斎止め
僕たちはどうやら東営第三軍というところに属しているらしい。
久時様に放討伐を命令した魔法少女が東営第三将、春川真種という人だということだ。
「でも常に長命市支部が東営第三軍に属してるわけじゃないんだよ」
何かが起きたときにその都度、将軍が派遣されるらしい。将軍ねえ。
「そういうのは事前に勉強するなの」
通季が指摘する。確かにそうだ。こういうのは事前に知ってないといけない。予習復習が大事だ。いや何も知らされずここに連れてこられたんだけど……
今、僕たちは偵察隊として冷静四中領北西部黒又小学区を目指している。四中主力は市庁舎の南にある沢方小学区にいる。ただ四中の部隊が黒又にいた場合、東営第三軍側面を突かれる可能性があるとして長命勢の一部が分派されたわけみたいだ。
中学校が領土を主張してるなんて世紀末だと思う。
「後は習得者火力比定基準かな。一番弱いのが無害級。次が傷害級、文字どおり怪我をさせるくらいの火力ってわけ」
その次は殺害級、準即死級、即死級、戦術級、特異戦術級、戦略級、特異戦略級、世界滅亡級と続くらしい。特異って何だろう。
「はあ、めんどくさい。特異がついてるのは即死の上位互換。特異戦術級なら大勢の人を即死させることができる火力を持つということなの」
通季が嫌々補足してくれた。この基準は瞬間火力によって強さを決めるということらしい。放とかはどのランクなのか。聞いてみる。
「戦術級だよ。もう少し攻撃密度が高ければ特異戦術、範囲が広ければ戦略級かな」
放の攻撃は攻撃と攻撃の間隔がかなりあり、障壁自体はさほど強くないこともあって特異戦術級ではなさそうということだ。
このように宇水の講義を聞いていたら突然目の前に、タブレットが浮かんだ。
ロボットを引き出したあの端末だ。何かよくわからない映像が流れている。宇水に聞いてみる。
「霊界通信だよ。この世界のすべての生物とその亜種に与えられてる創造神からの贈り物なんだ」
「これ。まずいなの」
「危惧されていたことではある」
通季と景弥が話し合っている。どうやらまずい状況のようだ。
「いったい何があったの?」
景弥が答える。
「大崎中が本格参戦した。その学校は冷静市最強勢力とも言われてね。特に中枢の能力が恐ろしい」
「斎止め。全ての動植物のエネルギー変換、利用を阻害する超能力なの。今回は一応対策はしているけど」
「つまり、もう誰も動けないってこと?」
「対策はしている。そう言ったなの。魔力生命装置を全員持ってきたから、魔力が尽きない限り行動できるなの」
「魔力?生体ポイントじゃなくて?」
「厳密には生体ポイントと魔力は別。でも等価利用できるからどっちでもいいなの」
ここで分かってしまった。もしかしてこれ影響受けないの僕だけかな。
「弐音が何考えているか分かった。弐音は電気、生体ポイントどっちでも動ける。つまり効果はないなの」
「ただ電気では動けなくなってるみたいだよ。表示がここにあってえ」
宇水が体を触ってくる。くすぐったい。触覚はきちんとあるようだ。僕は意外と高性能かな?
「いい加減にしなさい」
ため息交じりで玲美が止める。
「もう、結局省力で行かないといけないんだから。余分な体力使わないようにしないといけないわよ」
「そうだね」
「わかったよ」
その後、僕たちはなおも前進した。
何度か四中生やその配下の小学生、その他の団体の人たちと接触したが、戦闘を回避し、黒又小に至った。
「ふふふ。ここに四中以外の人間が来るとはね」
黒又小に着くと、誰かの声が急に聞こえた。いつの間にか僕たちの目の前にソレは姿を現す。
「囲まれた」
景弥がつぶやく。僕たちの周りにはいつの間にか、歪んだ人影や化け物のようなものが大量に存在していた。
「異形だよ。異常空間に住み着いているんだ。相手は空間技師かな」
宇水が解説する。異形。空間技師。明らかにそれは強敵のようだった。
「敷設閉空間。小天地」
敵の空間技師がよくわからない言葉を口にした。すると世界が暗転した。




