表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を捨てた最強格闘家、現代日本へ ~異世界最強なのに法律では最弱でした~  作者: 伝説の男前
第二部 王国軍来日編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/107

第23話 「騎士団、信号機を崇める」

 先遣隊の宿舎は、河川敷にほど近い廃校になった小学校が充てられた。騎士たちは体育館で寝起きし、校庭で馬を世話し(馬も五十頭来た。馬の検疫で農水省が三日徹夜した)、そして――週明けから、俺の「講習」を受けることになった。


 科目名「この世界で生きるための掟・初級」。講師、レオン・アークライト。助手、セリス(一週間先輩の顔をしている)。


 第一回の教材は、信号機だった。


「いいか。あの三色の光る目は『しんごうき』。この国の全国民が従う、絶対の掟だ。赤は止まれ。青は進め。黄色は――」


「レオン殿! 質問であります!」


 若い騎士が挙手した。


「あの光る目は、何の魔道具でありますか! 街の辻という辻に配備されるとは、よほど高位の……」


「魔道具ではない。電気だ。……説明は省くが、とにかく赤で止まれ。全員でやってみるぞ」


 横断歩道での実地訓練は、壮観だった。


 赤信号。五十人の騎士が、ぴたりと停止する。青信号。五十人が一糸乱れず渡る。統制の取れた軍隊は、交通ルールの飲み込みも早い――のだが。


「なぜお前たちは、渡る前に信号機に敬礼するんだ」


「掟を司る者への礼儀であります!」


「信号機は上官じゃない」


 だが彼らはやめなかった。後日、「廃校近くの交差点で信号に敬礼する鎧の集団」はSNSの名物になり、なぜか地域の交通安全意識が向上した。警察署長から感謝状が来た。何なんだこの国は。


 ――続いて、電車。


 これは、悲劇だった。


「よし、次は電車で移動する訓練だ。……言っておくが朝の八時台は避けた。あれは初心者には早い」


 昼間の各駅停車ですら、騎士たちには衝撃だったらしい。


「鉄の竜だ……」「竜の腹に自ら入るのか……」「レオン殿、これは何の試練でありますか」


「試練じゃない。移動だ。いいか、降りる駅は四つ先。ドアが閉まる時は無理にこじ開けるな。絶対にだ」


 結果。


 騎士二名が乗り遅れて次の駅まで走って追いつき(徒歩で電車に追いつくな)、一名が網棚を「先客の寝床」と誤解して譲り、ゲオルグ団長は優先席の意味を知ると深く感動して、以後、全区間で立ち続けた。


「レオン殿。この国は、老いた者と幼き者のために、椅子を空けておくのですな」


「ああ」


「……よい国だ。実に、よい国だ。守り甲斐がある」


 窓の外を流れる街並みを眺めるゲオルグの目は、武人のそれだった。この人は、もうこの国の「守るべきものリスト」を作り始めている。


 ――その車内で、ガレスだけが、別のものを見ていた。


 彼の視線の先にあったのは、路線図と、川と、橋と、高圧鉄塔。


(水路、補給線、電力網。……なるほど、この国は強い。だが、絞めるべき首は、存外浅いところにある)


 誰にも聞こえない独り言は、電車の走行音に消えた。


(第23話・了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ