第四十六話 アーヴィダル要塞攻略戦(中)
アーヴィダル要塞は各所に設置された新兵器反物質砲で銀河各地からダークゲートを通ってやって来た人類連盟艦隊を消滅させた。だが要塞中央部に設置された反物質砲が『事故』で崩壊し溢れだした反物質と爆発で要塞守備隊の壊滅と要塞そのものに致命的な損傷を受ける事となった。この消耗でも総戦力はヘーレムが圧倒していた。
だが双方立て続けに起こった異常事態に指揮系統が一時混乱し戦況は膠着状態となった。
この事態を最初に崩したのはヘーレム側の総司令ナールライト駆るFOカルバラーだった。
彼は全軍に要塞正面の人類連盟艦隊への総攻撃を通達すると同時にカルバラーのクローで捉えたカデシュType・Gを引き寄せる。
「チッ・・・!」
呆然としていたレンはコクピットの振動で我に返ると敵機に掴まれたままの機体のスラスターを吹かし、カルバラーの右腕が元に戻ったのと同時にカデシュを反転、カルバラーの背後を取ると両腕のフォトンライフルを連射した。
「グ・・・!?おのれっ!!」
カルバラーはバックパックを損傷しつつも下降して4射目を躱し両肩の角から100万ボルトの電撃ボルテックウェイブを発射、カデシュを電撃で感電させる。
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
カデシュのコンソールが火花を上げ北条翔と相羽優歌は電流でシートからずり落ちた。
「ググっ・・・コトネ悪いけど・・・!?」
「任され・・・ましたっ!」
レンの脳が黒焦げにならなかったのはカデシュの防護機能が他のFOより優れていたからに過ぎない。
天井から下がるヘルメットが上に引き上げられ、座席が右に2度回転しレンから牧野琴音にメインパイロットを交代する。
電撃を受けながら後退するカデシュType・GはType・Dへと『変身』する。
「電流を受けながら変身ができるか!?」
ナールライトは試すような言葉を呟く。
琴音は脳に痺れさせながら翼を移動シールド・アシミレイションガードナーへ変形させ電撃を防ぎきった。
喉まででかかった感嘆の声を押し殺し、カルバラーをカデシュと艦隊を守るように飛び回る盾の隙間を縫うように飛ばす。オーシャのFOテルモピュライも同様だ
テルモピュライを飛行形態のままカデシュに肉薄する為に急降下した瞬間にカデシュを守るようにカルブンクルスが2機の間を過ぎ去っていった。
人類連盟艦隊は全速力で最も防備の薄い箇所目掛けて要塞へ接近する。
「少しでも要塞の近くに行くのだ!ストラデゴスの主砲も要塞を傷つけてまでは撃てん!!」
惑星ザルツの比ではない砲撃が艦隊を襲う中ヴォロダ司令は司令席から両腕を振り回して檄を飛ばし続ける。左後方のカルブンクルスが要塞の破れ口を広げるべく艦砲を集中させていた。これに続いて他の艦船やコルトレイク、フレシェットも各々の武器を集中させる。
当然敵の侵攻を防ぐ為にグルンヴァルト(一般兵用)やヘイスティングス、エスノセントロン級やオートノミー級空母が応戦し、破れ口を塞ぐように重砲撃FOクレシィが周りを囲って砲撃を掛ける。双方の放つフォトン光の交錯し互いのFOや戦艦を爆発四散していく様はまさにザルツ戦を上回るこの世の地獄の様相を呈していた。
『このままカデシュを攻撃するのかい!?』
目移りしている間に獲物に逃げられたオーシャはType・Gへ再変身したカデシュのフォトンライフルを躱しつつ苛立ちを爆発させる。
事実、要塞正面に展開するヴォロダ率いる人類連盟艦隊は3柱の鼻先を全速力で通り抜けていくからである。
『奴を除かなければ後々面倒になるだけだ!』
サークレイスはカデシュこそこの戦争において最大の障害だという、ナールライトの考えに賛意を示していた。
艦隊諸共カデシュを破壊すべく放ったカンナエのホーミングレーザーナパームをType・Dのアシミレイションガードナーに防がれ歯噛みする。
「レンさん・・・流石にもう・・!」
琴音はサイドモニターを見ながら脂汗を額に浮かべる。
モニターにはカデシュのリジェネレイトシステムによりナパーム弾でドロドロに溶け落ちたシールドが背部で再生される様が表示される。同時にそれは『変身』や戦闘に必要なエネルギーも使われている事を意味する。既にエネルギー残量はカデシュ・ダンへの強化変身1回分しか残っていない。
「う・・・牧野さん、ここは休んでくれ。Type・Nで3機の内1体に攻撃を絞る以外ない」
「やっとお目覚めだね、カケル!?それで相手は?」
「レン、牧野さんすまない。相手はカンナエだ。機動力は1番低いしあの武装でガンガンやられちゃ味方が危ないから・・・な!」
再びシートが回転する。「ギャ!」という優歌の悲鳴と共にカデシュはType・DからType・Nへ、さらに翔は頭上のレバーを引きカデシュ・ダンType・Nへと機体を変化させる。
「これが・・・!?」
「例の奴か!?」
サークレイスとオーシャは奇妙な既視感に囚われながらも初見参の相手に自機の両腕を向ける。
「サークレイス、オーシャ!?離れろ!?奴の火力はこちらを1撃で撃破しかねんのだぞ!」
「あの形態が多方向からの攻撃に対応できないのは判っている!」
ナールライトの警告を無視する2人にカルバラーもカデシュ・ダンを囲むように伸縮式の右腕を伸ばす。
敵のパイロットの目移りを期待しての事である。
だが包囲されたのは彼等ヘーレム側の方だった。
突如視界外それも後方からの長距離砲撃に曝されたのである。
「うおおお!?」
「一体どこから!?」
カンナエは右肩、テルモピュライは左の翼と左腕を吹き飛ばされ体勢を崩す。カルバラーも右のクローと頭部を損傷した。
「あれか・・・?人間共め!一丁前に長距離砲撃機を誂えおって!?」
リジェネレイトシステムで損傷を瞬時に再生したカンナエのモニターはカルブンクルス上に陣取ったラナ達の『コルトレイク・スナイプバスター』がフォトンメガバズーカをこちらに向けている様を映す。
要塞前での激戦の中わざわざ5柱の戦いに割って入る勇気や振り向ける戦力の余裕などないというヘーレム側の裏をかいたヴォロダ司令の読みと戦友を助けるというラナ達の思惑が一致した結果である。
再びこちらに向けられた砲口から赤みがかった緑のフォトン光が3柱を襲う。
「だが!」
カンナエは斬りかかってくるカデシュ・ダンへ向けて左肩のプラズマチャクラムを切り離すと敵機の腕が振り下ろされるタイミングを見計らって輪の裏を蹴り飛ばした。
「しまっ!?」
カデシュ・ダンのプラズマソードがチャクラムを真っ二つにするのと同時に飛来したメガバズーカが輪の破片ごとカデシュ・ダンの半身を飲み込む
「終わりだ!!」
カンナエは両腕のツインフォトンライフルを照射。
「まだだ!!」
翔もカデシュ・ダンのロングフォトンライフルを撃つ。
4条の光条がそれと同じ太さの1条の光条と激突、弾かれカンナエの左腕を完全に消滅させるだけに終わった。
「減衰された・・・?駄目・・なの!?北条君!?上からテルモピュライです!?」
飛行形態となったテルモピュライの動きはセンサーアラームや琴音の警告より早い。覆いかぶさるに舞い降りたテルモピュライの四肢がこちらに向く。
『確かに終わりだ』
その声の意味する事を理解出来た者は誰もいなかった。
伸長したカルバラーの左腕のクローがカデシュとテルモピュライの間にねじ込まれるのと逆側の腕に握られたトライデントが再生を始めたカンナエの腕のフレームを斜めに突き抜け喉のコクピットまで到達していたのを見るまでは。
「ナールライト・・・・!?何をして・・・・いる!?」
『初めからこうするつもりだった。予定よりかなり早か』
ノイズ交じり同僚の非情な宣告を最後まで聞くことなくサークレイスはカンナエの機体から脊髄ごと頭部を切り離す。脱出装置を作動させたのだ。
「そんなバカな・・・!?奴はどうやってこちらを騙し続けていたのだ!?・・・生きているなサークレイス!?お前を回収して撤退する!」
(浅かったか・・・?無意識に仲間意識を持っていたというのか?バカな・・・!?)
ナールライトはテルモピュライがカンナエの脊髄を掴んでストラデゴスの1隻へと後退していくのをボンヤリと眺めている自分の浅はかさを呪う。
「この期に及んで裏切るなんてどういうつもりだ!?」
翔にはナールライトの行動は全く理解できない。彼に関する記憶で翔の脳裏に最初に浮かんだのは冥王星で両親をサンバルテルミの頭脳回路に組み込まれ死闘を繰り広げた事だった。
『私は、私達は君達の同志だよ。君達が生まれるずっと前から』
「信じられるもんか!!仮にそうだとして今更戻って来るなんて・・・!?これまで一体何人死んだと思っているんだ!!」
激昂するレンの怒りを涼風の様に受け流したナールライトは外部スピーカーを入れると朗々と宣言する。
『この戦域にいる人類連盟諸君!!私はヘーレム皇帝の側近にしてFOカルバラーのパイロット、ナールライト。そして今回のアーヴィダル要塞攻略戦を発案した人類連盟の領袖テオスでもある!!これより全人類連盟艦隊は私の指揮下に入ってもらう!』
と




