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第三章:オブシディアン地下迷宮マザーサーバー奪還編 第33話:砕け散る絶対防御と、真なる地獄の幕開け

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

▼ くろねこパパのX(Twitter)はこちら!

https://x.com/k7nature1

▼ 前話(第32話)のあらすじ

マザーサーバー最深部で待ち受けていたのは、変わり果てた姿の姉・サクラでした。カズの必死の説得も虚しく、サクラは絶望の防衛システム『メカ・フローラ』を起動させます。絶対防御のバリアと8本の触手を前に、絶望的な死闘が幕を開けました。

――そして今回の第33話。

タイトルは『砕け散る絶対防御と、真なる地獄の幕開け』。

圧倒的なプラズマの弾幕を前に、エリスの【光の聖剣】が神速で唸りを上げます!

エリスが掴んだ勝利への鍵。しかし、鉄壁のバリアが砕け散った後に待っていたのは、希望ではなく「更なる絶望」でした。

一ノ瀬家の絆を引き裂く、史上最悪のバトルの行方ははたして!?


「――踊りなさい!」


 サクラの冷徹な号令と共に、空間のすべてが殺意に塗りつぶされた。


 ドーム中央に鎮座する『鋼鉄の魔花メカ・フローラ』。その根元から生えた8本の機械触手が、重力を無視した速度で一斉に躍動する。


 シュンッ、という空気を切り裂く音。


 次の瞬間、カズとエリスが立っていた場所には、目にも止まらぬ速さでプラズマの閃光が突き刺さっていた。


「くっ……!」


 カズは【アルファ】の魔力を脚部に集中させ、辛うじてその直撃を回避する。漆黒の床がプラズマの熱で一瞬にして蒸発し、凄まじい衝撃波が全身を叩いた。


 だが、攻撃は一発では終わらない。

 8本の触手は、まるで意思を持つ巨大な八岐大蛇のように、独立した軌道を描きながらカズたちを追い詰める。

上空から降り注ぐプラズマの雨、左右から薙ぎ払う鋼鉄の鞭。


「先輩、私の背後に!!」


 黄金の雷光を纏ったエリスが、カズの前に滑り込む。

 彼女は【光の聖剣】を風車のごとく旋回させ、迫りくるプラズマ弾を次々と弾き飛ばしていった。


 ギャンッ! ギュイィィン!!


 聖剣の光とプラズマの紫光が衝突するたび、網膜を焼くほどの眩い火花が散る。エリスの動きはもはや人の域を超えていた。


メイド服のスカートをなびかせ、黄金の残像だけを残してフロアを縦横無尽に駆け抜ける。


 カズはエリスと共に移動しながら、必死にサクラの様子を伺っていた。


 ドーム状の絶対防御バリアの向こう側。サクラは純白の和弓を構えたまま、微動だにせず戦況を見下ろしている。


(どうすればいい……どこに突破口があるのか!?)


 カズの視線は、サクラの首元や手首、着物の隙間を舐めるように動いた。ミオの時と同じだ。

どこかに、彼女を操っている「物理的なデバイス」があるはずだ。それさえ撃ち抜けば、この悪夢は終わる!


 だが――ない。


 サクラの白い肌には、悍ましい機械の類いは一切付着していなかった。


「……嘘だろ、何もないのか!? どうやって姉さんを操っているんだ!」


「うふふ、無駄よカズ。私はミオほど脆くはないわ」


 バリアの向こうで、サクラが慈悲のない笑みを浮かべる。

 その時だ。


 エリスの鋭い感性が、ついに敵の『綻び』を捉えた。

 8本の触手が、エリスの神速に苛立ったかのように一箇所へ集中攻撃を仕掛けた瞬間。

エリスは敢えて回避せず、聖剣を力任せに振るい、一本の触手と真っ向から激突させた。


 ガギィィィィィン!!!!!


 凄まじい反動にエリスの腕が痺れる。だが、彼女の瞳は冷静だった。


 金属同士がぶつかり合う鈍い音の中に、一瞬だけ、カチリ……という精密機械特有の『関節音』が混ざった。


「……見つけました!」


 エリスは地を蹴り、垂直に跳躍した。

 迫りくる3本の触手を空中で紙一重に回避し、その一本の『関節部分』――装甲が重なり合う唯一の軟い箇所を目掛けて、聖剣を振り下ろす。


 ズバァァァァァァァンッ!!!!!


 鮮やかな黄金の軌跡が空間を両断した。

 次の瞬間、重量数トンはあるはずの巨大な機械触手が、断面から火花を噴き上げながら、物凄い勢いで床に滑り落ちた。


「なっ……!?」


 サクラの眉が、初めてピクリと動いた。


「先輩! 触手の継ぎ目です! そこだけは防御が薄い!!」


「分かった!!」


 カズは迷わずアルファ・レオンを構えた。エリスが道を切り拓いたのなら、それに続くのが俺の役目だ。


「アルファ……一点集中!!」


 カズの放つ黄金の魔弾が、正確に二本目の触手の関節を撃ち抜く。


 続いてエリスが、三本目と目にも止まらぬ連撃で触手を無力化していく。


 ザクッ、ドォォォォォン……!!


 鉄の雨が降る中、カズとエリスの波状攻撃がメカ・フローラを確実に解体していく。


 だが。

 残り5本となったその時、空間に異変が起きた。


 ビ、ビビッ……ジジィィッ……!!


 サクラを覆っていた絶対防御のバリアから、ノイズのような乱れが発生し始めたのだ。

 それと同時に、カズは見てしまった。

 バリアの向こうに立つサクラの顔色が、急速に土気色に変わっていくのを。


「あ……が、は……っ」


 サクラが、苦しそうに胸元を抑えた。


 彼女の指先が震え、構えていた和弓がガタガタと音を立てる。


「先輩、見てください! 触手を少し減らせば、勝機があるかもしれません。……バリアが弱まっています!」


 エリスは希望を見出し、さらに速度を上げる。彼女はザクザクと音を立ててフロアを走り、触手のヘイトを一身に引き付けながら、次の一撃を叩き込む機会を伺っていた。


 だが、カズの心臓は別の理由で激しく波打っていた。


(違う……。バリアが弱まっているのは、俺たちが攻撃したからじゃない。……これは、ドレイン(吸収)だ!)


 カズは気づいてしまった。

 ミオは「デバイス」で操られていた。だが、サクラにはデバイスがない。


 なぜなら、サクラ自身がこの巨大な殺人兵器の『心臓』として組み込まれているからだ。


 メカ・フローラは、自身の触手が欠損し、出力が落ちるたびに、主であるサクラから生命エネルギーを強制的に絞り取り、補填している。


 触手を壊せば壊すほど。


 サクラを護るはずのバリアを維持すれば維持するほど。

 この狂った機械は、サクラの命を削り、燃料に変えていく。


「やめろ……。やめるんだ、エリス!!」


 カズの叫びは、激しい爆音にかき消された。

 エリスの放った聖剣の閃光が、ついに5本目の触手を根元から断ち切った。


「ぐ、ああああああああああッ!!!」


 サクラが絶叫し、その場に崩れ落ちた。


 彼女の美しく結い上げた黒髪がバサリと解けた。


「おのれ…よくもこのワタシをここまで!」


 魔力も、生命力も、その魂すらも、メカ・フローラにドレインされ続けたやがて桜の魔力が枯渇し――ついに絶対防御のバリアが、ガラスのように砕け散った。


 

 もはや動く触手は二本となりその二本の触手も虫の息に見えた。

本体の機械の花は活動を停止し、沈黙が辺りを被っていく。


 勝利した。誰もがそう思った、その時。

 カズは、砕け散ったバリアの破片の向こう側に、立っていた『何か』を見て、言葉を失った。


「……あ、あはは。……あははははははは!!!」


 崩れ落ちたはずのサクラが、ゆっくりと立ち上がった。


「それで、勝ったつもりで居たのかカズ!」


 だが、その声はもはや姉のものではなかった。


 彼女の口から漏れ出たのは、何万人もの悲鳴を合成したような、悍ましい悪魔そのものの声


 サクラの背中から、鋼鉄の骨組みが皮膚を突き破って飛び出し、彼女の身体を強引に吊り上げる。


『生命エネルギー枯渇。……最終シークエンス「肉体放棄」を開始します』


「な……んだと……?」


 カズの目の前で、サクラの肉体が持ち上あげられメカ・フローラの核へと吸い込まれていく。


 そして、機械の花の蕾がゆっくりと開いた中心部へとサクラ取り込まれていく。


『――ようこそ、カズ。十九回目の、本当の地獄へ』


第三章 第34話へとつづく


最後までお読みいただき、ありがとうございます!作者のくろねこパパです。

皆様、いかがだったでしょうか。

エリスの超高速バトルに興奮した直後、待っていたのは背筋の凍るような絶望でした。

触手を壊し、バリアを砕くことに成功したものの、サクラ姉さんは悪魔のような笑みを浮かべ、メカ・フローラのコアへと取り込まれてしまいました……。

▼ 次回予告:第34話

マザーサーバーの核と完全に融合したサクラが、ついにその手に握る『和弓』の真の力を解放します。

天から降り注ぐ、無数のプラズマの矢の雨。逃げ場のない死地の中で、カズは最愛の姉を救い出すことができるのか!?

涙なしでは読めない、第三章の最高潮クライマックスが迫ります!


※「面白かった」「つまらなかった」「つづきが気になる」と思っていただけましたら、ぜひページ下部の**【★】での評価や【ブックマーク】**での応援をお願いいたします!

また忖度無し、正直な気持ちをお聞かせください。

今後の執筆の役立てとなります、よろしくお願いいたします。

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