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Galaxy Trail  作者: 紀之
人類側の反撃

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第四十二話 ザルツ攻防戦(中)




鉱山惑星ザルツ近海で人類連盟艦隊と機械帝国ヘーレム艦隊の所属艦艇は互いに砲やレーザーナパームを撃ち合いながら互いのFOを出撃させる。


戦場はそれぞれの主力艦隊が相対するザルツの前方115kmの地点とヘーレム軍最後方に配置されたヘーレム旗艦たるストラデゴス級巨大戦艦周辺の2地点だった。


緒戦の主力艦隊同士の対決は、ヘーレム軍がニセの配置図を人類連盟に奪わせた事による動揺を誘った事で優位を保っていた。


だが人類連盟が陣容を立て直し、FOコルトレイク部隊を前面に押し出した事で戦局を押し戻し始めていた。


密集隊形を取るコルトレイク隊のシールドと装甲は敵の艦砲や敵FOタラス・ダン、ヘイスティングスの攻撃を物ともせずに進軍する。


機動性や運動性が大幅に勝るタラス・ダンやヘイスティングスが側面や背面に回り込めなかったのはコルトレイクと同時運用する支援戦闘機フレシェットによるところが大きい。


この戦闘機がホーミングレーザーナパームを嵐の如く発射し、敵FOの動きを封じ込めたところをコルトレイクのフォトンバズーカの集中砲火を受けて爆散するか集中砲火を掻い潜ってやっとのことで肉薄してもプラズマソードやクローよりも間合いの長いプラズマパイクに貫かれて爆散していった。


この原始的過ぎる人類連盟側の戦術が成功したのは、陣形がヘーレム側の動きを制限できるようにしたからである。


正面からの攻撃が有効打になりにくいコルトレイク隊の最右翼側(ヘーレム側から見れば最左翼側)の機体は盾によって自機を守る事が出来ない以上はヘーレム側としては左に左に陣形を突出させるか上下に回り込むしかないのだ。


結果、ホーミングレーザーナパームによって機動力を削いでしまえば反応の遅い人類でも敵の移動先を容易に想定することが出来るのだった。


「オグン司令、こちらが優勢です!!このまま押し切りましょう!」

主力艦隊の司令官、モグラのようなオモン人オグンは坐乗艦ラッダイト級5番艦『グリネイド』のオペレーターの上ずった声を窘める。


「待て!ヴォロダ艦隊が遭遇したという新型FOは出ていないのか?」


「反応なし!もしかすると突撃部隊の方面へ全て配置されているのでは?」


「そんな馬鹿な事があるはずが・・・フレシェット隊の一部を偵察へ回せ!各艦艇は後詰のタラス隊を発進させろ!ここから先はザルツからの砲撃も来る!!総員気を引き締めろ!戦いは終わっていないのだぞ!!」


人類連盟は左に寄った敵陣の中央突破を図ろうと錐の様に細長い隊形を取って突破を図る。だがオグンの懸念は当たっていた。原始的過ぎる戦術に対応ができなかったヘーレムは徐々にこの布陣で要を見出し反攻の機会を伺っていた。


ヘーレム主力艦隊を率いるクレド提督はサメに似た巨大MOランビキの準備が整った報告を受け当初の取り決め通りの号令を下した。


「部隊を前方に押し出せ!FO部隊は戦闘機を狙え!奴らの火力も射程も大した事は無い!!艦とFOはMO部隊に任せるのだ」


クレドは親衛隊とは関係の無い『通常』の軍隊の所属である。親衛隊と別行動をとる事でむしろイキイキしているくらいなのだ。


彼等の所属する第一艦隊の総司令とは女帝である。つまりこの艦隊の敗北は女帝の敗北を意味する以上はナールライトらと同じように親衛隊に思う事はあれど足を引っ張るという事は考えない。


命令を受けてMOバン・マリを吐き出したエスノセントロン級強襲揚陸艦とMOランビキが縦に長くなった敵へ向けて突っ込んだ。


「は・・・速い!なんだ!?あれは!?フレシェット!!援護してくれ!!」


野生動物の頭脳を移植した蜂に似た姿のMOバン・マリのジグザグ移動の兵器とは思えない機動にコルトレイク部隊のフォトンバズーカの照準は定まらない。


だがフレシェット隊はタラス・ダンやマンジケルト・ダンの攻撃を受けて援護どころか次々と落とされていった。


完全に進軍速度は鈍った。


そこへ最後の一押しとしてランビキがその巨大な牙だらけの口でコルトレイクを文字通り噛み殺す。


コルトレイク隊を突破したランビキは人類連盟の艦艇に齧り付き破損個所から等身大のカメレオン型MOスマラグティナを艦内に送り込んだ。


ランビキの口から透明化して侵入したスマラグティナは手足の金属製の爪で壁や扉を引き裂いてブリッジや格納庫へと突入。


艦長や整備士、補給へ戻ったFOパイロットらを抹殺し内部から敵艦隊を無力していった。


「オグン司令!ダーマ、バンドからの通信が途絶しました!?これで4艦目です・・・・!まだ増えるのでは!?」


戦況が不利になり『グリネイド』オペレーターは半狂乱になっていた。自分の艦が沈黙した友軍艦と同じ運命になるという心に浮かんだ言葉を口に出さなかったのは旗艦オペレーターとしての自負がかろうじて砕かれていなかったからである。


「艦艇とフレシェット隊はサメの化け物の口へ攻撃を集中させろ!蜂に構うなとコルトレイク隊に伝えるのだ!突撃隊は踏みとどまっている!我々もザルツへ何としてもたどり着くのだ!」


オグンの指揮と鼓舞を受けコルトレイク部隊はランビキを集中攻撃により撃破、少しずつではあるが前線を押し上げていった。



オグンの言う通りカルブンクルスとカデシュの属する突撃隊圧倒的に不利な状況に関わらずヘーレム親衛隊と互角に渡り合っていた。


ビート板に似た高速戦闘ブースターにしがみ付いたカデシュType・Fはフェザーブレイドを機体の上下に展開し、部隊の露払いとして単騎で敵陣の真上を猛烈な砲撃を掻い潜って逆落としに襲い掛かっていた。


「・・・・!!!」


メインパイロット・相羽優歌は顔を引きつらせて声にならない叫びをヘルメット一杯に反響させていた。


サブパイロットの北条翔・牧野琴音・レンの3人も文字通りアリ1匹通る事の出来ないフォトンブラスターとレーザーナパームの集中砲火の濁流の流れを光を切り裂いて泳ぐカデシュのバリアーと高速戦闘ブースター先端の大型ソードの電磁振動がどこまで持つのかという不安を喉元まで辛うじて押し殺していた。


今のカデシュはその体勢上、運動性は無いに等しい。回避行動を一切取らず目の前の砲撃を掛けるオートノミー級空母に真正面から突っ込み、クローとフェザーブレイドで前後に真っ二つに切り裂くと再びビームの川の流れに飛び込んだ。


「来た!例の新型FO・・・!!数45!?」


「大盤振る舞いだね!たかが1機のFOにさ!」


身の置き所もない緑と赤の閃光を掻い潜って白いバーニア光が迫る。親衛隊のグルンヴァルト部隊の半数、つまり精鋭の中の腕利き達がここに配置されていた。そこには先日カデシュに煮え湯を飲まされたばかりのアダ・ン=ゴンもいた。


「先頭は・・!!あの爪長です!?」


アダ・ン=ゴン機がモニターに徐々に大きく映っていくのを見てレンは優歌に釘を刺した。


「ユーカ!!わかってるね!」


「あの大きな戦艦に近づく事が優先、でしょ!!」


カデシュはスピードを落とさずに突っ込む角度を45度下に変更する。同時に向かってくる親衛隊に向けて4連レーザーナパームを発射し、敵の下に潜り込む様に突っ切ろうとする。


「駄目だ!硬すぎる!」


レンは直撃したレーザーナパームに耐えたグルンヴァルトに悪態を吐く。


「追ってくるのは・・・10機・・!来ます!」


琴音の言葉が終わらない内にアダ・ン=ゴン機がフィンガーフォトンライフルを向ける。同時に上下左右の高機動タイプにカスタムされたグルンヴァルトも両腕の内蔵式フォトンランチャーを放つ


(かわ)しにくいアレを撃ってくる!」


「左右に大きく躱すんだ!」


翔のアドバイスに優歌は大きく弧を描くように右に機体を揺する。

が、カデシュの動きを予測したゴン機は指からではなく胸のフォトンボンバーを撃ち出した。


「しまった!?ロケットを一段切り離すよ!」


直撃を避けられないと悟ったレンはコンソールを操作し、高速戦闘ブースターの1段ロケット2つを切り離してボンバーと複数のフォトンランチャーの光条に直撃させるとストラデゴスに最接近したカデシュはストラデゴスの甲板と平行に飛びブリッジを目指して北上する。


前の砲塔からのフォトンブラスターを左に機体を振って躱し、そのままブレードで切り裂く。その間にも上方と後方から無数のビームの光が襲い掛かる。


「あの人達・・・!!味方の艦にそれも旗艦に当たっても良いの!?」


正面と左右側面モニター一杯に映るストラデゴス級の装甲と追手の親衛隊を交互に見やり琴音は彼等の非情さに身震いする。


「あの程度じゃビクともしないよ・・・この艦は」


「だからってこんなに攻撃されるなんて作戦と違うじゃん!艦スレスレに飛んでブリッジ攻撃する予定だったでしょ!?」


不意に上からの攻撃が止む。


「カルブンクルスが砲撃を始めたな・・・こっちも急がないと・・!優歌どうした?」


翔は小さな悲鳴を上げた幼馴染の方を振り向く。


「ゲダムの回転ハンバーガー!?何で?」


「そりゃ、同じヘーレムだからだろ!」


前方の格納庫から現れたMOアタノールは機体前面の8門のフォトンランチャーを撃つ。優歌はその圧力に悲鳴を上げて機体を上昇させた。


「バカユーカ!上に行ったら狙い撃ちされる!」


「全部躱す・・・から!」


レンの言葉通り艦砲とグルンヴァルトからのビームが無防備な下方から集中する。優歌はビームが発射された瞬間にカデシュを強引に急降下させた。


そこにアダ・ン=ゴンのグルンヴァルトがスラスターを全開にして突っ込む。


「コイツゥ!」


優歌は頭の中の全ての苛立ちをぶつけるように上下に展開したフェザーブレイドを肉食獣の顎の如くバクン!と閉じて敵機の両腕を噛み千切ろうとする。


だがゴン機の両指はプラズマクローとなっており『下顎』を引き裂くとブースターの推進器に両指を突き込んだ。


カデシュは第二ロケットを切り離して誘爆を最小限に止めると敵機が爪を上方に展開して撃ってくるフィンガーフォトンライフルをブレードで弾きつつ、それをブーメランのように投げつけた。


スウェイでブレードを躱したゴン機の真後ろにいたグルンヴァルトの両脚が真っ二つになると瞬間的に両足が巨大な円筒形のブースターに変る。


「何でこんなに早く回復するの!?ウグッ!?」


優歌はゴン機が躱した事より別の機体の足の修復速度に驚く。足を止めたカデシュに肉薄したゴン機のプラズマクローが両肩に突き刺さった。


「優歌!強化体になるんだ!これ以上はやられる!」


「く・・・変身・・ッ!」


優歌が頭上のレバーを引く。


カデシュType・Fがゴン機の両指を自身に取り込みながらカデシュ・ダンType・Fとなる。


後退をかけるアダ・ン=ゴンのグルンヴァルトに一瞬で接近したカデシュ・ダンType・Fは両腕のクローで敵機の喉首を貫いた。

流石に僚機の撃墜には動揺するのか、動きの止まった10機のグルンヴァルトらの中心へ飛び込んだカデシュ・ダンType・Fはすかさず5対10枚のフェザーブレイドからフォトンウェイブを放射してそれらを爆炎へと変えていった。


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