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第三章:オブシディアン地下迷宮(マザーサーバー)奪還編 第32話:彼岸花の咲く絶望と、鋼鉄の魔花(メカ・フローラ)

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

▼ くろねこパパのX(Twitter)はこちら!

https://x.com/k7nature1

▼ 前話(第31話)のあらすじ

極限の状況下、カズの放った『神技の狙撃』が見事にミオの洗脳デバイスのみを撃ち抜きました。

ミオの奪還には成功したものの、気絶した彼女を護るためにアリスとアダムがその場に残り、チームは分断されてしまいます。

すべての元凶を断ち切るため、カズとエリスは二人だけで、マザーサーバーの最深部へと足を踏み入れました。

――そして今回の第32話。

重厚な防爆扉の向こう側、美しくも異様な空間で二人を待っていたのは……カズが誰よりも愛し、探し求めていた最愛の姉『一ノ瀬 サクラ』でした。

しかし、再会の喜びは一瞬にして凍りつきます。

ダークファンタジーの真骨頂。一切の容赦がない『絶望のシステム』が、ついにカズたちに牙を剥きます。

果たしてカズとエリスはどう立ち向かうのか?


 鼓膜を圧迫するような重低音が、マザーサーバーの最深部を震わせていた。


 アリスとアダムに気絶したミオを託し、カズとエリスが辿り着いたのは、オブシディアンの地下迷宮を隔てる最後の関門――分厚い鋼鉄で造られた巨大な防爆扉の前だった。


 カズが端末を操作し、認証を突破すると、プシュゥゥゥッ……!という圧縮空気の抜ける鋭い音と共に、数十センチの厚みを持つ扉がゆっくりと左右に開け放たれる。


 その隙間から漏れ出してきたのは、凍てつくような冷気と、肌を刺すような高濃度の魔力マナの粒子だった。


「……行くぞ」


 カズはアルファ・レオンを強く握り直し、一歩、中へと足を踏み入れた。


 その先に広がっていたのは、これまでの無機質な通路やサーバー群のフロアとは全く次元の異なる、異様な大空間だった。


 まるで巨大なドーム球場を丸ごと地下に埋め込んだかのような広大なエリアが広がっている。


 床は一面、鏡のように磨き上げられた漆黒のクリスタルで覆われ、カズとエリスの姿を不気味なほど鮮明に映し出している。遥か頭上の天井からは、星空を模したような無数の青白い光が降り注ぎ、この場所が地下数十メートルであることを忘れさせるほどの幻想的な光景を作り出していた。


 だが、カズの視線はその幻想的な空間の『中央』に釘付けになった。

 広間の中心。そこには、マザーサーバーの『真の心臓部』と呼ぶにふさわしい、悍ましいオブジェが鎮座していた。


 それは、巨大な「蓮の花」を金属とケーブルでグロテスクに再構築したような、機械の植物。まるで生き物のように脈打ち、花脈にあたるネオンラインには、ドス黒い紫色のエネルギーが絶え間なく循環している。


「……これが、東京を支配しているマザーサーバーのメインコア……」


 エリスが、そのあまりの巨大さと禍々しさに息を呑む。

 カズが油断なく周囲を見渡そうとした、その時だった。


「――待っていたわ、カズ」


 静けさを切り裂き、暗闇の奥、巨大な機械花の頂上から、透き通るような、それでいて氷のように冷たい声が響き渡った。


「ここまでこれたと言うことは、あの子を倒したってことであってるかしら?」


 その声を聞いた瞬間。

 カズの全身の血の気が引き、心臓が鷲掴みにされたように激しく痛んだ。


 聞き間違えるはずがない。何千回、何万回とカズの名前を呼んでくれた声。カズが世界で一番愛し、慕っていた、最愛の姉の響きだった。


「……姉、さん……?」


 震える声が、カズの唇からこぼれ落ちる。

 フワリ、と。暗闇の中から、一人の女性が重力を無視したように静かに舞い降りた。


 漆黒の生地に、血のように赤い『彼岸花』が咲き乱れる、艶やかで残酷な着物。

 長く美しい黒髪を結い上げ、その手には、彼女の背丈ほどもある『純白の和弓』が、まるで天使の弓のように静かに握りしめられている。


 一ノ瀬 サクラ


 カズの記憶にある通り、息を呑むほどに美しい。いや、人間離れしたその美貌は、オブシディアンの力によってさらに研ぎ澄まされているように見えた。


 だが――その瞳だけが、決定的に違った。


 かつてカズとミオを温かく見守り、どんな時でも味方でいてくれた、暖かな優しい光は一切ない。


 そこにあるのは、オブシディアンの冷酷なプログラムに完全に支配され、眼下にいるカズたちを『排除すべき障害物』としか認識していない、底なしの虚無の瞳だった。


「姉さん……!」


 カズは、黄金の銃の銃口を床に向け、叫んだ。

 アルファの力を込めることすら躊躇われた。相手は、ミオの時のようにただ武器を振り回すだけの子供ではない。


自分を育ててくれた、絶対的な『姉』なのだ。


「姉さん! 俺は、姉さんと戦う為にここに来たんじゃない!! 目を覚ましてくれ!!」


 戦意がないことを示すため、両手を広げて必死に訴えかけるカズ。


 しかし、サクラは漆黒のクリスタルに足音一つ立てずに降り立つと、純白の和弓をゆったりと構え直し、艶やかな唇に冷酷な笑みを浮かべた。


「変わらないね、カズ。その、優しさだけでどうにかしようとするところも……諦めの悪さも、何もかも」


 ピシャリと、カズの想いを鼻で笑うような、鋭く冷たい言葉が叩きつけられる。


 サクラの影が堕ちたような瞳が、氷の刃のようにカズを射抜いた。


「いいこと? カズ。優しさだけで解決できる程、世間は甘くないわ。それを……今ここで、私が教えてあげる」


「違うッ!!」


 カズは、喉が裂けんばかりの声で反論した。目尻からは、すでに堪えきれない涙が滲んでいる。


「俺の知っている姉さんは、そんなことは絶対に言わない!! いつだって優しくて、俺やミオの事を何よりもいちばんに考えてくれてた……自分のことなんて後回しにして、俺たちを守ってくれた人……それが、一ノ瀬 桜だ!! 俺の、たった一人のお姉ちゃんだろ!!」


 血を吐くような、弟の悲痛な叫び。

 広大なドーム空間に、カズの声が木霊する。

 届いてくれ。ミオのデバイスを破壊された一瞬に「お兄ちゃん」と呼んでくれたように、サクラの心の奥底にも、あの優しかった姉が絶対に眠っているはずだ。

カズはそう信じていた。


 だが。


 サクラの表情には、一ミリの揺らぎも生じなかった。

 悲哀も、同情も、葛藤すらもない。ただ、出来の悪い機械のバグを処理するかのような、絶対的な無関心。


カズの言葉は、洗脳という名の分厚い氷の壁に弾かれ、彼女の心には塵ほども届いていなかった。


「……お喋りは終わりね。さぁ、始めましょう」


 サクラが、死刑宣告のように冷たく言い放った。

 彼女がスッと右手を掲げ、白魚のような指先を鳴らした瞬間。


 ――ゴゴゴゴゴゴォォォォォ……ッ!!!


 マザーサーバーの空間全体が、激しい直下型地震のように揺れ始めた。

 カズとエリスが体勢を崩す中、サクラの背後に鎮座していた巨大な『機械の蓮華メカ・フローラ』が、まるで主の殺意に呼応するかのように、悍ましい駆動音を立てて完全に覚醒した。


「な、なんだアレは……!?」


 カズが驚愕に目を見開く。

 紫色のネオンラインが激しく明滅し、巨大な鋼鉄の『花びら』が一枚、また一枚と、サクラを包み込むようにドーム状に展開していく。


 バチバチィッ!!と、重なり合った花びらの隙間から紫色の高密度な魔力エネルギーが溢れ出し、サクラの周囲に半球状の『絶対防御の力場バリア』を形成した。


「先輩! あのバリア……異常です!! ただの魔力障壁じゃない、物理的な装甲と高密度のエネルギーが完全に融合しています!!」


 エリスが【光の聖剣】を構えながら、カズの前に立ち塞がって叫ぶ。


 だが、オブシディアンがサクラを守るために用意した絶望は、それだけではなかった。


『ギギギ……ギュイィィィィンッ!!』


 ドーム状に形成された鋼鉄の花の根元。床の漆黒のクリスタルを砕きながら、太く、長く、禍々しい『8本の機械触手』が、巨大な蛇のようにうねりながら姿を現したのだ。

 幾重にも重なる金属の関節で構成された触手。その一つ一つの先端には、巨大な銃口のような結晶体が備わっており、そこから目が潰れるほど眩い、青白い『プラズマ』の光が収束していく。


「うふふふっ。どう? 私の可愛い『守護者』たちは」


 ドーム状の絶対防御バリアの中心。完全に守られた安全圏(花托)の上に立つサクラが、見下ろすように冷たく微笑む。


「さぁカズ、メイドさん。絶望の底で、どこまで踊れるかしら?」


「……嘘だろ……」


 カズは、圧倒的な戦力差と、その残酷すぎるシステムに息を呑んだ。


 エリスの光の聖剣の斬撃すら弾き返すであろう『ドーム状の絶対防御』。


 そして、周囲から一斉に襲い来る、高出力プラズマビームを搭載した『8本の殺戮の為だけに造られたであろう触手』。


 攻防一体。一切の死角なし。


 こちらからは手出しができない安全圏から、カズたちを一方的に蹂躙し、消し炭にするための処刑装置。


 オブシディアンがカズを抹殺するために用意した、文字通り『鬼畜でカオス』な最悪の防衛システムが、今、完全に牙を剥いたのだ。


『――ターゲット・ロックオン。殲滅シークエンス、開始――』


 機械音声と共に、8本の触手が一斉にカズとエリスに狙いを定める。


「行きますッ!! 先輩は下がって!!」


 エリスが地を蹴り、黄金の雷光となって8本の触手の懐へと飛び込んでいく。


 殺せない最愛の姉と、絶対に破れない鋼鉄の魔花。

 カズたちの、真の絶望の死闘が、ここに始まった。


第三章 第33話へとつづく


最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

皆様、いかがだったでしょうか……。

カズの血を吐くような悲痛な叫びも、冷酷なプログラムに支配されたサクラの心には一切届きませんでした。

そして、オブシディアンが用意した最悪の防衛システム『メカ・フローラ』。

物理も魔力も弾く絶対防御のドームに、高出力プラズマビームを放つ8本の殺戮触手。控えめに言って、鬼畜すぎます(笑)。

▼ 次回予告:第33話

安全圏から一方的に蹂躙してくる巨大な魔花に対し、エリスが【光の聖剣】を手に単騎で突っ込みます!

果たして、エリスの神々しい刃は、この理不尽な絶対防御のバリアを打ち破ることができるのか!? そして、カズはサクラを救う手立てを見つけ出せるのか!?

次話、怒涛のハイスピード・バトルアクションが展開されます!

※ 書いていて思ったのが、勝たせる気無いよねって(笑)

それでも、二人は姉を取り戻す為必死に戦います。少しでも心が揺さぶられましたら、ぜひページ下部の**【★】での評価や【ブックマーク】**での熱い応援をよろしくお願いいたします!

皆様からの応援が、この絶望的なボス戦を書き切るための最強の原動力になります!!

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