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魔法を捨てた最強格闘家、現代日本へ ~異世界最強なのに法律では最弱でした~  作者: 伝説の男前
与太郎のメタ高座

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第三席 「恋愛・学園編」

 羊羹が行き渡り、師匠は三たび扇子を膝の前に置いた。


「――えー、第三席は『恋愛・学園編』。最初に断っときますとな、うちの座組は**恋愛なし**で百話組みました。せやからこの席は、『やらんかった側』からの検証でございます。やらんと決めたら決めたで、**やらん理由をちゃんと持っとかなあかん**。それが今夜の眼目で」


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## 其の二十六 「告白が邪魔される」


**「邪魔役のタイミング精度だけ世界一。」**


「――物語の告白いうもんは、まあ邪魔されます。言いかけた瞬間に電話が鳴る。妹が乱入する。隣の家が火事になる。……あの邪魔役のタイミング、軍事転用できまっせ。ミサイルより正確や」


「本作、告白イベント自体がないので、邪魔役は全員失業でしたね」とあかり。


「せや(笑)。ほんでな、ここで種明かしをすると、あの『邪魔』の技術だけは、うちも**別の場面**でたっぷり使うたんや。大事な話が中断される緊張感、言いかけた言葉が飲み込まれる焦れったさ――あれは恋愛専用の道具やあらへん。うちでは、国会のヤジ(第44話)、記者会見の怒号(第79話)、無線の途絶(第81話)に使うた。ほんで一番効いたんは、ヴォルフはんの心が戻りかけた瞬間に腕輪が起動する、あの『邪魔』や(第91話)。……ええか、中断の技法はな、**「あと一言で何かが変わる」いう場面**でだけ切れ。告白やろうと説得やろうと、原理は一緒。安売りしたら、ただの停電や」


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## 其の二十七 「花火で聞こえない」


**「一歩前に出れば済む話。」**


「――夏祭り、浴衣、二人きり。『ずっと前から、す――』ドーン!(花火)。……一歩前に出え。あるいはもういっぺん言え。人間の会話には『え? 今なんて?』いう便利な機能がついとるんや」


「聞こえなかった大事な言葉、本作にもありましたよ」とレオン。「師匠、あんたの『決められん夜は、決めてもらえる夜や』(第80話)。あれ、収奪の轟音で半分聞こえてなかった」


「なんやて。ほな、もういっぺん言うたるわ」


「いい。あとで自分で思い出した。……それでいいんだと思う。轟音で消えるくらいの言葉なら、消えたままでいい。**残る言葉は、轟音の中でも残る**」


「……弟子が高座の上のワシより、ええこと言いよった」師匠は渋い顔で羊羹を齧った。「まとめられてもうたけどな、お客さん、今のが答えですわ。『聞こえへん』を演出に使うなら、**聞こえんかった言葉を、あとで本人に取りに行かせえ**。花火のせいにして、うやむやにするな。言葉は、落とし物と一緒や。大事なもんなら、拾いに戻るんや」


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## 其の二十八 「温泉回」


**「視聴率対策が露骨。」**


「――物語が中だるみしますと、湯けむりが立ちます。温泉回。理由は聞くな、とにかく浸かれ。……あれな、作り手の湯治なんですわ。話に効いとるんやのうて、締切に効いとる」


「本作の温泉は、外交でした!」とゲオルグの声が響いた(門の定期便で打ち上げに来ている)。「銭湯『松の湯』! 裸の付き合いから、対魔物協力が始まった!(第26話)」


「せや。うちの風呂はな、**風呂でしか進まん話**を持ち込んだ。鎧を脱ぐ、いうんは武装解除や。肩書きも国籍も脱いで、爺さん同士が『あんたら何しに来なさった』と正面から聞けた。あの問答、会議室では絶対に出えへん。……ええか、温泉回を book入れるなら、一個だけ自問せえ。**「この話、服を着とったらでけへんか?」**。着とってもできる話なら、風呂は要らん。脱がな出えへん本音がある時だけ、湯を沸かせ。それが温泉の礼儀や」


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## 其の二十九 「水着回」


**「物語が泳ぎ始めた。」**


「――夏になると、物語が海へ行きます。本筋は浜辺に置き去りで、話がぷかぷか泳ぎ始める。……戻っておいで〜、いうて。本筋が沖で溺れとるで〜、いうて」


「本作、海に行ったのは戦闘だけでしたね」と真琴。「東京湾防衛戦(第60話)。ワイバーンを海へ投げる(第46話)。埠頭の決断(第82話)」


「せや。うちの海は、しょっぱい仕事場やった(笑)。ほんでな、これは負け惜しみやのうて言うんやけどな、季節イベントいうもんは、本来は**時間の経過を客に体感させる**上等な道具なんや。うちもちゃんと使うた。花粉症の春(第10話)、祭りの支度の夏(第4話)、紅葉の京都(第65話)、雪原のモスクワ(第76話)。……季節は回すもんや。**話を止めて浸かるもんやのうて、話と一緒に流れるもん**や。それができとったら、水着やろうが綿入れやろうが、誰も文句は言わんのです」


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## 其の三十 「学園祭」


**「授業よりイベント多くない?」**


「――物語の学校いうもんは、忙しい。学園祭、体育祭、修学旅行、文化祭、生徒会選挙。……授業しとる場面、年に三回くらいとちゃうか。あの学校の保護者、授業料の明細見せてもらえ」


「うちの学園要素は、最終話の編入手続きだけでしたね」とあかり。「で、続編構想が『学園編』」


「せや。ほんでな、これは**次を書く人への引継ぎ**として言うとくで」師匠は扇子を置いて、珍しく真顔になった。「レオンの学校生活を書くなら、イベントで回したらあかん。あの阿呆にとってはな、**授業こそが大事件**なんや。同い年の連中と机を並べる、いうだけで、あれは魔王戦より未知の戦場や(第100話)。時間割通りに一日が進む。チャイムで区切られる。宿題が出る。……戸籍のなかった男が、出席簿に名前がある。**その一行の重みを書けたら、学園祭なんぞ無うても、学園もんは成立する**。イベントは、日常が書けてから足す薬味や。薬味だけの丼は、食えたもんやない」


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## 其の三十一 「生徒会最強」


**「学校なのに国家権力。」**


「――物語の生徒会は、強い。校則を作り、予算を握り、時に武力を持つ。……あれ、学校とちゃう。**城**や。生徒会長やのうて、領主や。文科省は何をしとるんや」


「本作で権力を書くときは、実物を使いました」と氷雨。「国会、裁判所、警察庁、外務省、国連。生徒会に代行させる必要がなかった」


「せや。ほんでな、生徒会最強もんが流行る理由も、ちゃんとわかっとるつもりや。**権力を等身大の箱庭に縮めたい**んやな。国会は遠いけど、生徒会室は廊下の先にある。その気持ちは、ようわかる。……せやからうちは、逆をやったんや。**遠いはずの国家権力を、廊下の先まで引っ張ってきた**。交番の美咲ちゃん、商店街の大神議員の演説、傍聴席から見える裁判官の顔。権力いうもんは、縮めんでも、**近づけたら**書けるんや。特措法のたった一条が、あの阿呆の居場所を作った(第60話)。……生徒会室より狭い場所で、国家は書ける。六法全書一冊分の距離まで、近づいたらええだけや」


 師匠は茶を飲み干し、四たび、扇子を膝の前に置き直した。


「――さ、いよいよ大詰め。第四席、『ラスボス・終盤編』。……ワシの一番の得意分野や。何せうちのラスボスはんとは、庭で茶ぁ飲んだ仲やさかい」

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