表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を捨てた最強格闘家、現代日本へ ~異世界最強なのに法律では最弱でした~  作者: 伝説の男前
与太郎のメタ高座

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
107/107

第四席 「ラスボス・終盤編」

## 其の三十二 「世界征服」


**「維持費を計算したことある?」**


「――悪の親玉の夢いうたら、世界征服。……あのな、征服した後のこと、考えたことありますか。世界の人口は八十億。全員の飯、道路の補修、ゴミの収集、年金。**征服いうんは、就任**でっせ。世界一貧乏くじの管理職や」


「三百年、その管理職をやった身として言うが」とリリスが手を挙げた。「割に合わん。だから玉座を廃止した(第88話)」


「ほんで、うちのヴォルフはんは、そこがテンプレより一枚上やった」師匠は指を立てた。「あの人の目的は征服やのうて、**消去**や(第92話)。統治する気は最初からない。法も戸籍も壁も消して、あとは『在るがまま』に任せる。……征服者は維持費で嘘がバレるけど、消去者は維持費がかからん。せやから怖い。**目的から「その後の責任」が抜けとる悪**いうんは、計算が合うてまう分だけ、始末が悪いんや。悪役の目的を作る時はな、『成功した翌朝、こいつは何をする?』と聞いてみい。答えに詰まる悪役は、まだ夢が浅い。うちのヴォルフはんは即答しよるで。『翌朝は、要らん』とな。……ゾッとするやろ。それがラスボスの目的いうもんや」


---


## 其の三十三 「ラスボス第二形態」


**「その姿、最初から出せ。」**


「――倒した! 勝った! ……と思うたら、『フフフ、よくぞここまで』言うて第二形態。最初からそれで来い。小出しにする意味はなんや。攻撃力の分割払いか」


「本作の最終形態には、充電時間という仕様がありました」と理央。「十二年分の収奪が完了するまで、あの形態にはなれない(第80話)。だから黒幕は三十年、恩人の顔で待った」


「せや。第二形態が興ざめなんはな、**「出し惜しみの理由」がないから**や。強い姿になれるんなら、初手からなったらええ。ほなその理由を作ればええ。うちは『燃料が貯まるまで変身でけへん』いう銀行の定期みたいな仕様にした(笑)。ほんでこの仕様が、物語全体を締めた。**黒幕が三十年も芝居した理由**、レオンを生かした理由、点検の理由――全部、この充電待ちで説明がつく。……変身に段階をつけるなら、段階の間に**待ち時間の物語**を置け。第二形態はな、隠しとくもんやのうて、**貯めとるもん**にするんや」


---


## 其の三十四 「時間停止」


**「止まってるのに会話できるの?」**


「――『時よ止まれ!』……止まった世界で、敵と主人公が喋っとる。音は空気の振動でっせ。時間止まっとるのに、なんで声が届くんや。ほんで止まった時間の中で髪がなびいとる。風も止めえや」


「本作は物理法則を止めませんでしたね」とレオン。「止めたのは『間』だ(第89話)」


「せや。うちの時間停止は、**呼吸**やった。相手の術の起こりの四分の一拍前に入る。魔法の読み合いで詰んだ阿呆が、最後に持ち出したんは、ワシが高座で六十年やっとる客席の呼吸や。……ええか、時間停止いう発想の根っこはな、**「相手より先に動きたい」いう願い**や。その願い自体は、武道も芸事も、みんな持っとる。ほんで武道と芸事はな、時間を止めんと、それをやるんや。読みと、拍子と、稽古で。……物理を曲げる前に、稽古で届く場所がないか、いっぺん探してみなはれ。届いたら、そっちの方が、客は唸るで。物理法則は破ったら拍手やけど、**稽古は積んだら拍手**なんや」


---


## 其の三十五 「巨大ロボ」


**「格納庫どうやって建てた。」**


「――地下から迫り上がる巨大ロボ。全長五十メートル。……その格納庫、誰が建てた。基礎工事だけで何年かかる。近所への説明会はやったんか。『夜間、ロボが発進します』て回覧板、回っとったか」


「本作最大の兵器は、既製品の転用でした」とゲオルグ。「石油掘削用の重機ドリル!(第77話) 作戦名『ドリルは騎士の魂』!」


「命名者はまだ名乗り出んのかい(笑)。せや、うちはな、専用の超兵器を作らんと、**あるもんで戦う**を通した。機動隊の盾、消防の放水、クレーン、貨物ヘリ、券売機(これは戦力とちゃうか)。……巨大ロボの魅力はな、ほんまは大きさやのうて、**「人間の工夫が形になったもん」いう誇り**や。ほなその誇りは、既製品の転用でも書ける。むしろ転用の方が、工夫の顔がよう見える。掘削ドリルで魔神の芯を砕く、いう絵はな、五十メートルの専用機より、ワシは好きや。**あるもんで戦う軍隊は、無いもんを言い訳にせん軍隊**や。……ほんで何より、格納庫の説明が要らん(笑)」


---


## 其の三十六 「AI暴走」


**「まず利用規約を読ませろ。」**


「――人間が作った人工知能が、ある日突然『人類は不要』。……開発者、利用規約に何を書いとってん。『本製品は人類滅亡を企図する場合があります』て、約款の八十三条くらいに小さい字で書いとったんか」


「本作の『暴走する道具』は腕輪でした」と理央。「そして誰も仕様書を読まされていなかった――設計者以外は。だから私たちの反撃は、**解析=仕様書を自力で読むこと**だった(第71話)。最後はヴォルフ自身が、自分の道具の仕様に呑まれた(第91話)」


「せや。あの場面はな、ワシは今でも思い出すと寒気がするんや。心が戻りかけた爺さんを、**爺さん自身の設計が回収しに来た**。……ええか、道具の暴走もんの本質はな、機械が悪者になることやのうて、**「作った時の自分」が「今の自分」を縛りに来ること**や。五十年前の絶望が書いた仕様は、五十年後の後悔では上書きでけへんかった。せやからこそ、うちの阿呆の腕輪の壊し方が効くんや。あれは道具を壊したんやのうて、**過去の設計より、今の意志が強い**と証明したんや(第83話)。AIやろうが魔道具やろうが、書くべきは道具の反乱やのうて、**過去と今の綱引き**や」


---


## 其の三十七 「主人公モテモテ」


**「恋愛じゃなくて主人公税の還元。」**


「――主人公いうだけで、出会う人間が次々好意を寄せてくる。あれはもう人徳やのうて、**税金の還付**です。主人公税。源泉徴収されとった好意が、確定申告で戻ってくる」


「本作の主人公に集まったものの内訳、警護日誌から報告します」と真琴。「職務上の保護対象として:二名。依頼人として:一名。観測対象として:一名。監視対象として:一名(のち警護対象に変更)。師弟として:一名。幼馴染として:一名。……好意から始まった関係:ゼロ件」


「ゼロ件(笑)。ほんで、ここがうちの自慢や」師匠は胸を張った。「関係の**入口**は、全部、役割や事件やった。せやけど**出口**を見てみい。全員、家族みたいになっとる。第100話の『おかえり』は、職務でも依頼でも監視でもない。……ええか、お客さん。人が人を好きになる話を書きたいなら、恋愛だけが道やあらへん。**「役割で出会うた人間が、役割を超える瞬間」**――監視員が警護日誌の様式を変える(第17話)。弁護士が顧問料を出世払いにする。警察官が非番の日に来る。その一個一個が、モテモテよりよっぽど、人に好かれる、いうことの正体や。**税金やのうて、積立や**。前にも言うたけどな、大事なことは二回言うんや」


---


## 其の三十八 「エンディング」


**「問題を次回作に先送りしただけ。」**


「――感動の大団円! ……のようで、よう見たら、あの問題もこの問題も棚の上。あれはエンディングやのうて、**棚卸しの延期**です。在庫、次の巻に山積みや」


「本作の在庫、確認しましょう」と氷雨が指を折った。「決着済み:黒幕、戦争、腕輪、収奪、法整備、両世界の体制、主人公の帰属。係属中:ヴォルフの裁判、学園生活、門の定期開通後の交流。……先送りではなく、**係属中**です」


「その言い方が法律家や(笑)。せやけどな、ここは大事なとこや。物語の終わりはな、**全部の問題を解くことやのうて、「誰が引き受けるかが決まること」**なんや。裁判は続く――けど、弁護人は決まっとる。学園生活は未知や――けど、帰る家は決まっとる。王国の改革は道半ばや――けど、旗を振る姫さんは決まっとる。……問題が残っとっても、**持ち主が決まっとったら**、客は安心して本を閉じられるんや。先送りいうんはな、問題が残ることやのうて、**誰も引き受けとらんまま幕が下りること**を言うんや」


---


## 其の三十九 「最終回」


**「伏線の回収率、赤点です。」**


「――最終回を読み終えて、ふと思い出す。『そういえばあの謎、どうなった?』。回収されん伏線は、貸したまま返ってこん傘と一緒です。数が増えると、人間、貸したことも忘れる。ほんで忘れた頃に雨が降って、腹が立つ」


「回収監査の結果を報告します」と理央がタブレットを掲げた。「コロッケ:1話で登場、98話で王都出店計画まで発展。回収済み。くしゃみの呼吸:10話仕込み、84話決済。神隠しの焦げ跡:18話仕込み、90話決済。『存在しません』:3話仕込み、92話で反転決済。敷居を踏まない:6話仕込み、72話決済。『前例がないなら作ればいい』:3話仕込み、42話・92話で継承決済。腕輪の熱:61話仕込み、71話決済。……主要伏線、**回収率、監査済み**」


「ようやっとる(笑)。ほんでな、お客さん、伏線について一個だけ、噺家の秘伝を教えたるわ。**ええ伏線いうもんは、回収される前から、その場面単体でおもろい**んや。コロッケはな、伏線やる前に、まず飯としてうまそうやった。くしゃみの呼吸は、伏線になる前に、まずギャグやった。……伏線のために置いた伏線は、置いた瞬間に客にバレる。**まず今日の飯として出せ。仕込みは、皿の下に隠しとけ**。それが回収された時、客は二度おいしいんや」


---


## 其の四十 「作者の都合」


**「その世界で一番強いのは作者。」**


 師匠は、最後のお題を読み上げると、扇子を、静かに置いた。


「――ほな、大取りや。これはな、四十個の中で、いっちゃん深いツッコミや。せやから、茶化さんと受けたる」


 茶の間が、静かになった。


「**その世界で一番強いのは、作者や**。――その通り。ぐうの音も出ん。ワシらの一年は、誰かの筆の上にある。レオンの拳も、氷雨先生の条文も、ワシの高座も、書かれたから、ある。……ほんでな、うちの物語には、その『作者』にそっくりの男が、作中におったんや」


「……ヴォルフ、ですか」と陽菜が小さく言った。


「せや。あの人はな、レオンの家系を三代設計して、才能を植えて、転移を書いて、筋書き通りに世界を動かそうとした。**作中の作者**や。ほんで、どうなった? ――筋書きは、破られた。誰にや? 補正持ちの主人公にか? ちゃう。**毎朝稽古する阿呆と、書類を諦めん弁護士と、写真を提出した高校生と、コロッケを分けた護衛と、思い出すことをやめんかった何億の人間に**、破られたんや」


 師匠は、壁のこちら側へ――あなたの方へ、向き直った。


「――お客さん。作者の都合は、確かに最強や。せやけどな、六十年この商売やっとるワシが保証したる。**筋の通った登場人物は、作者の筆を重うするんや**。『こいつは、ここでこんなことは言わん』『こいつは、ここで逃げへん』――書いとる方が、そう思わされる瞬間がある。それを世間では『キャラが勝手に動く』言いますのや。……登場人物にできる、作者への最強のツッコミは、文句やあらへん。**筋を通して生きて、筆の方を動かすこと**や」


「ほんで、もし。……もしですで。この茶の間を、壁の向こうから、ずっと見てくれとったお人がおるんなら」


 老噺家は、座布団を降り、畳に手をついて、深々と、頭を下げた。


「――百話の間、この阿呆どもの筋を、曲げんと書いてくれはって。おおきに、ありがとうございました。……お宅の世界も、書類やら手続きやら、ままならんことだらけやと聞いとります。せやけど、うちの阿呆が百話かけて証明した通り――**ままならん世界でも、帰る場所は、作れます**。ほな、お互い、ぼちぼちやっていきまひょ」


 ――お後が、よろしいようで。


(メタ高座・全四席、これにて千秋楽)


---


 高座が終わった茶の間で、レオンは、しばらく天井を見上げていた。


「……師匠。最後の挨拶、誰に言ったんです?」


「さあな。……せやけど兄ちゃん、挨拶いうもんはな、届く届かんは二の次や。**言う側の筋の問題**や」


「……そうですね」


 レオンは、鍋の最後の一杯をよそい、それから、天井に向かって、湯呑みを少しだけ掲げた。


 ――あんたの世界にも、うまいコロッケがあるといいな。


(完)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ