いざ森へ
……俺は今、行ったことのない森の中を1人で歩いています。
(初めての依頼、しかも初めての場所なんだから、経験豊富な人を1人でも付けてくれよ!)
心の中で叫びながら慎重に道なき道を歩く。
一体どんな依頼が来たかと言うと、最近森付近の村の農作物が魔物に荒らされているから、解決してほしいと言うものだ。
その依頼の報酬は銀貨2枚(日本円で二千円程度)だ。
命を賭けないかもしれない依頼にしては、正直安い。安すぎる。
しかも父から支給された武器はこのナイフ2本だけだ。
「お前には剣も槍も適性がない!だがナイフの扱いは異常なほど上手い!だからお前にはナイフを支給することにした。
大丈夫だ、農作物を荒らす程度の事しかしない魔物だったらリーチが不利でもナイフと技術があれば簡単に解決できる!よし、じゃあ行ってこい!」
なんて言われてこの状況に至った。
ナイフ以外の武器の適性がないからこの武器になるのは仕方がない。だけどどうして俺は1人で行かされてるんだ?
昔よりかなり強くなったとは言えこれはひどい。
だが断れる明確な理由はないので渋々ながら受け入れるしかなかった。
(人員足りてるだろ…!1人2人くらい付けろよクソ親父…!)
そうぼやきながら歩いていると木に付けられた傷の様な痕跡を見つけた。
(鋭い爪のような傷跡、狼か熊か?どっちにしろきついかなぁ)
痕跡を辿りながら歩いていると森の中に少し開けた空間がある事に気づいた。
(ここは……巣?)
そう思った刹那、背中に悪寒が走る。
何だ?この感覚…。
危険が迫っていると体が訴える。
「お初の実践運用だ、行くぞ!『思い見えざる』!」
そう唱え、俺は特異性の能力を解放した。
この能力は、目に見えないもの。主に生物の感情などの発生源とその対称の繋がりを見ることができるというものだ。
視界に真っ赤な荒々しい線が1、2…5本俺に刺さって見えた。
同時に体の5箇所に刺さるような痛みが現れた。
(とんでもない殺気だ…。気を引き締めろ…!)
自分を鼓舞し、線の伸びる方へ体を向け、ナイフを構えた。
来る…!
森の影から狼が俺の方へ飛びかかり、爪を振り下ろしてきた。それをナイフで受ける。
「おっ、重い…!」
(一斉に飛びかかってこないのは助かる。でも、俺と同じくらい、もしくはそれ以上の大きさってのと、一体でもこの強さってのは不味いかもな……)
引きながら受け流し距離を大きく取ると、森の奥から4体の狼が集まってきた。
(さて…と、どうしたもんかな?)
奴らに向き直った時、死に瀕したピリピリとした感覚が全身に感じられた。
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