第五十話 新FOシクの実力
『敵艦からFO出撃!サンバルテルミシリーズと先頭は・・・機種不明!?』
アーヴィダル要塞の司令部からの報告と映像が人類連盟の各FOのモニターに映る。
「先頭の奴はサンバルテルミの強化発展型に見えるな。強行偵察のついでにカルバラーとカデシュを獲るつもりか・・・?」
『何も若殿が出撃する必要は・・・』
カルバラーのコクピットで一人ごちるナールライトに彼の副官、アームレイは苦言を呈した。指揮官は後方でどっしり構えていろ、というのだ。
「いや、ここで出ても出なくても私の評価は下がる。同じ下がるならここで出て前線の兵士の士気を下げぬ方が良い。大半の上級議員共は自分の命が脅かされない限りはしきたりだの将官の器で無いなどと言うだろう。現実の戦場を知ってもらう為にもこの要塞を会議場に指定したのだからな。それよりストラデゴスの発進を急がせろ。船首ブラスターで敵艦を撃て」
副官の心配を一蹴するとナールライトは要塞の正面ゲートにカルバラーを向かわせる。
一方、反対側の要塞裏側のゲートではカルブンクルス組のFOがカタパルトに乗って発進間近であった。
「カケル!外に出たら強化Type・Gになるよ!」
「任せた、レン」
『後方支援はアタシらに任せて!』
「ラナ、機体の調整は良いの?」
『あの優男が新型を回してくれたんだ。期待してくれていいよ!』
後方で出撃準備を待つラナ達3機のコルトレイクは後に『後期型』と言われる原型機より少し細身の機体だった。
武装は変わらないがプラズマパイクは柄が伸縮式になり、フォトンバズーカには銃口にメガチャージャーユニットを接続してメガバズーカ砲として使用する事が可能になっている。
今いる3機はこの砲戦仕様だった。
レンはモニターの中のラナに手を振って自機を発進させるとカデシュ・ダンType・Gへと変身させた。
後ろの席の牧野琴音と相羽優歌はレーダーとモニターを見て首を傾げる。
「まだカルバラーは出てきていませんね・・・」
「他に敵は居ないよ!前だけ」
優歌は自分の後ろに座っている幼馴染の北条翔をちらりと見やる。
先頭を除く5機の判別はレーダーとモニター共に彼にとって因縁のサンバルテルミシリーズである事を示していた。変に気負っていないか心配なのだ。
「大丈夫だよ。むしろ攻略法が判っている分やりやすいってもんさ」
翔も優歌の気遣いを感じて穏やかに返す。
(そうだ・・・ⅡとⅢの混成とはいえカデシュ・ダンで遠距離から攻撃されればなす術がないのはわかりきっているのに何故出して来た?特にⅢは2機ともあの回転ノコ装備の近接型と来ている。相手の指揮官は何の策を用意していない素人なのか?)
彼にはグレーの敵の新型にサンバルテルミに似たものを感じ、その性能によほどの自信があるのだろうと気を引き締めてモニターを注視した。
「やはりな・・・まずはカデシュを出して来たか。カルバラーは奇襲担当といったところか・・・ユニタリスは回避行動に専念しろよ!ストラデゴスの威力はよく知っているだろう!?」
新指揮官ガルバオトは自身のFOシクに急制動を掛ける。同時に5体のサンバルテルミシリーズの内、3体のサンバルテルミⅡは逆に加速し、獲物たるカデシュ・ダンへ剣を振るう。
「このっ!!」
横薙ぎ、真っ向、そして逆袈裟。
レンは機体を揺するように最小限に動かし紙一重で3つの斬撃を躱すと彼らの後ろをとると右手のフォトンライフルを向ける。
(まだ撃てない)
距離が近すぎた。下手に攻撃すればサンバルテルミシリーズの機体内部を血液の様に巡回する対カデシュ・カルバラー用の装甲分解溶液を浴びる事になるからだ。
カデシュ・ダンとサンバルテルミの相対距離が十分遠のいたのを確認し、レンはトリガーに掛けた指に力を込める。
「レン!!後ろから攻撃!?4連射!」
翔の声にレンは軽い舌打ちと共に左手のフォトンライフルを拡散モードに切り替えて光の散弾をバリア代わりに放つ。
後方へ下がったシクが長くグニャリと曲がった両手足の先端からフォトンライフルを放ったのだ。ライフルは通常の機体では考えられない軌道から迫り2発は撃ち落とされたが残りが左肩と右脇腹に直撃した。
「かかった!」
ガルバオトは予めカデシュの動きを予測し、部下5機に敵を包囲するよう指示を出していたのだ。サンバルテルミⅢとⅡのアンカーが襲い掛かる。
「ちょっとレン!?」
「舌噛むよ、ユーカ!」
レンは機体をサンバルテルミⅢの目の前に飛び込ませ、機体を捻る。
カデシュ・ダンを敵の左指の5本のアンカーの間から紙一重の距離に置いたのだ。
「レンさん、左右からアンカー、前後から敵機来ます!」
「わかってる!」
カデシュ・ダンは両腕を上げ両腕のフォトンライフルに左右のサンバルテルミⅡのアンカーを巻き付けると後方から斬りかかって来た3機目に向けて背部のホーミングレーザーナパームと両肩後部の小型フォトン砲を連射し牽制。同時に両腕を振り上げ斜め下に振り下ろしながら正面から回転ノコを唸らせて迫るもう1機のサンバルテルミⅢを両足で蹴り飛ばした。
「皆行くよ!!」
『『『待ってました!』』』
カデシュ・ダンのコクピットにラナ達の声がハウリングする。
4機のサンバルテルミが激突した瞬間カデシュ・ダンType・Gはフォトンライフルと両肩前部のフォトン砲を連射、レンの動きに合わせて敵を包囲するように動いていたコルトレイク・ガンナー3機も各々のメガバズーカ砲を放つ。
「やるな!聞いていた以上の腕だ!だが・・・」
「な!?割り込んだ!?庇うのか!?ヘーレムが!?」
信じられない速度でサンバルテルミシリーズの前に立ちはだかったシクに人類連盟のパイロット達は驚愕する。
「違うな。お披露目の為だよ!!」
シクは全ての攻撃をまともに受ける。シクの装甲に当たったフォトンは拡散し細い糸の様に機体を包むとその『体』に吸い込まれていった。
「バカな・・・!?直撃したのに!?」
コルトレイクパイロットの1人は本能的に機体を後退させようとした。
「弾いた・・・!?いやフォトンを弾いて吸収する装甲?レン!?優歌と交代を!!」
「遅えよ!!」
レンは唇を噛みしめカデシュのメインコントロールを優歌に渡す。
カデシュ・ダンのコクピットシートが回転を始めた瞬間、激震が走る。シクの両手足の先端から長いフォトン光が伸びカデシュ・ダンと3機のコルトレイク・ガンナーの腕を切り裂いたのだ。
「きゃあ!?」
優歌は機体の熱の感触を脳に受けた頭痛に蹲る。『変身』が失敗し強制的にシートが再び回転、Type・Nへ『戻る』
「優歌ちゃん!?あれは・・・もしかしてフォトンソード!?」
回転する自分のシートが正面に来た時、琴音は敵の新型機の武装に慄然とする。
彼女はフォトンソードは破壊力こそ高いがフォトンを剣状に収束しなおかつ敵を両断出来る威力のデバイスの成算コストが高い事と仮に収束してもその超高熱でデバイスが溶ける事から使用時間が極めて短い点でヘーレムでは採用が見送られていた、という話を思い出していた。
だがそのデメリットを克服したとなればカデシュ・ダンやカルバラーの2柱がいるというアドバンテージ差の開きが無くなる事を意味する。
「ライフルじゃない・・のか!?」
翔は長く、鞭の様にしなる腕先のフォトンを躱すが振り上げられた手足の動きの軌道を見誤り左足と右の翼を貫かれる。翼を貫いたフォトンはドリルの様に回転していた。
「うグっ!?」
翔は頭痛を堪え、シクの背後から飛び出したサンバルテルミⅡのソードをカデシュはシクへ突進する事で躱す。だがシクは機体を回転させ突進を回避。
「しまった!?」
「死にな!!」
ガルバオトは最高出力にしたシクの両腕のフォトンソードを敵機の首筋目掛けて伸ばす。
急所を庇おうと伸ばした右腕を貫かれるカデシュの背後からもう一本のフォトンソードが迫る。
「ダメっ!?」
思わず目を閉じた琴音は瞼越しにスパークを感じ恐る恐る目を開けた。
フォトンソードは貫いていた。カルバラーの伸縮した右腕を。
「ようやくお出ましか、カルバラー!!これで役者がそろったって訳だ。このシクの獲物がな!」
「まさかここまでの威力と発振時間とは・・・」
破損し、修復し始めた右腕を引き戻しながらカルバラーがカデシュに並ぶ。
「ナールライトさん!奴は!?」
「話は後だ、カデシュのパイロット諸君。この新型を破壊するぞ」
FOシク。
サンバルテルミシリーズの指揮官機として生を受けた新型FOと古のFOたるカデシュとカルバラーがここに相対したのだった。




