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第四章:神滅の聖域と、金色の反逆者 第42話:鋼鉄の円卓と、聖域の座標

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

▼ くろねこパパのX(Twitter)はこちら!

https://x.com/k7nature1

▼ 前話(第41話)のあらすじ

東京マザーサーバーを奪還したカズたちの前に、本物のミオが覚醒。しかし、そこには自分そっくりの「ミオドロイド」がおり、妹同士の静かな(?)火花が散ります。一方、北米のジャック大佐からの入電、そしてカズと全く同じ顔を持つ『金髪の総帥』からの宣戦布告により、戦いは世界規模、そして教団の「聖域」へと舞台を移そうとしていました。

――そして今回の第42話。

束の間の休息の中で、サクラがマザーサーバーの深層から持ち帰った「鍵」が明かされます。目指すは、地上遥か3万メートルの成層圏。人類の反撃の狼煙を上げるため、カズたちは世界各国のリーダーと「円卓」を囲みます。


 東京の空を焼き尽くすような朝日が、マザータワーの最上階『アーク・セクター00』を鮮やかに彩っていた。


 かつては冷徹な機械知能が世界を監視していたその空間は、今や香ばしいパンの匂いと、アールグレイの華やかな香りに包まれている。


「……はい、ミオちゃん。」


「いただきます ……んっ、美味しい! サクラお姉ちゃんの作ったオムレツ、世界で一番大好き!」


 サクラが差し出したオムレツを嬉しそうに頬張るミオ。その光景は、数日前までマザーサーバーの底で絶望していたとは信じられないほど、平和で、温かなものだった。

 だが、その横では「静かなる火花」が散っていた。


「……不合理です。私の熱量計算に基づけば、オムレツの内部温度はあと2.5度高い方が、マスター・カズの味覚受容体に最適化されたはずです。栄養価、効率、すべてにおいて私の計算が勝っています」


 ミオドロイドが、無表情のまま完璧に整えられた栄養食をカズの前に並べる。


「な、なによニセモノミオ! 料理は愛情なの! 温度じゃないの!」


「愛情という不確定要素を排除した結果が、私の存在です」


「もぉぉぉーっ!! お兄ちゃん! やっぱりこの子、今すぐリサイクルに出して!」


 二人の妹(一人はアンドロイド)の小競り合いに、カズは苦笑しながらコーヒーを啜るしかなかった。


「……ふふ、賑やかでいいじゃない。そう言えばあなたたち二人、少しは進展したのかしら?」


 傍らで壁に背を預け、優雅に脚を組んでいたアリスが、悪戯っぽくカズに視線を送った。彼女は手にした愛刀の鞘を指でトントンと叩きながら、カズの隣で甲斐甲斐しく立ち働くエリスへと視線を向ける。


「進展……って、何の話だ?」


「とぼけちゃって。あの子の顔をよく見てあげて。あんなに幸せそうなあの子、今までで見た事ないから。」


 アリスの言葉通り、エリスはカズのカップが少しでも空になれば、流れるような所作で紅茶を継ぎ足し、至福の表情で微笑んでいた。


「先輩。このティータイム終わったら、また次のお仕事を頑張りましょう。……私が、ずっと側で護っていますから」


 その美しい青色の瞳に宿る献身的な光に、カズは改めて自分の肩に掛かる責任の重さを感じていた。十九回のループを経て、ようやく手に入れたこの日常。これを壊させるわけにはいかない。


「……あぁ。ありがとう、エリス。助かるよ」


 カズがそう短く答えた瞬間。

 ラウンジの中央に鎮座する巨大なメインコンソールが、重厚な電子音を鳴らして起動した。


「……朝食の時間は終わりだ。カズ、繋がるぜ」


 コンソールの前で徹夜の作業を続けていたアダムが、赤くなった目をこすりながらホログラムのスイッチを入れた。


『――諸君。東京の英雄を待たせるわけにはいかんからな』


 空中に投影された巨大な立体映像。

 そこには、先程言葉を交わした北米防衛軍のジャック・ヘンダーソン大佐の姿があった。

 さらに、その隣にもう一つ、新たな回線が割り込んでくる。


『――ボンジュール、一ノ瀬 和。そして美しきフィッツジェラルドの娘たち』


 現れたのは、白銀の甲冑を纏い、腰に細身のレイピアを下げた一人の女性だった。

 長く燃えるような赤髪をポニーテールに結び、鋭く気高い意志を宿した碧眼。


 欧州防衛軍『聖騎士団パラディンズ』のリーダー、カトリーヌだ。


「北米のジャック大佐に、欧州のカトリーヌ……。世界のリーダーが揃い踏みか」


 カズが立ち上がると、ラウンジの空気が一瞬で「戦場」のものへと塗り替わった。


『時間がない。単刀直入に言う。カトリーヌ、例の「座標」の結果を伝えてやれ』


 ジャック大佐の荒々しい言葉に、カトリーヌが深く頷いた。


『……ええ。我ら欧州の古文書に記された魔術的伝承と、最新の衛星魔力観測、そしてアダムから共有された東京マザーサーバーのログを照らし合わせた結果よ。……魔術教団の本拠地「聖域サンクチュアリ」。その正体が判明したわ』


 カトリーヌが手元の端末を操作すると、ホログラムに地球の断面図が表示された。

 その視点は地上からどんどん高度を上げ――。


『聖域は、地上に存在しない。高度三万メートル……成層圏。時空転送技術によって空間そのものを「折り畳み」、光学迷彩と魔術障壁によって隠蔽された、浮遊する異空間の島……それが奴らの本拠地よ』


「三万メートル……!? そんな場所に拠点を作ってるのか」


 カズが息を呑む。かつて父たちが開発した時空干渉技術は、そこまでの規模に悪用されていたのだ。


『奴らはそこから「神の杖」とも呼べる軌道上からの魔術爆撃と、全世界のネットワークへの直接ハッキング……そしてクローンによる人類置換の最終コマンドを発信しようとしている。……これを発動させれば、一週間以内に地球上の全人類はクローンと入れ替わることになる』


『つまり、チェックメイトだ。俺たちはその前に、あそこへ乗り込んで物理的に叩き壊さなきゃならん』


 ジャック大佐が、鋼鉄の義手をギチ、と鳴らしてカズを睨みつけた。


『だが問題がある。あの「聖域」を守る魔術障壁は、外部からのミサイルや通常兵器をすべて「別次元」へ受け流してしまう。……唯一の突破口は、教団のシステムと「直接同期リンク」している者だけが持つパスコードだ。だが、そんなものは我々の手には――』


「……ワタシの、中に。あります」


 静寂を破り、サクラが静かに歩み出た。

 ジャックとカトリーヌの視線が、モニター越しにサクラへと集中する。


「サクラ姉さん……?」


「ワタシが、あのマザーサーバーのコアとして取り込まれていた時の記憶……ワタシの魂は、教団のメインサーバーの一部と『同化』していたの。……あの時、あの「金髪の男」がワタシの中に流し込んできた情報の奔流。その記憶の断片を、ワタシは自分の深層意識の底に隠し持っていたみたい」


 サクラは目を閉じ、自身の額に手を添えた

 彼女の全身から、淡い純白の魔力が立ち昇る。


「教団の聖域へと続く『時空のゲート』を開くための、暗証コード……。これを使えば、三万メートルの空にある門をこじ開け、内部に侵入できるはずよ」


『……信じられるか? 敵のコアにされていた女だぞ』


 ジャック大佐が不信感を露わにするが、カトリーヌがそれを制した。


『ジャック、疑っている暇はないわ。一ノ瀬 和……あなたの姉上が提示したこのデータ、私たちが収集した観測波形と100%一致する。……これが、唯一の希望よ』


「……わかった。姉さん、無理はしないでくれ」


 カズがサクラの肩を優しく叩くと、彼女は「大丈夫よ」と、弟を安心させるように微笑んだ。


「決まりだ。俺たちはこれより、成層圏にある教団の聖域を目指す」


 カズが宣言すると、アダムがニヤリと笑って立ち上がった。


「そう言うと思って、準備はしておいたぜ、親友。SUVの改造はすでに終盤だ。成層圏まで一気に突き抜けるための追加ブースター『アーク・ウイング』。リニア・ドライブを空中機動用に再調整した、俺の最高傑作だ」


「助かるよ、アダム」


 カズはラウンジの窓の外を見上げた。

 突き抜けるような青空。その遥か彼方、目には見えない高度に、すべての悲劇の元凶が潜んでいる。

 そこには、自分と同じ顔をした「怪物」がいる。

 十八回のループで自分を殺し、エリスを苦しめ、世界を地獄へと変えようとしている男。

「……明日香、夏帆。待っててくれ。お前たちがいる未来へ、この道を繋いでみせる」


 カズの瞳に、極限の決意が宿った。

 もう、死に戻りというセーフティネットはない。エリスが次元を越えてきたことで、因果律はこの一回にすべてが凝縮されている。失敗すれば、そこで物語は終わる。

 だが、今のカズの背中には、最愛の家族と、背中を任せられる最強の仲間たちがいた。


「行こう。……聖域サンクチュアリを、地獄に変えてやる」


     *


 数時間後。マザータワーの屋上ヘリポート。

 そこには、漆黒の装甲に加え、翼を模した大型のブースターユニットを装備したホバーSUVが、轟々と低い磁気音を鳴らして待機していた。


 カズが運転席に座り、エリスが助手席へと滑り込む。

 後部座席には、アリス、サクラ。

 そしてアダムは共にミオとミオドロイドが地上から管制を担当するため、コンソールを通じて最後の指示を送る。


「カズ、いいか! スラスト出力を一気に上げろ! 音速を突破する瞬間、サクラさんの暗証コードをサーバーに叩き込むんだ! タイミングを外せば、空中で分解するぞ!!」


「あぁ、分かってる!……全員、しっかり掴まってろよ!!」


 カズが操縦桿スラスト・レバーを限界まで引き倒した。


 キィィィィィィィィィィン……ッ!!


 鼓膜を劈くような臨界音が響いた瞬間、SUVの車体下部から爆発的な青白い磁力光が迸った。


 ドォォォォォォンッ!!!!!


 東京の空を真っ二つに切り裂くように、一筋の輝く『雷光』が垂直に立ち昇った。


 重力を嘲笑う圧倒的な加速Gが全員をシートに押し付ける中、漆黒の車両はみるみるうちに高層ビルを眼下へと追いやり、雲海を突き抜け、真っ青な蒼穹の彼方へと消えていった。


 高度三万メートル。


 神の領域に隠された「聖域」を目指し、十九回目の反撃の翼が、今、空へと舞い上がった。


第四章 第43話へとつづく

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

第四章、物語の舞台はいよいよ地上を離れ、遥か上空の成層圏の「聖域」へと移っていきます!

今回は、激闘を終えたカズたちの束の間の朝食シーンから、世界規模の作戦会議へと繋がる「静」と「動」を描きました。

二人のミオの相変わらずの掛け合いや、アリスのさりげない気遣い(とお節介)、そしてサクラ姉さんの「ただ守られるだけじゃない覚悟」。家族と仲間の絆が、より一層深まっていきます。


欧州のリーダー、カトリーヌの登場し、今後は世界とも連携をとりながらストーリーが進んで行きます。

▼ 次回予告:第43話

成層圏に突入したカズたちの前に、聖域の防衛網が牙を剥きます。

空中で繰り広げられる、これまでにない大迫力のドッグファイト!

そして、ついに「聖域」の扉が開かれた時、カズたちが目にする絶望的な光景とは……?


少しで興味を持っていただけましたら、ぜひページ下部の**【★】での評価や【ブックマーク】**での応援をよろしくお願いいたします!

皆様の応援がなによりの励みになりますら、

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