変人 安富兼為
光が消えると、そこは薄暗い住宅地だった。しかし、炎のような赤いものが遠くに見える。大きな破裂音のようなものも聞こえる。
僕は数人のカラフルなドレスを着た女の子に囲まれた。
多分この人たちが魔法少女なのだろう。1人は背が高く赤い衣装、もう1人は青い衣装だ。
「よろしくね。あなたが弐音さんなの?私は坂藤……」
「あれ?変だよ。この子、魔法道具も無いし、妖精さんもいない」
「ほんとだ。これ見て」
そう言うと赤い衣装の坂藤さんは、タブレット端末を渡してきた。
「手のひらを画面にくっ付けて。そして手ごたえがあったらソレを引き抜く。勝負は1度きりだから気を付けるの」
「こうかな?」
手を画面に置く。すると画面の向こう側に何かが存在する気配がした。
思い切って何かを引き出す。
「なんだろう。ああ、なるほど。これはロボットだよ」
青い服の魔法少女が本を読みだして納得する。
すると、突然煙のようなものが辺りを包んで何かが出現した。
「ぱぱぱぱあーん。妖精の国から来たフリジェです。今日からあなた、ロボットの魔法少女のサポート役に就きますよ」
サポート役ならいろいろ知ってそう。この状況を詳しく教えてもらおう。
「えっと.。僕はどうすればいい?」
「フリジェはこれから事務作業があるので、機構本部に帰ります。また今度」
妖精さんはそう言うと消えてしまった。それでサポート役のつもりなのだろうか。
「妖精さんにはそういう子もいるから気にしないで。私は百科事典の魔法少女。本条宇水だよ」
「担当妖精のメキュでつ」
青い服の魔法少女が話しかけてきた。優しそうな子だ。妖精さんもかわいい。
「私は坂藤通季。鎌の魔法少女なの」
「妖精の布能テアって言いますなのよ。よろしくなのよ」
「僕は日端弐音。みんな知ってるみたいだけど」
「みんな完成まで楽しみにしてたでつ」
そういえば、何とかの魔法少女っていったい何だろう。ちょっと聞いてみよう。
「僕はロボットの魔法少女みたいだけど。この、ロボットってどういう意味?」
「それは固有魔法。基本的に魔法少女は、魔法道具にまつわる魔法を使うの」
坂藤さんが解説するには、魔法は本来、生体ポイントというものを消費して発動するのだが、固有魔法は生体ポイントを消費しないため、ほぼ無制限に発動できるらしい。
「この子、何も知らないみたい。世界には他の魔法少女の系譜もあるよ。例えばここ冷静市にも別の系統の魔法少女勢力がある。そこは魔法道具ではなく都市核を媒体として使用してるよ」
本条さんによれば、この世界には魔法少女だけでなく、超能力者や障壁術師など様々な使い手が居て、彼らを習得者と呼ぶらしい。そして習得者同士で戦いが起こっているらしい。
「今回は、障壁術師の勢力と戦っているんだけど、でも私たちの任務は冷静市中枢を助けることだよ」
「冷静市中枢?」
僕の問いに本条さんが答えた。
「正式には冷静市市庁ならびに魔法少女課だよ。一応私達と同じ系列で味方なんだ」
僕は正直困惑した。僕も戦わないといけないのだろうか。でもどうやって?
「それにしても支部長にも困ったもの。こんな激しい戦場に何の力も持たないヒューマノイドを投入するなんて、ありえないの」
「あの人はそういうところがあるよ。少し抜けているところがあるよね」
「あの人はニガテでつ」
”支部長”。きっと、さっきの安富兼為という人だろう。どうやら僕を魔法少女として送り込むつもりが、誤って、力を与えずに送り出してしまったらしい。
支部長の話を3人と2匹でしていると、突然辺りが騒がしくなった。
「そろそろ出発?いやこれは違うの」
「緊急通信だ。敵襲。敵襲。二時の方向」
誰かが叫んだ。どうやら敵がこの近くに現れたらしい。
「どうやら没陽の部隊みたいだよ。これはまずいよ。もし転移陣が奪われたら……」
本条さんの言葉が終わらないうちにその人は現れた。僕はその人を一目見て嫌な予感がした。
「口を慎め。それ以上は罪に問うぞ。この地は譲らぬ。……そうだな長命市副支部長、真呉久時をこれへ」
「久時であります」
「敵将は稲垂放。強力な使い手である。先ず長命勢の総力を挙げ彼の者を討て」
「承知いたしました」
僕はこの世界がメルヘンな世界ではないことを悟った。なんとなくはわかっていたがこの世界は戦国時代に近い。
こうして僕は初陣を迎えることになった。




