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第三章:オブシディアン地下迷宮(マザーサーバー)奪還編 第40話:光と雷の交響曲(シンフォニー)と、奪還の暁

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

▼ くろねこパパのX(Twitter)はこちら!

https://x.com/k7nature1

▼ 前話(第39話)のあらすじ

元の世界線へ帰還したカズたち。しかし、歴史が書き換わったことでマザーサーバーの防衛システムもアップデートされ、教団兵たちの血肉を触媒とした『魔術と科学の融合魔獣アマルガム』が産声を上げます。

絶望的な強敵を前に、カズ、エリス、そして守られるだけではないと決意したサクラも参戦します。

――そして今回の第40話。

第三章『オブシディアン地下迷宮マザーサーバー奪還編』、クライマックスです!

三人の絆が奇跡を起こす総力戦。そして、長く暗い地下迷宮を抜け、カズたちが見た景色とは……?


「ガァァァァァァァァッ!!!」


 全高十メートルを超える融合魔獣アマルガムの咆哮が、広大なマザーサーバーのドーム空間を激しく揺るがした。


 数百人のクローン兵の肉がドス黒く溶け合った生体筋肉と、鋼鉄の装甲がグロテスクに絡み合う巨躯。

 顔面に浮かび上がる紫色の魔方陣が、不気味な脈動と共に膨大な魔力を周囲に撒き散らしている。


『――塵ト化セ、特異点』


 大司教の合成音声が響いた瞬間、魔獣の背中に生えた機械の翼が大きく羽ばたいた。


 ズゥゥゥゥンッ!!


「なっ……身体が、重い……!?」


 カズの膝が、強制的に床へと押し付けられた。

 アルファ・レオンを持つ腕が、まるで鉛の塊のように重い。魔獣の翼から放たれた『重力魔術』が、空間そのものの質量を狂わせているのだ。


「先輩!!」


 黄金の雷光を纏うエリスが、重力場を強引に引き剥がしながらカズの前に躍り出る。

 だが、その速度はいつもの彼女の神速には遠く及ばない。


 ギィィィィンッ!!


 魔獣の巨大な腕が、暴風と共に薙ぎ払われる。

 エリスは【光の聖剣】を盾にして受け止めたが、圧倒的な質量と重力加速度が乗った一撃に、彼女の小さな身体は数十メートルも後方へと弾き飛ばされてしまった。


「くっ……!」


「エリスッ!」


 カズが叫び、魔獣の関節部を狙ってアルファ・レオンの引き金を引く。


 ズガンッ!!


 黄金の魔弾が魔獣の左肩を正確に撃ち抜き、肉と装甲を吹き飛ばす。だが――。


『無駄ダ。我ラハ群体。死ニ絶エタ肉ハ、何度デモ蘇ル』


 グチャグチャという不快な音と共に、吹き飛んだはずの左肩の肉芽が瞬時に増殖し、一秒も経たずに元の禍々しい腕を再生させてしまった。


「くそっ!……物理攻撃も魔弾も、再生速度に追いつかない。おまけにこの異常な重力場……!」


 カズが焦燥に奥歯を噛み締める。

 このままでは、ジリ貧どころか一方的な蹂躙で終わってしまう。


「……カズ、エリスちゃん! 私に十秒だけ時間をちょうだい!」


 重圧の中で、サクラの凛とした声が響いた。

 彼女は、漆黒のクリスタルの床に膝をつき、奪い取った教団兵の紫色の魔杖を、床へと力強く突き立てていた。


「姉さん!? 何をする気だ!」


「この空間の魔力は、完全にコアを搾取するために最適化されている。……つまり、私なら、このマザーサーバーの魔力回路ネットワークの『流れ』を逆にハッキングできる!」


 サクラの長い黒髪が、吹き荒れる重力嵐の中で美しく舞い上がる。

 彼女は目を閉じ、床から伝わる微細な魔力の脈動に意識を研ぎ澄ませた。

 魔獣が放つ重力魔術の供給源。それは、魔獣自身からではなく、このマザーサーバーの床下に張り巡らされた『地脈レイライン』から引き上げられている。


『愚カナ……。接続権限ヲ失ッタ元コア風情ガ、システムニ干渉デキルト――』


「舐めないで! 私は、カズとミオのお姉ちゃんなのよッ!!」


 サクラがカッと目を見開き、自身の内に残された純白の魔力を、魔杖を通じてマザーサーバーの深淵へと全力で叩き込んだ。


 バチィィィィィィンッ!!!!


 紫色の魔方陣が敷き詰められていた漆黒の床が、サクラの足元から同心円状に『純白の光』へと上書き(オーバーライド)されていく。


『――警告。システム領域ヘノ深刻ナ魔術干渉ヲ検知。重力制御プロセス……強制停止』


 無機質なシステム音声と共に、カズとエリスを押し潰していた重力場が、嘘のようにフッと掻き消えた。


「今よ、エリスちゃん!!」


「はいッ!! ありがとうございます、サクラお姉様!!」


 重力の枷が外れたエリスは、水を得た魚どころではなかった。

 彼女の美しい青色の瞳が鋭く光り、光の聖剣から溢れ出す黄金と紫の雷光が限界点を超える。


 ――パァンッ!!


 音の壁を突破する破裂音。

 エリスの姿が、完全に視界から消失した。


『ナッ……!? 捕捉不能、対象ガ――』


「遅い」


 魔獣の頭上、遥か数十メートルの虚空。

 銀髪を三日月のようになびかせたエリスが、逆落としに急降下してくる。


「邪魔な羽は、毟り取ります!!」


 ズバァァァァァァァァンッ!!!!!


 黄金の閃光が十字に交差する。

 魔獣の背中に生えていた巨大な機械の翼が、エリスの神速の連撃によって根元から鮮やかに切断され、轟音と共に崩れ落ちた。


『ガァァァァァァァッ!!』


 悲鳴を上げる魔獣の腕が、エリスを叩き落とそうと迫る。

 だが、エリスは空中で空を蹴るように軌道を変え、その巨大な腕を螺旋状に駆け上がりながら、再生の要となっている生体筋肉の束を次々と削り落としていく。


「先輩への射線は、私がすべてクリアにします!!」


 エリスの言葉通り、翼と腕を失い、体勢を大きく崩した魔獣の『胸の核』――大司教の顔が浮かび上がるコアが、カズの真正面に完全に晒された。


『オノレ……オノレェェェェェッ!! 特異点風情ガ、我ラガ神ノ国ヲォォォッ!!』


 追い詰められた大司教が、狂乱の叫びを上げる。

 魔獣の胸部コアが、ドス黒い太陽のように膨張し始めた。自らの肉体とマザーサーバーの残存エネルギーをすべて暴走させ、この地下空間ごとカズたちを消し飛ばす『自爆メルトダウン』の構えだ。


「……させるかよ」


 カズは、静かに、だが確かな殺意と覚悟を持って、アルファ・レオンを両手で構えた。


 魔獣の再生を上回る、圧倒的な【破壊】。

 カズの全身から、これまでにないほどの莫大な黄金のオーラが立ち昇る。


「先輩!!」


 宙から舞い降りたエリスが、カズの背中合わせにピタリと着地し、カズの右肩にそっと左手を添えた。


「私の光と雷……すべて、先輩に預けます!」


 エリスの身体から、彼女の命を燃やすような黄金と紫の雷光が、カズの右腕を通じてアルファ・レオンへと流れ込んでいく。


「カズ!!」


 さらに、カズの左側には、サクラが駆け寄っていた。

 彼女はカズの左肩に両手を添え、マザーサーバーから強引に引き剥がした純白の魔力を、惜しみなく弟の背中へと注ぎ込む。


「カズの道を、ワタシが照らすわ!」


 カズを中心に、エリスの【光雷】、サクラの【純白】、そしてカズ自身の【アルファ】が、一つの銃口へと凄まじい密度で収束していく。


 空間が歪み、世界そのものが震えるほどの絶対的なエネルギー。


 三人の家族と仲間の絆が、今、一つの極大魔弾として完成しようとしていた。


『バカな……ソンナ魔力出力、神ノ奇跡デモナケレバ――!!』


「お前はあの世で神にでも祈ってろ!」


 カズの黄金の瞳が、大司教の絶望を真っ直ぐに射抜く。

「俺たちの未来は、俺たちの手で切り拓く!! 東京ここは、俺たちのものだ!!」


 限界まで引き絞られた引き金が、ついに引かれた。


「消え失せろッ!【極光星群アルファ・トリニティ・バースト】!!!」


 ズドゴォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!


 天地を揺るがす轟音。


 放たれたのは、もはやビームなどという生易しいものではない。

 光と雷、そして純白の魔力が完全に融合した、直径数十メートルにも及ぶ『極太の破壊の奔流』。


 放たれた一撃は、魔獣が放とうとしていた暗黒の太陽を紙屑のように呑み込み、その巨躯を、大司教の仮面ごと、細胞の一欠片すら残さず完全に宇宙の塵へと還元した。


 バシユュュュュュン……ッ!!


 マザーサーバーの果てまで貫通した極光が、やがてゆっくりと収束し、空気中にキラキラと光の粉となって舞い散っていく。


     *


 再び静けさが、辺りを支配する。

 魔獣が消滅したことで、マザーサーバーの全機能が完全に停止する。


 青白い照明が次々と落ち、非常用のオレンジ色のランプだけが、荒れ果てた漆黒のクリスタルフロアを薄暗く照らし出していた。


「……終わった……のか?」


 カズが、限界を迎えて膝をつきそうになる。

 すかさずエリスがその身体を支え、サクラが優しく背中を撫でた。


「ええ、終わったわ。……カズ、エリスちゃん。本当に、よく頑張ったね」


 サクラの目から、安堵の涙がこぼれ落ちる。


「先輩……! 私たち、ついに……!」


 エリスもまた、すすり泣きながらカズの胸に顔を埋めた。


 その時


 ピーッ、ガガッ……。


 マザーサーバーのジャミングが消滅したことで、カズの網膜ネットワークが久々に再起動の音を鳴らした。


 表示されたのは、待ち焦がれていた暗号化通信の着信。


『……カズ! 繋がったか!? おい、無事なのかカズ!!』


 通信越しに響く、アダムの焦燥に満ちた声。


「アダム! あぁ、生きてる! こっちは片付いた。ミオはどうだ!?」


『ふふっ……相変わらず、人使いの荒いカズ様ですね』


 通信が切り替わり、網膜プロジェクターに立体映像ホログラムが浮かび上がった。

 そこに映っていたのは、スラリとした背丈に、美しい銀髪をなびかせたアリスの姿だった。

 

『安心してください。ミオちゃん、たった今目を覚ましましたよ。今はアダムの背中で、疲れてまた眠ってしまいましたが……怪我一つありません』


「アリス……! アダム……!」


 ホログラム越しに見える、スヤスヤと眠るミオの姿。

 それを見た瞬間、カズの張り詰めていた緊張の糸が完全に解け、目から熱いものが溢れ出した。


「ありがとう……二人とも。今、そっちに帰る」


 通信を切ろうとした、その時


 ザザッ……。


 完全に消滅したはずの魔獣の灰の中から、ノイズ混じりの、死に絶える寸前の大司教の呪詛が響いた。


『……愚カナ……。マザーサーバーハ、堕チタ……。ダガ……我ラガ教団ノ「聖域」ト……オブシディアンノ「真ノ総帥」ハ……スデニ、次ノフェーズヘ……移行、シタ……』


 不吉な予言を残し、ノイズは完全に途絶えた。


「……真の、総帥……」


 カズが、その言葉を重く反芻する。


「先輩。今は、考えないでください」


 エリスが、カズの冷たい手を、両手でギュッと温かく包み込んだ。


「何が待っていようと、私たちが一緒に叩き潰すだけです。今は……みんなの所に帰りましょう」


「……あぁ、そうだな」


 カズは頷き、エリスとサクラと共に、地上へと続く巨大なメインエレベーターへと歩みを進めた。


 重厚な扉が閉まり、エレベーターが長い時間をかけて上昇していく。

 やがて、駆動音が止まり、扉がゆっくりと左右に開いた。

 地下の淀んだ空気から解放され、冷たくも澄み切った一月の風が、三人の頬を撫でる。


 目の前に広がっていたのは、瓦礫と高層ビルが入り混じる、2100年の東京の景色。


 そして、その地平線の彼方から――。

 長く暗い夜を切り裂くように、眩く力強い『暁の光』が、世界を黄金色に染め上げながら昇ってこようとしていた。


「……綺麗ね」


 サクラが、眩しそうに目を細める。


「ええ。とても……美しい夜明けです」


 エリスが、カズの腕にそっと寄り添う。


「ああ。俺たちの、新しい未来の始まりだ」


 昇りゆく朝日に照らされながら、カズたちは、仲間たちの待つ帰路へと、確かな一歩を踏み出した。


 彼らの見えざる戦争シャドウ・ウォーは、まだ終わらない。

 だが、絶望の十九回目のループを打ち破った彼らの瞳には、もう微塵の迷いもなかった。


(第三章 オブシディアン地下迷宮奪還編・完)


(第四章へとつづく)

最後までお読みいただき、本当に、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

これにて第三章『オブシディアン地下迷宮マザーサーバー奪還編』、完結となります!!

絶望の魔獣アマルガムに対し、エリスの光、サクラ姉さんの純白の魔力、そしてカズのアルファが一つになった『極光星群アルファ・トリニティ・バースト』!

家族と仲間の絆が、ついに十九回目の死のループと、東京の地下を支配する闇を打ち砕きました。アダムやアリス、そしてミオの無事も確認でき、朝日に照らされるラストシーンで幕を閉じました。

▼ 次回予告:第四章

しかし、大司教が最期に残した「教団の聖域」と「真の総帥」という不吉な言葉。

東京を奪還したカズたちですが、彼らの戦いの舞台は、さらに巨大な世界の闇へと移っていきます。

第三章完結しました。次回から第四章かスタートします。気になると思っていただけましたら、ぜひページ下部の**【★】での評価や【ブックマーク】**での応援をよろしくお願いいたします!

皆様の応援が、第四章の執筆への何よりの原動力になります!!これからも、カズとエリスたちの物語を一緒に見届けてください!

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