第六十九話 ならアボルダージュじゃこら!!!
淑女にあるまじきお下品な言葉を放ってしまいましたが、勇んで出撃した結果がこれなので、ざけんなこら!と言いたくて仕方がなかったのです、お許し下さい。おい!日本海海戦にガングート級で殴り込む様な真似は止めろ!!それにですねぇ…
「誰でも良いから、我々の頭の上を飛んでるバカカラスを落としなさい!!そうです!二匹とんでるでしょ!!うわっっ!今掠った!!早くなさい!落とせなくても良いからせめて妨害するの!!」
チート重ね技!!はいはい、お前もやったから文句言うなですね!観測機飛ばしてやがる!!あのカラスやっぱフギンとムニンだ!借りた友人ってやっぱオーディンだろ!!私だって空から観測はしてないぞ!!
先ほどから並みの三半規管でしたら、ゲ~確実の上下する海に浮かぶロングシップの間を水柱が立ち続けております。人間さんから挑発した大型船は怖くて近寄れません。あんなゴン太の大矢食らったら一たまりもないからです。
なんで千年以上海の中にあった弩砲が動くのか首がガクガクするまで問い詰めてやりたいのですが、さっきからバスバス撃って来ているので対処の方が先です。ここでアレを止めねば中央に逃げられる手前、逃げ帰る事もできない!こう言う事できるから決戦に乗って来たんだなあいつめ~!
アイツことロキは私に地球知識チートプレイを「止めろ」ではなく「控えろ」とだけ言いました。ですので究極生物兵器終末イナゴ君を引っ込め、もう一つの主力である寒冷前線南下作戦を行って奴ら目を海に追い出したんですが、怒られ発生しなかった訳が漸く分かりました。
なんで巨大戦艦投入を予期できなかったかって?出来る訳ないじゃん!こっちで逃げる手段用意してたんだから大人しく乗ると思ったんですよ!
私は達は、北方大陸の南端に最後に残されたオーク居留地最大の港に、最後まで移送を拒んでいた地主たちの船を態と残して置きました。かな~り抵抗はありましたが、既に篭絡していた連中を扇動し、坊主共に世界の終わりじゃ~!と叫ばせ、本当に頑固なのは物理でキレイキレイしてまでです。
これは挑戦状の意味でもありました。正々堂々勝負したる!決戦の地は逃げ場など無い海の上じゃい!と私からの宣言なのです。
正直嫌でしたよ?相手が乗り込もうとしたら、引っ張ってきた永遠の冬の中から飛び出して海岸を血に染めた方が良いとも今でも思っております。なんでしたら海から逆上陸かけても良かった。その方は絶対に被害は少ないと断言できます。
私はごねました!泣きました!暴れて喚いて地団駄を踏んで嫌々したのです!でも家族総出で我儘な婆ちゃんを施設送りにしようして来られては敵わなかった!
「向こうが死地に身を置けと言っているのだ。外なる神とは言え神、それに逆らう事は出来ん。何、気にするな。私はそれ位で死なんさ」
止めて下さいまし旦那さま!死亡フラグを高々と掲げるのは!
「母よ。我々だけが死を免れる場所に居続けるのは余りに虫が良すぎる。相手に理不尽を強い続けるなら、せめて対等な立場で戦うべきではないか?それが支配する者のせめて物義務だと俺は考える」
私の息子の癖に頭イーリアスぅ!!日本神話の方にしてぇ!!女装して刺し殺しても勝は勝なの~!
「バ…お義母さん、旦那もこう言ってますし、子供では無いのですか…あ~まどっこしい!海の上結構じゃないのさ!やってやろうじゃないの!それでオレらをこれまでブサイク扱いしてた連中を纏めて始末できんだ!命を賭ける価値は充分あるね!腹くくれや!」
ババアって言おうとした~!!息子の嫁から言われるのはちょっと辛い!!!
夫、息子、息子の嫁にそうまで言われ、我が陣営の者共も「「やるべ」」「「そろそろ海で喧嘩したかった!」」と言いやがって下さますと、当初構想を退けざるを得なかった!本当は誰が真面に戦うかゲハハハハっと言いながら挟み撃ちにしてハメ殺す心算だったのに…薄々それやると取返しの付かない神罰くらう可能性は理解してましたが…
一応交換条件は飲ませました。ですのでこうして私も戦場に立っているのです。私を後方腕組み要員にしようとするのは無駄!指揮官先頭!現代のエルフは野蛮なれどアンシャンレジームの美を体現するのだ!大丈夫!銃弾も砲弾もまだこの世界にはない!!
「そう思ってたのにこれよ!!!獅子鷲号に近づけば近づくほどこれよ!!!前が見えない!!!右舵!!!左舵!!!転舵しなさい転舵!!弾切れないのかお前ら!!!
そこまで叫んでおりますと、視線を感じました。遠く波間に浮かぶオーク側の船を見れば、確かに船から船へYOSITUNE!しながらオークを切り刻んでいたお兄様の目がしっかりと私に向けられているのがわかります。愛し合う夫婦ですもの分かるの!
私のお目目に写るお兄様はオークの返り血で全身を朱に染めておりますが、傷一つ無くしっかと揺れる船上で立たれております。そのお兄様は私の視線を受け、身に纏うドラム缶鎧と同じく朱に染まった剣で獅子鷲号を示されました。
ああ、声が届かないのがもどかしい!!正規に魔法を学ばれた最後のエルフであるお兄様は身体強化の達人ですが新世代のエルフの様に奇跡の力を振るう事はできないのです。神様のケチ!!しかし、何をお言いになりたいかは理解できます。
「撃ち方止め!!残ってる槍をアイツの船体に叩き付けなさい!!文句は後!早よやりなさい!」
私の乗るロングシップから乗員の孫ズの膂力を持って永氷の穂先を持った投げ槍が放たれ、獅子鷲号の半分装甲の剥がれた船体にめり込んでいきます。お兄様はそれを確認すると乗っていた船の後方に下がり一気に駆けていかれます。
飛翔と言って良いでしょう。人間さんでは決して出来ない速さで空中を切り裂き、獅子鷲号に向け飛ばれて行きます。あの方は単身乗り込む御積りなのです。




