教室から異世界へ
空に誰かが浮かんでいる。変だ。たしかさっきまで授業を受けていたはずなのに。飛んでいる人影は杖を持ち、何かをつぶやいている。
すると光り輝く文字と幾何学的な模様の円盤が現れた。これは一体何なのだろう。
「ーー起きなよ弐音、もう朝だよ」
「いや、今夕方だから」
僕は目を覚ました。夕焼けが眩しい。授業中に寝てしまったみたいだ。
「もしかして、6限目終わった?」
「弐音。もう帰りのホームルーム終わっちゃったよ」
答えたのは坂堂こと。僕の友達だ。
「バレないのすごいよね?ひやひやしちゃった」
こっちは大河原広野。僕の友達だ。
「寝てもバレないのは、日ごろの行いが良いからかな」
「わあ。なんか言ってるよ。ひろの」
「ほっとけ、ほっとけ。さあ帰ろ」
「うん。そうだね」
僕たちは、教室を出て、昇降口から通用門の外までおしゃべりをしながら歩いた。
そこで僕は体操着を忘れたことに気づいたのだった。
「体操着忘れちゃった」
「一緒に戻ろう」
すると、門の前にいた生活指導の先生が話しかけてきた。
「もう下校時間過ぎてるぞ。日端は特別に許すが、2人は門で待っていなさい」
「なんか僕、許されたんだけど」
「日ごろの行いが良いからだよ」
「行ってらっしゃい」
僕は教室まで体操着を取りに戻った。教室の前に差し掛かった時、僕は違和感を覚えた。
辺りが光り輝いている。廊下がゆがんでいる気がする。
それでも勇気を出して教室に入ると、教室の中はぼんやりと霧がかっていて、机や椅子などは存在していないようだった。
僕は困惑して上を見上げた。すると誰かの声が聞こえた。
「おめでとう。君は選ばれた。吾輩は女神である。新しい世界にようこそ」
女神さん。そんなの呼んでないけど。
「ほほう。困っているのかね。君は異世界に召喚されたのだよ。吾輩の支部に戦力が欲しくてね」
「支部?」
「おっと間違えた。そう、これは異世界転移というやつでね。そういう設定なのだ」
異世界転移ってコミックのジャンルであったよね。僕が巻き込まれるなんて驚き。でも設定って何?
「では場所を切り替えよう」
女神様がそう言うと、視界が真っ暗になり、感覚がおかしくなった。
触覚シーケンスを起動……成功
知能補完機能……正常
運動野情報をアップデート……成功
……
……
ーーーー
意識素体連結完了しました:
ようやく視界が開けて、僕は絶望に打ちひしがれることになる。
僕の手のひらは明らかに人工物だった。当然僕の体も。
「実に素晴らしい。君は吾輩の最高傑作だ」
「僕の体を戻して。僕を元の世界に返して」
僕は目の前に座っている女性に懇願した。
「それはできない。吾輩は女神などではないからだ。嘘をついて済まない。君の体は初めからコレで、君のいた世界は、吾輩がプログラムで作ったシミュレーション世界でしかない」
「そしてその世界も既に消去した。つまり君の要望には全く答えられそうもない」
「そんな。ひどい」
「改めて自己紹介を。吾輩は魔法少女機構、長命市支部、支部長、安富兼為である」
僕は全く理解できなかった。魔法少女?支部長?それに僕は一体何者なんだろう。
「僕は一体何なの?」
「日端弐音。君は人工魔法少女計画の2号機だ。君の意識は戦闘用人工知能であり、高度なシミュレーション宇宙で成長したことで人間に近い感性を得ることに成功したのだ」
何かがおかしい。前の世界には魔法少女なんていなかった。
「魔法少女なんて僕、知らない」
「ああ。魔法少女の知識が無いと?それは省かせてもらった。この世界を再現するのは難しくてね」
難しいとはどういうことなのかな。僕は疑問に思った。
「あまりに近しい世界だと逆に困惑するし、少し変えさせてもらったわけだ。その話はもういい。さっそく初陣に行ってもらう」
僕は、安富さんに連れられ部屋の中に入った。かなり大きな部屋で、中央には丸い文様が刻まれている。
「これは転移陣だ。これで今回の戦場の冷静市に行ってもらう」
そして転移陣は起動し、僕の体は光に包まれた。




