表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/29

二十三章 長かった夜

「これを使えば、一瞬だけどあいつの《雷霆》を無効化できるんじゃない?」

 愛理は、あるものを示して、千風に問う。

「……本当に、『一瞬』ですが、可能でしょうね」

 千風は、そのものの、ある性質を考えて答える。

「でも、こんなもの普通に使っても、すぐばれてしまいますよ」

「その問題を私と千風の天恵で解決するのよ」

 そう言って、愛理はそれに細工を施すことにした。


(うまくいく保障はないけど……)

 千風は、集中して力を溜める。

 一瞬で相手を倒すための力を。

(やってやるんだ! 愛理と一緒に!)

 決意を目に湛え、千風は高峰に向かって走り出す。

「あ? 馬鹿か、お前」

 驚いたような表情を一瞬見せ、千風を馬鹿にする高峰。

 その反応は当然である。高峰は、攻防一体の《雷霆》を発動している。

 千風のように単純に突っ込んでくるだけでは、《雷霆》に阻まれて、弾かれるだけだ。

 しかし、次の瞬間、

「っ!」

 高峰は見た。

 資材の影から、愛理が飛び出してくるのを。

(今更何か仕掛けるのか!?)

 突っ込んでくる千風は、《雷霆》により阻まれる。意識を愛理に集中させる高峰。

 そして、愛理が何かを投げつける動作をした。

(飛び道具?)

 かすかにボール状のものであることは分かった。

 警戒した高峰はそれを避けようとしたが、そんなことをするまでもなかった。

 愛理の投げたそれは、高峰のはるか上に、投げられている。

「はっ!」

 ただの虚仮脅しと、高峰は考えて、馬鹿にした笑いを漏らしたが、あることに気付いた。

(? なんだ、あれは……?)

 愛理が投げつけたものは、上空からヒラヒラと落ちてくる。しかも、その数は多い。くしゃくしゃにされた紙のようなものだ。愛理は、ボール状のものではなく、本来、平らなものを丸めて投げたようだ。

「千風!」

 愛理の合図に、千風が反応する。

 千風はポケットからあるものを取り出した。愛理が投げたものと同じものだ。

 そして、意識を集中させ、天恵を発動させる。愛理の天恵でバラバラに《破壊》されていたそれを、自身の天恵で《再生》させる。《再生》が始まった直後に、千風は自身の持つそれを空中に放った。

 みるみる投げられた破片はつながっていき、高峰の頭上に、その本来の姿を現す。

「なっ!?」

 驚愕の声を上げる高峰。自らを完全に包み込むように落ちてくる、予想外の物体を目にして叫ぶ。

「ブ、ブルーシート!?」

 愛理たちが、《破壊》し、《再生》したそれは、紛れもなく、資材にかけられていたブルーシートだった。

 ただ、単にブルーシートを投げるには、シートは大きすぎた。高峰に気付かれないようにするためにも、愛理は、自身の天恵でバラバラに破壊していたのだった。

(ちっ! だから何なんだ! 目隠しのつもりか!?)

 あまりに予想外な物体の出現に、叫んでしまった自分に対して、心の中で舌打ちし、高峰は状況を考える。

 もはや、高峰の体を包み込むように広がっているブルーシートを回避することは不可能だ。このままでは視界を遮られ、払いのけるなどの動作で、致命的な隙ができるだろう。

 しかし、高峰は焦らない。焦る必要がない。

(シートを被った状態でも、俺の《雷霆》はシートを突き抜けて、俺を守る!)

 自身の《雷霆》の性能を信じていた。

 自分のすぐ近くに、千風が辿り着いた気配を感じる。

(迎撃だ! 《雷霆》!)

 高峰の全身から、稲妻が放出される。

 稲妻は、シートを突き破り、千風を感電させる。

 そうなるはずだった。

「なぁっ!?」

 またも、驚愕の声を上げる高峰。

《雷霆》の稲妻はシートを突き抜けなかった。シートは焦げてしまったが、外に稲妻が漏れることを、一瞬だが、防げた。


 ブルーシートは、ポリエチレンなど合成樹脂でできている。合成樹脂の特徴の一つに、絶縁体(電気を通さない性質)であることが上げられる。

 つまり、ブルーシートが絶縁体であったので、稲妻はシートを突き破れず、外部にまで《雷霆》の効果が及ばなかったのだ。

 ただし、熱に弱い性質もあったので、《雷霆》を抑えられるのは、一瞬だけだった。

 しかし、千風には、その一瞬で十分だった。


 信じられない出来事が目の前で起こった高峰は、何が原因かを考えようとした。

 しかし、強烈な打撃が高峰に襲い掛かる。

 ゴキッ!

「がっ!」

 シートの上から高峰は、顔面を殴りつけられる。鼻の骨が折れた音が響く。

 しかし、それだけでは千風の攻撃は終わらない。

 この一瞬のために、溜め込んだ力を解放し、一心不乱に、全身全霊をこめて攻撃を続ける。

 側頭部、顎、ボディ、顔面…ひたすらに、嵐のように攻撃を続ける千風。

 高峰は動かない、否、動けない。

 千風の渾身の連打を受けて、意識は完全に違う世界へ吹っ飛んでしまっている。倒れることを許さない千風の乱打のせいで、棒立ちとなっているだけだ。

 サンドバッグと化した高峰に、千風は最後の一撃のとび蹴りを放とうとする。

 そこに愛理も、走って勢いをつけた蹴りを繰り出し、とどめに加わる。

「「だあぁぁぁあっ!」」

 気合の入った掛け声とともに、

 二人の蹴りは完璧に同じタイミングで高峰を直撃し、吹っ飛ばした。

 教会の入り口近くにまで吹っ飛んだ高峰は、ピクリとも動かない。

 千風は、急いで自分のボストンバッグに向かい、中から手錠を取り出し、それを気絶した高峰にかける。

 そして、全てが終わった。

 長い、長い一日の終わり。

 愛理は、千風に歩み寄る。

 千風も、愛理に歩み寄る。

 そして、お互いの右手を高く上げ、

 ハイタッチを交わした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ