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第三章:オブシディアン地下迷宮(マザーサーバー)奪還編-第39話:統合される歴史と、新たなる絶望の産声

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

▼ くろねこパパのX(Twitter)はこちら!

https://x.com/k7nature1

▼ 前話(第38話)のあらすじ

空白の世界線で、ついに家族を襲うすべての元凶『魔術教団』と激突したカズとエリス。二人の息の合った連携により教団の強襲部隊を撃退し、悲劇が起きる前にサクラとミオを救い出すことに成功しました。そして精霊シフティの力により、四人はついに仲間たちの待つ『元の世界線』へと帰還のゲートを潜ります。

――そして今回の第39話。

無事に現代へと帰還したカズたちでしたが、到着したマザーサーバーの最深部には、思わぬ「違和感」と「試練」が待ち受けていました。タイムリープによる世界の書き換え、そして魔術教団の真の恐ろしさがカズたちに牙を剥きます。


 視界を白く染め上げていた黄金の光が、徐々に輪郭を取り戻していく。


 時空を渡る浮遊感が消え、カズの革靴が硬質な床をしっかりと踏みしめた。


「……着いた、のか?」


 カズが目を瞬かせると、そこは見覚えのある、果てしなく広大なドーム状の大空間だった。


 見渡す限りの漆黒のクリスタルの床。遥か頭上で星空のように明滅する青白い天井の光。

 間違いなく、サクラをコアとして取り込んでいたオブシディアンの心臓部――マザーサーバーの最深部だ。


「先輩、無事に元の時間に戻ってこられたみたいです!」


 隣で、エリスがホッと安堵の息を吐きながら微笑む。

 その背後では、サクラも無事に転送を終え、信じられないものを見るように巨大な空間を見回していた。


 だが、カズの【アルファ】の知覚が、すぐさま強烈な『違和感』を警鐘として鳴らした。


「……おかしいぞ。エリス、周りを見てみろ」


「え……?」


 カズに促され、エリスが改めて空間の中央を見据える。

 そこには、あの悍ましい巨大な機械の花――『メカ・フローラ』が鎮座していた。


 だが、カズたちが死に戻りをする前に繰り広げた、あの熾烈な死闘の痕跡が、何一つとして残っていなかったのだ。


 エリスが斬り落としたはずの触手は無傷で8本すべてが揃い、カズが粉砕したはずの装甲も、プラズマの爆炎で蒸発したはずの床も、傷一つなく完全に元通りになっている。

 まるで、『戦闘が始まる前の状態』に巻き戻っているかのように。


「どういうことだ……。俺たちが戦った形跡が、完全に消えてる」


 カズがアルファ・レオンを構え直し、油断なく周囲を警戒した。


「カズ! 大変、ミオが……ミオがいないわ!!」


 その時、背後でサクラが悲痛な声を上げた。

 カズが振り返ると、時空のゲートを潜る直前までサクラがしっかりと手を握っていたはずの、幼いミオの姿がどこにもなかった。


「なっ……ミオ!? どこだ、ミオッ!!」


 カズの血の気が引く。転送の途中で、次元の狭間に落ちてしまったのか!?


『――落ち着け、馬鹿者どもが』


 カズの胸元から、黄金の粒子と共にシフティが具現化し、呆れたようにため息をついた。


「シフティ! ミオはどうなった!? なぜ消えたんだ!」

『消えたのではない。お主らが元の世界線に帰還したことで、世界のことわりが正常に「統合アップデート」されただけじゃ』


 シフティはふわりと宙に浮き、サクラに向かって安心させるように続けた。


『案ずるな、サクラよ。この現在の世界線には、すでにカズが救い出し、アリスやアダムに預けて安全圏にいる『現在のミオ』が存在しておる。いくら時空を超えたからといって、同じ世界に同一の魂を持った人間が二人、同時に定着することはできんのじゃ』


「同一の、魂……」


『そうじゃ。過去から連れてきたミオの肉体は、この世界線に到達した瞬間、より強い因果を持つ『現在のミオ』の方へと吸収された。……無論、過去でカズたちに救われたという『記憶』を持ったまま、安全な場所で目を覚ましておるはずじゃ』


「本当……? 本当に、ミオは無事なのね?」


 サクラが、両手で胸を押さえ、安堵の涙をポロポロとこぼした。


「ああ、よかった……。姉さん、ミオは俺たちの仲間が絶対に護ってくれている。心配いらない」


 カズも深く息を吐き出し、胸をなでおろした。


「では、この空間の戦闘の跡が消えているのも、世界の統合によるものですか?」


 エリスが、光の聖剣を構えたままシフティに問う。

『いかにも。お主らが過去を改変し、サクラという『コア』を事前に救い出してしまったが故に、あのメカ・フローラとの戦闘の歴史そのものが矛盾を起こし、リセットされたのじゃ。……だが、喜んではおられんぞ』


 シフティの黄金の瞳が、スッと細められた。

『コアを失おうとも、ここは依然として敵の心臓部。お主らが歴史を書き換えたことで、奴らもまた、新たな「防衛システム」を再構築しておるわ』


 ――ズゥゥゥゥン……ッ!!


 シフティの警告と同時に、広大なドーム空間全体が、腹の底を揺らすような低い震動に包まれた。

 空間の四方、漆黒のクリスタルの床に、禍々しい紫色の『魔方陣』が無数に浮かび上がる。


 その光の中から、ブクブクと黒い泥のように湧き出してきたのは、過去の世界でカズたちが相対したあの装束――紫色のルーン文字が発光する漆黒のローブを纏った、魔術教団の狂信者たちだった。


「……チッ。やっぱり、あの強襲部隊だけじゃ終わらないか」


 カズが、アルファ・レオンの撃鉄を起こす。

 現れた教団兵の数は、過去の世界の比ではなかった。数十、数百……マザーサーバーの空間を埋め尽くすほどの異常な大軍勢だ。


 オブシディアンという巨大企業を裏で操り、東京の地下にこれほどのクローン施設を築き上げた真の黒幕。その教団の規模が、これほどまでに巨大だとは。


 群勢が海のように割れ、その奥から、一際豪華で禍々しい法衣を纏った男が進み出てきた。

 顔の上半分を、六つの赤い単眼が光る機械の仮面で覆い隠した、教団の『大司教』だ。


『――忌まわしき特異点、一ノ瀬 和。そしてイアンの娘よ』


 大司教の声は、何人もの声が混ざり合ったような不気味な合成音声だった。


『過去の因果を捻じ曲げ、我らが至高の生贄サクラを奪い去った罪は重い。……だが、コアが失われようとも、このマザーサーバーが我ら教団とオブシディアンの叡智の結晶であることに変わりはない』


「御託はいい。お前らが裏で糸を引いて、俺の家族を……東京を食い物にしていたんだな」


 カズの瞳に、冷酷な怒りの炎が宿る。


『いかにも。クローンによる人類の置換。それは我ら教団が神の国を顕現させるための、聖なる地均しに過ぎない。……貴様らのようなバグは、ここで完全に消去する』


 大司教が、両腕を高く天へと掲げた。

 瞬間、周囲を取り囲んでいた数百人の教団兵たちが、自らの喉元に短剣を突き立て、狂ったように自害を始めたのだ。


「なっ……自決した!?」


 カズが驚愕する。

「違います先輩、見てください! 倒れた彼らの身体が……溶けています!」


 エリスが悲鳴のように叫んだ。

 自害した教団兵たちの肉体が、紫色の泥となって床に溶け出し、中央に鎮座する無傷の『メカ・フローラ』の根元へとすさまじい勢いで集束していく。


 血肉と魔術、そしてオブシディアンの機械技術。それらが悍ましい錬金術によって融合を開始したのだ。


『――現出せよ。マザーサーバーの新たな番犬。魔術と科学の融合魔獣アマルガムよ!!』


 ドゴォォォォォォンッ!!!!!


 メカ・フローラの鋼鉄の花弁が内側から弾け飛び、その中から、巨大な絶望が産声を上げた。


 全高十メートルを超える、歪な巨獣。

 何百人ものクローン兵の肉が溶け合ったようなドス黒い生体筋肉と、マザーサーバーの冷却パイプや鋼鉄の装甲がグロテスクに絡み合ったキメラ。


 顔にあたる部分には、紫色の炎を噴き出す巨大な魔方陣が浮かび上がり、背中からは重力魔術を帯びた機械の翼が生え揃っている。


「……なんだよ、あのバケモノは……」


 エリミネーターすら遥に凌駕するほどの、圧倒的な魔力量とプレッシャー。


 呼吸をするだけで、空間が重圧で歪むのが分かる。


『サクラの代わりだ。貴様らの絶望と血肉を以て、このマザーサーバーを再起動させてやる』


「……させるかよ」


 カズは、圧倒的な恐怖をアルファの光で強引にねじ伏せ、黄金の銃を真正面に構えた。


東京ここは、お前らみたいな狂った連中の遊び場じゃない。俺たちが、絶対に奪還する!」


「先輩の行く道は、私がすべて切り拓きます!」


 エリスが、光の聖剣を抜き放ち、黄金と紫の雷光をスパークさせながらカズの横に並び立った。


 そして。


「カズ、エリスちゃん。……ワタシも、戦うわ」


 背後から、凛とした声が響いた。


 振り返ると、サクラが床に落ちていた教団兵の紫色の魔杖を拾い上げ、強い瞳でカズたちを見つめていた。


「姉さん……駄目だ、危ない!」


「カズ。ワタシはもう、守られるだけのお姉ちゃんじゃないから。……アナタたちがミオを護ってくれたように、ワタシも、ワタシの家族を護る!」


 サクラの決意に満ちた顔に、カズは一瞬目を見張り……やがて、フッと力強い笑みをこぼした。


「……あぁ。でもあまり無理はしないでくれ、姉さん!」


 元の世界線への帰還。

 だがそれは、終わりではなく、東京奪還に向けた真の決戦の始まりだった。


 魔術教団が放つ最悪の融合魔獣を前に、カズ、エリス、そしてサクラの三人は、絶望の迷宮を打ち破るべく、同時に地を蹴った。


第三章 第40話へとつづく

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

皆様、いかがだったでしょうか?

ついに元の世界線へと帰還したカズたち。

「同じ世界に同一の魂は存在できない」というルールの元、ミオの安否が無事に確認されてホッとしましたね。

ですが、歴史が変わったことでマザーサーバーの防衛機構もアップデートされてしまいました。教団が放つ新たな強敵、魔術と科学の融合魔獣アマルガム

そして、ただ守られるだけじゃなく共に武器を取るサクラ姉さんの決意!

▼ 次回予告:第40話

強大な融合魔獣を前に、カズ、エリス、サクラの連携バトルが炸裂!?

オブシディアンの地下迷宮を完全に奪還するため、カズたちの最強の一撃がマザーサーバーの心臓部を貫きます。

第三章、いよいよ怒涛のクライマックスです!!

「面白かった」「つづきが気になる」と少しでも思ってくださいましたら、ぜひページ下部の**【★】での評価や【ブックマーク】**での応援をよろしくお願いいたします!

皆様からの熱い応援が、次回以降の執筆への最大のモチベーションになります!!

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