障壁使いたちとの戦い
僕は、本条宇水と坂藤通季の他にドリルの魔法少女須賀田玲美、滑車の魔法少女塩地橋景弥、ハンディファンの魔法少女本条伊佐利、望遠鏡の魔法少女上毛寿絵と行動を共にすることになった。
長命勢は400人ほどで、60ほどの班に分かれて障壁術師組織没陽の部隊を迎え撃つ。僕たちは左翼、北西の端に展開した。
「敵の大将は稲垂放。南下してくる部隊の名称は紫順軍と言って没陽の精鋭、五紫軍の一つだよ。総数は200程度。放の習得技術は無窮壁界。無限に障壁が増殖するんだ。彼がこの技術を使ったら、私達にも影響があるかも」
「敵の目的は?」
リーダーの景弥が尋ねる。
「百科事典にはそこまでは書いてなくて。ただ、どう考えても魔法陣の奪取だと思うよ」
「宇水。時間稼ぎというのは?我々の本来の目的は市庁舎の防衛だ」
伊佐利が質問をする。ちなみにこの世界では苗字が被ることが多いため名前やあだ名で呼ぶことが普通らしい。
「考えにくい。そこまで連携は取れてなさそうなの」
通季が代わりに答える。すると寿絵が大きな声で叫んだ。
「来るよ。敵の部隊が」
「我が名は大仙重喜である。いざ尋常に勝負。勝負」
大声が聞こえて大男が姿を現した。ものすごいスピードだ。分厚い何かをまとっている。あれが障壁みたいだ。どうやら障壁とはバリアであるらしい。
「大仙重喜は紫順八騎の1人だよ。障壁を装甲のように纏って戦うんだ」
宇水が解説する。紫順八騎……強いのだろうか。聞いてみた。
「大した事は無いでつ。メキュたちは隠れるでつ」
宇水の代わりにメキュがそう答え消えてしまった。
「一騎打ちね。あたくしが相手するわ」
玲美が大仙の前に立ちはだかる。ドリルの固有魔法は強い。あっという間に大山の装甲に穴があけられていく。
「重喜さまああ。おのれ。魔法少女どもおお」
「重喜様を救えええ」
「突っ込めえええ」
紫順軍の大仙部隊が襲来した。その数30以下。迎え撃つ長命勢は10班70名くらいだ。兵力は倍以上。しかも質もこちらの方が高い。
ハンディファンの風魔法はわかる。でも滑車の重力魔法は拡大解釈すぎるのではないだろうか。それが初めて魔法戦闘を見た僕の正直な感想である。
ちなみに僕は機械の恐竜を何体か作り出すことに成功してそれなりに活躍した。これがロボット魔法か……
数十分後、大仙重喜は討ち取られ、大将以外の紫順軍はほぼ全滅した。大将稲垂放はまだ奮戦しているようだ。
「初戦闘おめでと。どうだったなの?」
通季が話しかけてきた。正直疲れがある。それも精神的なものが。僕に心は無いというのに。
「死体が散らばっているね」
「また後で誰かが片づける。そんなことは気にしないなの」
「気にしないかあ。僕は人を殺してしまったんだよ」
「魔法少女以外はひとでは無いなの」
「あれは……人ではない?」
「何度も言う。気にしないなの」
僕は魔法少女にも人間性が無いのかもと思ってしまった。戦乱の時代だから仕方ないのかもしれない。
そして僕たちは抵抗を続ける稲垂放を包囲することになった。
「すごいよ。長命のエース、久時様にここまで食い下がっているなんて」
宇水が弾んだ声で放を褒める。目もキラキラさせている。かわいいと正直思った。
敵将の戦っているところに着くとどうやらクレーターのようなものができており、戦いの激しさがわかる。
「久時様には分が悪いのか」
景弥がつぶやいた。久時様ってどんな魔法を使うのだろう。宇水に聞いてみる。
「引き出しの魔法だよ。何でも好きなだけ物を入れられるし、入れておいたものはいつでも取り出せるんだ」
実質無限の収納使いだった。敵将と真逆の能力。でも取り出すこともできるので、久時様のほうが応用が効きそうだ。
「汎用魔法を大量に引き出しにいれてて、このあたりでは最強の魔法使いなの」
通季が補足する。魔法も撃ち放題ということ。最強では?
「軌都が倒れてる。美歩乃も。大丈夫かな」
寿絵は望遠鏡であたりを見回している。どうやらかなりの犠牲が出ているようだ。これは少しまずいかな。
でも周囲の援護射撃もあり、稲垂放はその後すぐに討ち取られたのだった。
そして僕たち長命勢はすぐに市庁舎方面に派遣された。




