから出撃していたのだ。


ナールライトの腹心アームレイの号令がストラデゴスブリッジに響き渡る。


「ストラデゴス主砲発射!!」


大都市を一撃で消滅させる艦首主砲が敵艦ユニタリスに向けて放たれた。


「マズい!?」


ガルバオトは目の前の敵機を放って(きびす)を返して敵の砲撃の射線上に躍り出るとその装甲でエネルギーを拡散・吸収にかかる。


突撃を掛けようとするカデシュ・ダンにカルバラーが接触する。


『待て。それよりもゲヘナバスターの準備だ!出来るか?』


「出来ますが・・・出力や照準が・・・それに艦砲を吸収する奴を倒すなんて事が・・・」


『出力は最小限でいい。2匹の害獣はこちらで引き受ける』


カルバラーは迫る2機のサンバルテルミⅢの前に立ちはだかると1機の回転ノコをトライデントの柄で受け止め、槍が溶かされる前に蹴り飛ばすと脇をすり抜けようとしたもう1機を突き飛ばした。


「奴の言う事に従うのかい?」


「・・・俺達にはいい案が浮かばない。生き残る為にはどんな事でも試してみるべきだと思う」


「でも照準が・・・モニターが死にかけているのに」


いつになく弱気な優歌に翔は意を決して言った。


「俺がコクピットを開けて直接視界を見て撃つ。皆はシートの後ろに隠れていてくれ」


「カケル正気か!?全員焼け死ぬかもしれないよ!?」


「もうこれしかないんだ。済まない・・ナールライトを信じられないなら、俺とカデシュを信じてくれ」


「わかった。だけどあたしはシートに隠れるなんてしない。このまま最後まで見届けさせてもらうよ」


「私も・・・!」


「モチロン、アタシも!!」


「皆・・・!掴まっていてくれよ!」


翔はコンソールを操作し、緊急用の爆裂ボルトを操作する。機能は生きており、カデシュ・ダンの喉の装甲が弾け飛んでコクピットが丸見えになる。


同時に頭部と首回りに火花を散らしながら口部にエネルギーが集まっていく。


「ゲヘナハイバスター・・!」


異変に気付いたサンバルテルミⅢ2機が発射を阻止すべく左腕を上げ、指先に仕込まれたアンカーの狙いを定めた。


「させん!!」


ナールライトは手近の1機の腕を抑え込み、もう1機の肘に右腕を伸ばしてクローを突き立てる。カルバラーの全身とコクピットの至る所でスパークが発し、悲鳴ともとれる軋みを上げる。


「グ・・・ヌッ!?持ちこたえて見せろカルバラー!!ここで死ぬなら到底我が野望は果たせん!!貴様らも体の自由を奪われる苦しみを受けるがいいッ!!」


ナールライトは咆哮と共に左肩の角をサンバルテルミⅢに突き立てパーツを溶かされながらも構わずボルテックウェイブを流す。さらに右肩は敵機ではなく自身の右腕を狙撃、焼けただれた右腕を伝ってもう1機の内部へ直接電撃を流し込んだ。


電撃を受けてサンバルテルミⅢ2機の機体が熱によって内側から膨れ上がり、体内の装甲分解溶液をまき散らしながら吹き飛んだ。死に際の分解溶液をまともに受けたカルバラーの半身が溶けてなくなっていく。


「ナールライトさん!?」



「構うな!やるべき事をやれ!!」


「・・・いけぇ!」


ストラデゴスの主砲の光が消えると同時にカデシュ・ダンはゲヘナハイバスターを発射。渦巻く光の帯は主砲を完全に吸収したシクの胸に直撃する。


「バカが!!!今更この程度の攻撃でどうにかなる・・・と!?」


『バカは貴様だ』


ナールライトの嘲りがシクのコクピットに響くのとコンソールがスパークするのは同時だった。連鎖的にシクの全身に爆発が内部から吹き出していく。


「しまった!!ここが吸収限界値だったのか!?」


ガルバオトは自身のミスを認めると撤退を決意すると母艦へ退く。


(やはり吸収量には限界があったか・・・AT01がこちらの手が届かぬ神ではないとの証明にもなるがあのFOが難敵ある事に変わりはない)


ナールライトは安堵とため息の入り混じった呼吸を小さく漏らすと追撃をはやるコルトレイク隊を制止する通信を入れる。


「追撃は無謀だ。それより機体の修理と補給を急げ!」


『でも!』


「連中がたった1艦でここに来ると思うのか?伏兵が待ち伏せていたらそれこそ全滅だぞ」


ナールライトは言っていて詭弁だと感じるが、あり得ない話ではないとも思えてきた。


特殊装備だらけで汎用性が低く、コストばかりかかる『金喰い虫』であるとしてサンバルテルミシリーズの評価はヘーレム内では低い。


そのマイナーチェンジマシンであれば前評判は芳しくはないだろう。


(ならば後詰の部隊が居ても不思議はないか・・・出て来なかったのは予想以上に連中が健闘した、つまりこちらが弱かったという事だ)


カデシュとカルバラーはそれぞれコルトレイクとタラス・ダンに引かれて要塞へ帰還していった。



2週間後


カルブンクルスを旗艦とする15の艦艇で構成される人類連盟軍第18特務戦隊がアーヴィダル要塞からヘーレム内銀河へ向けて旅立っていった。


目標はかつての惑星セラの秘密工廠。そして人類連盟軍主力艦隊の行き先を誤魔化す囮でもあった。

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