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魔法を捨てた最強格闘家、現代日本へ ~異世界最強なのに法律では最弱でした~  作者: 伝説の男前
第三部 モンスター襲来と法律編

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第51話 「観測係の罪」

 理央は、三日間、誰にも会わなかった。


 研究室に籠もり、送信ログを、一行ずつ、洗い続けた。そして四日目の夜、彼女は与太郎邸の縁側に、幽霊のような顔で現れた。


「……みんなに、話さなきゃいけないことがある」


 集まった全員の前で、理央は、深く、頭を下げた。


「私の研究室から、データが流出してた。三ヶ月間、ずっと。……流れたのは、レオンの漏出観測の全記録。腕輪の解析データ。それと――裂け目の観測データ、全部」


 縁側が、静まり返った。


「侵入経路は、去年受けた民間の研究助成。助成金と一緒に貸与された高性能の観測機材……あれのファームウェアに、送信機能が仕込まれてた。私は気付かず、三ヶ月、最高精度のデータを、自分の手で敵に送り続けてたことになる」


 理央の声は、みるみる崩れていった。


「わ、私、観測が楽しかったの。前人未到のデータだったから。助成金だって、審査が通ったとき、飛び上がって喜んで……疑いもしなかった。科学者失格だよ。私の好奇心が、私の機材が、レオンを……みんなを、危険に……」


「――理央」


 俺は、彼女の言葉を、途中で止めた。


「顔を上げてくれ。……まず、事実を整理する。お前の作った遮蔽ケースのおかげで、俺のスマホは三ヶ月折れていない。お前の観測のおかげで、俺たちは『栓を抜かれている』ことを知った。裂け目の予測が二日ずれても住民が避難できたのは、お前の観測網が脈動を捉えたからだ。……お前の好奇心は、もう何度も、人を救ってる」


「でも、データは」


「盗まれたな。それは事実だ。だから――」


 俺は、いつかのリリスの言葉を、借りることにした。


「悪いのは、お前の持ち場の正しさを利用した奴だ。……なあ、みんな、そうだろう」


「そうよ」と美咲。「捜査でも同じ。騙された被害者を責める刑事は、三流よ」


「機材の細工など、王国の魔道具にもある手口です。見抜けなくて当然」とセリス。


「……理央はん」と、与太郎さんが茶を差し出した。「あんたの落ち込みはな、あんたが本物の学者や、いう証拠や。三日で出てきたんも、偉い。……ほんで? 学者はん、落ち込んだ後は、何をするんや?」


 理央は、茶を両手で受け取り、洟をすすり、そして――目の奥に、いつもの火が、戻った。


「……逆探知。向こうは三ヶ月、私の機材と繋がってた。回線は、双方向ってことを、思い知らせる」


「それでこそや」


 ――その夜から、理央の「反撃観測」が始まった。


 送信先のサーバーは、海外を七回経由していた。だが、助成金の出所は、経由できない。書類は、日本国内の登記に、必ず行き着く。


 助成元の名は、「一般財団法人・新エネルギー未来研究機構」。


 所在地は、都心の一等地。理事長の名は、聞いたこともない老人。だが、あかりが登記情報を三十分掘っただけで、奇妙なことがわかった。


「この財団、設立はたった二年前。なのに基本財産が八十億。……で、その八十億の出所の会社を辿るとね、また別の会社が出てきて、それを辿るとまた別の会社で――」


 あかりは、画面を全員に向けた。


「――ぜんぶ辿ると、最後は同じところに着くの。『白鳥ホールディングス』の、関連会社」


(第51話・了)

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