四章 今はまだ気付かず
自分の部屋の前までたどり着いた愛理は、鞄から鍵を取り出し、鍵穴に差し込み、開錠する。
「ふぅ……」
部活はなかったものの、商店街での出来事のおかげで、妙に疲れてしまっていた。ため息をつきながらも、部屋に入り、ドアの鍵をかけなおす。
(とりあえず、テレビつけて、鍋の用意をしよう)
そう思って、まずは、リビングに向かい、テレビをつける。ちょうど、夕方のニュース番組が始まっていた。
そして、隣のキッチンに向かい、鍋を取り出し、早速、夕食を作り始めようとした。
(あれ?)
鍋をコンロにセットした愛理は、シンクを見て、疑問に思う。
そこには、今朝の朝食のときの食器がきれいに洗われて、並べられていた。
(私、洗ってから出かけたっけ?)
今朝のことを思い出そうとするが、正直、そんなことまで覚えていなかった。
(……洗ったんだろうな、洗われてるってことは)
なんとなく、釈然としないものの、そう考え、夕食の準備を再開する愛理。
野菜を切り、だしを用意している間に、釈然としなかった思いも消えていった。
食後、愛理はいつも通りに風呂に入り、宿題などを済ませ、しばらくテレビを眺めていた。
別段、面白い番組はやっていない。
「ふぁ」
あくびをした愛理は、時間を確認する。
(十時か……)
特にすることもなかった愛理は、明日も朝錬があることや、今日の疲れも考慮して、寝ることにした。
リビングにあるベッドに入り込んだ愛理は、テレビを消し、部屋の電気を消そうとして、
(あ、ドアの鍵、かけたかな?)
と、入り口の施錠を忘れてないか気になったので、確認することにした。
(大丈夫、忘れてない)
入り口の鍵はしっかりかけられていた。愛理はガラス戸の施錠も念のために確認し、問題ないことを確認すると、今度こそ電気を消して、ベッドに寝転がった。
(――おやすみ)
心の中で、誰に言うでもなくそう呟き、愛理は眠りに落ちていった。
彼女の日常が、変わり始めていることへの自覚は、まだ、ない。




