第六十八話 ドラム缶怪人戦場に現る
腕が飛ぶ飛ぶ腕が飛ぶ。足が舞う舞う足が舞う。完全武装のお兄様が白金の光を一閃する度、オーク君の一部がお空に飛んで海にポチャンポチャンと落ちていきます。ただ今、天気曇天波高し。絶対に遊泳は禁止の休日台無しシチュでありますが怒号と悲鳴が満ちております。
何時もの様なクドクドした説明は必要御座いませんね?決戦中です!貴重な種馬と孕み袋をどうか殺さないでくんろと、あの方には頼みましたが、日頃のストレスを発散しているのか殺戮のハリケーンとして、我が夫は人間さんでしたら束になって掛かっても一蹴される戦力を刈り取っております。
あれこそがエルフ帝国の騎士の本来のお姿。書庫に籠って黙々と作業されているのや、煤けながら子供と酒飲んでる何時もの生活に疲れたお父さんの姿ではございません。ああっ惚れ直す!素敵!ワイルド!今の貴方様は暴力の化身でございますわ!人間さんと髭の連合がエルフ帝国残党の殲滅に苦労し続けた理由が心から理解出来ました!貴方様以上の存在が何人もいた所、そう易々と落とせる訳ないですよね!
「頭下げろオババ!!」
「っっ!!ひたかんた!ひたかんたみました!!」
ううっ…口に中に血の味が…見惚れて居たら、近くにいる孫の一人に船べりまで頭押し付けられてしまいました…ですが文句はそれ以上は言えません。私の胸があった位置をオークの強弓から放たれた矢が通り過ぎて行ったからです。説明を続ける前にちょっとお待ちを…
「舌噛んだでしょうが!!そんな物で私を殺せると思ったら大間違いですよ!!お返しです!!命中!クリティカル!おほほほ!!そのまま溺れなさい!運が良ければ後で回収して上げます!」
はい。すいませんでした。私のか弱いか弱い細腕から放たれた長槍がハリネズミになっていたロングシップを見事TAMETOMO!(撃沈)したので現状のご説明の移らせていただきます。
当意即妙にして君子豹変、毀誉褒貶で朝令暮改なる天災ぐんし~である私は、この度愛する旦那様と言うワイルドなカードを手にしたので此度の決戦の挑んだのであります!戦略続行!奴らがこの地を去ると言うならば好きにさせてやれ!と言う訳です。
一人増えたくらいでナニって皆様思ってるでしょ?それは思い違いでございます!我がお兄さまは前回家出した時とは違い完全武装を携えて異郷の地に御出でになっているのです!
見よ!(倉庫で埃を被っていた)帝国の遺産に身を固めた姿!身分を表す不死鳥の羽より作られた飾りが今も眩しい角突き兜!ゴツイ肩当と十五枚になる白金製の厚板で首から膝までを覆う全身鎧!同じく白金の手甲と脛当て!これを白銀糸と絹で織られた鎧下の上に着用されております!
そして手に持つのは恐らくは幾多の軍勢の血を吸って来たであろう白金の両手剣です。この説明をお聴きになって、ん~?何かエルフらしくねぇなぁ?ごつすぎねぇ?動けんの?それに両手剣?その鎧に合わせるのは盾と槍じゃね?と思った方は歴史オタク。
デンドラの甲冑ってご存じ?地球世界のミケーネだか古代ギリシャだかの遺跡から発掘された奴です。この鎧ってほぼアレ。ハッキリ言ってエルフの美的感覚からは信じられない程、不格好で実用重視な鎧でして、その姿動くドラム缶。理由は当然髭です。
元のエルフの鎧はそれは優美でした…それこそお兄さまの鎧下に毛が生えただけの、薄く体にフィットし、動きを損なわない白金の糸で編まれたのがエルフの鎧なのでした。ですが髭相手に通用すると思います?はい…しませんでした…太古、大陸にいた獣たちには有用でも髭の武器には膂力で中身事潰されたのです。当たらなければ如何と言う事は!は所詮強がり…エルフの甲冑は重武装化の道を突き進みます。
どれ程重くしても動けてしまうのだから当然の結論ですよね?それでこの鎧と言うわけです。どんな槍衾を構えて威嚇しても、百発百中矢の支援の元、これを装備した動くドラム缶の群れが戦列を飛び越えて敵陣に飛び込み当たるを幸いに切り刻むのがエルフ正規軍の戦い方。それで隊列が崩れると同じ装備のやり持ち重装兵が乗る三頭立ての戦車が突撃してひき潰します。
一人一人が一騎当千の兵士であるから出来る芸当です。何と言うかエルフの軍って軍隊として集団で戦うと言うより、個人技に秀でた集団を戦場まで纏めて運ぶのが役目って感じですね。これで夜襲かけるとか、兵站線を単騎で襲い続けるとかしてたら、私も優雅な宮廷生活してたかもしれませんねぇ。
さて、この麗しきドラム缶である我がダーリンが、髭もいない、足を止める為だけに命を捨て飛び掛かって来る狂気を持った人間さんの特攻兵もいない戦場にお出ましになったしたらどうでしょう!それは正に戦場に咲き乱れる赤き花!いま眼前に繰り広げられるグロイ光景がそれです。
その古のエルフ型決戦兵器を引っ提げ、私たちは只今現在決戦中!
「弾幕薄いぞ!なにやってんですか!あれが沈む訳ないでしょうが!乗員を狙いなさい乗員を!取り付けば如何にかなります!満足に操艦も出来ない船など怖くは…ひぇ!」
「だから立つなオババ!盾の後ろに居ろ!」
「おのれチーター!!あれがあるなら、天罰も下さず海にでるわけだ!」
そう、勢い込んで決戦に挑んだんだんですが…ちょっと立て込んでおります。これまでの私の言葉から皆さんもお分かりかと思われますが、私たちは私達は海の上におります。ここは北方大陸と中央を分ける海峡のやや北方よりの場所です。
白波を立てる海上には、我が方の装甲ロングシップと坊主共の船を接収した39隻とオークたちの間に合わせまで混じった100を超える脱出船団が入り乱れております。私たちは彼らの船団を海上で補足し襲撃を掛けたのです。規模だけは間違いなくエルフ帝国が亡びてから最大の海戦でございます。
彼我の戦力差は、我、装甲船(永氷削って船体に打ち付けただけですが)に対し、彼、間に合わせが半分以上と、ガハハ!勝ったなと言った戦力差です。アイツさせ居なければ!!!
「止まるな!動き回れ!!」
「落ちた奴を拾え!!何でも良い投げ入れろ!」
「早い!もっと漕げ!!近寄れないぞ!!」
一隻トンデモないのが居るんですよ…かなり前に帝国艦隊の話をした記憶がありますが、皆さん覚えておられますか?その中で自沈した旗艦の話しましたよね?あれねこの海域から離れてないんですよ自沈した場所…
私には知識チート使うなとか言って於いて、現地の物なら良いも~んですか…流石が詐欺師の神様ですよ…片舷24門の弩砲と総白金製の衝角はチートじゃない判定ですか…ふざけんじゃねぇぞ!!!獅子鷲号引き上げやがった!!




