表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を捨てた最強格闘家、現代日本へ ~異世界最強なのに法律では最弱でした~  作者: 伝説の男前
第二部 王国軍来日編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/107

第31話 「英雄、自衛隊と手合わせする」

 富士の裾野、陸上自衛隊の演習場に、騎士団の歓声が響いていた。


「なんという練度だ……!」「あの鉄の車、坂を登るぞ!」「工兵が半日で橋を架けおった!」


 王国軍先遣隊、自衛隊視察の日である。


 装備展示、車両見学、そして炊事車のカレーの試食(騎士団はカレーに完全に陥落した。「この褐色の魔法を王国に」と本気の技術供与要請が出た)。


 だが、この日の本当の目玉は、午後だった。


「――格闘訓練の、交流稽古であります」


 体育館に、道着姿の男が立っていた。自衛隊体術の教官、三隅一尉。齢四十五。柔道と日本拳法を修め、格闘指導官を二十年務める、筋金入りの武人である。


「レオン殿。お手合わせ願えますか。……あなたの動画は、全部拝見した。合成だと思っていた口です。本物かどうか、この身で確かめたい」


 美咲が慌てて駆け寄ってきた。


「ちょっと、レオン。わかってるでしょうね。相手は現役自衛官よ。怪我でもさせたら日王関係が」


「わかっている。……それに」


 俺は、三隅一尉の立ち姿を見た。重心は低く、目は静かで、指先まで統制が行き届いている。


「この人は、怪我をするような立ち方をしていない」


 ――手合わせは、五分間、組みと打撃あり、寸止めルールで行われた。


 結論から言えば、俺は三度「参った」を取り、一度も取られなかった。


 だが、体育館の空気は、回を追うごとに熱くなった。三隅一尉が、驚異的だったからだ。


 一本目、俺の足払いを、受け身から三秒で立て直した。二本目、俺の間合いの消し方に、三本目には対応を始めた。そして四本目――時間切れの寸前、一尉の突きが、俺の襟を、確かに掠った。


「……時間です! そこまで!」


 どよめきと拍手。一尉は、荒い息のまま、深く礼をした。


「……完敗です。だが、収穫は山ほどある。レオン殿、最後の突き、避けましたな。紙一重で」


「ああ。当たると思った。……あんた、五分間で三段階、強くなったな。あんな人間は、俺の世界にもそういなかった」


「自衛官ですから」


 一尉は、事もなげに言った。


「我々は、強くなるのが仕事ではありません。『守り切る』のが仕事です。守り切るためなら、五分で三段階でも、足りんのです」


 見学席のゲオルグが、腕を組んで唸った。


「レオン殿……この国の軍は、剣を『抜かぬため』に、あれほど鍛えるのか」


「ああ。この国じゃ、それを『抑止力』と呼ぶらしい」


「……帰還の報告書が、また分厚くなるわ」


 ――帰りのバスで、美咲がぽつりと言った。


「あなた、今日、楽しそうだったわね。武道大会の時と同じ顔してた」


「そうか」


「そうよ。……ねえ、レオン。あなたの世界の強い人はみんな、強さで何かを『獲る』ために強かったんでしょ。この国の強い人が、何のために強いか、今日、ちょっとわかった?」


 守り切るため、か。


 俺は、窓の外の富士山を眺めながら、その言葉を、胸の奥の道場に、丁寧にしまった。


(第31話・了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ