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第三章:オブシディアン地下迷宮(マザーサーバー)奪還編 第29話:金色の雷光と、絶望の突破口

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

ついに……ついに、越えられなかった19回目の死のループを突破しました!!

カズの「死に戻りの記憶」を利用した攻略情報からの、エリスの自力覚醒。

闇の双剣オメガが砕け、神々しい【光の聖剣】と金色の雷光を纏うエリスの姿は、書いていて最高にテンションが上がりました! カズの推測通り、見えない敵の目的は「エリスの自立と覚醒」だったのか……謎は深まるばかりです。

▼ 次回予告:第30話

絶望の壁を越え、光の聖剣を覚醒させたエリスと共に、一行はいよいよマザーサーバーのさらなる深部へと進軍します。

しかし、これで終わりではありません。オブシディアンの真の闇はここからです。

次なる階層で彼らを待ち受けるのは、カズの知る「優しかった面影」を完全に捨て去り、巨大な『死神の大鎌』を携えた、あの少女……!?

次回、再びカズの精神を抉る絶望が幕を開けます。

※「光の聖剣カッコいい!」「ループ脱出おめでとう!」「でも最後の不穏な一文が怖い……」と少しでも心が揺さぶられましたら、ぜひページ下部の**【★】での評価や【ブックマーク】**での応援をよろしくお願いいたします!

皆様の応援が、彼らを待ち受ける次なる試練を描き切るための最大の原動力になります!!


「……ッ!! はぁ、はぁっ、はぁぁぁッ!!」


 カズは、肺が張り裂けんばかりに酸素を吸い込み、跳ね起きた。


 全身から噴き出す脂汗。左胸を、狂ったように両手で掻き毟る。


 貫かれていない。心臓は、けたたましい警鐘のようにドクドクと脈打っている。


「どうした、カズ? 急に胸なんか押さえて。……空気が綺麗すぎて吐き気がするか?」


 すぐ横から、アダムの呆れたような声が聞こえた。


 三度目だ。

 カズは、絶望に呑まれそうになる意識を、奥歯を噛み砕くほどの力で現実に引き戻した。パニックになっている暇はない。数秒後には、あの悪夢が降ってくる。


「……マスター・カズ。警戒ヲ。前方、頭上ヨリ――」


「全員、その場から動くな!! 防衛陣形を取れ!!」


 ミオドロイドの警告を遮り、カズは鼓膜を劈くような大声で叫んだ。


 アダムがビクッと肩を震わせ、アリスが瞬時に三日月宗近の鯉口を切る。百戦錬磨の彼らは、カズの尋常ではない「死の気迫」を感じ取り、一瞬で臨戦態勢に入った。


「カズ、どうした!? 何が来る!」


「エリス!! アダムとアリスから離れるな!」


 カズの叫びと同時だった。


 ドゴォォォォォォンッ!!!


 数メートル前方の天井が爆発音と共に崩落し、粉塵の中から重装甲特化型『特務追跡者エリミネーター』が、その巨大な骸骨の顔を現した。


『――不法侵入者ヲ確認。プロトコル【殲滅】ニ――』


「させません……!!」


 エリスがメイド服のスカートを翻し、双剣に手を掛けて前に出ようとした。

 一度目、二度目と全く同じ光景。

 だが、三度目の今回は、カズがその細い腕を背後から力強く掴んで引き留めた。


「何するんですか先輩! 離してください、私が行かないと……!」


「エリス、今から言う事をよく聞いてくれ! 俺は今、死に戻りをしてこれが『三回目』だ!!」


「え……っ?」


 エリスの動きがピタリと止まり、アダムとアリスが息を呑む。

 カズは、混乱するエリスの両肩を掴み、自身の額をエリスの額にガツンと強く打ち付けた。


「先輩……!?」


「俺の頭の中を見ろ! あいつの行動パターンを全部、お前の脳に流し込むからな!!」


 カズの内に眠る黄金の魔力【アルファ】が発動し、エリスとの間に【思念伝達テレパシー】が繋がった。

 瞬間、エリスの脳内に、カズが体験した『二回の地獄』の映像が濁流のように流れ込む。


 ――ガトリング砲の死角。


 ――プラズマ・キャノンを撃ち放つ直前の、コンマ数秒の予備動作。


 ――そして、エリスを助けようとしたカズの心臓が、見えない『漆黒の刃』に背後から貫かれ、血の海に沈む凄惨な光景。


「あ……あぁぁ……ッ! せ、先輩が、私のせいで……二回も……!?」


 情報の奔流と残酷な真実に、エリスの青い瞳からポロポロと涙が溢れ出した。


「エリス、泣くな。聞いてくれ!」


 カズは、恐怖で震えるエリスの顔を真っ直ぐに見据えた。


「俺がお前を【アルファ】の力で助けようとすると、俺は必ずあの見えない敵に殺される。……だからエリス。俺は今回、お前を助けたいが助けに行けない。背後の見えない敵を警戒しなきゃならない」


「そんな……一体誰が?」


お前一人で、その『狂乱』に飲まれずに、あいつを倒してくれ。今見せた俺が見てきた記憶を使えば、最小限の力で急所だけを突けるはずだ。……エリスなら、絶対にできる」


 それは、カズにとって身を切られるよりも辛い、苦渋の決断だった。

 愛する少女を、狂気と死の危険が渦巻く戦場へ、たった一人で突き放さなければならないのだから。

 だが、エリスの涙は、カズのその言葉を聞いてピタリと止まった。

 彼女は、乱れた銀髪をかき上げ、双剣『オメガ』をゆっくりと引き抜いた。


「……分かりました、先輩、私がやります!」


 エリスの声には、もう迷いはなかった。


「先輩は、そこで見ていてください。……私が、先輩を護ります!」


 ギュオォォォォォンッ!!

 エリミネーターの右腕のガトリング砲が、耳をつんざく回転音と共に火を噴いた。

 だが、毎秒数十発の弾雨が空間を削り取るよりも早く、エリスの姿はそこから消えていた。


「遅いです」


 「そんな動き、この動きには着いて来れないはずです!」


 エリスは、カズから受け取った『未来視』の情報を元に、弾幕が展開されるコンマ数秒前に「安全地帯(死角)」へと滑り込んでいたのだ。

 メイド服のフリルが宙を舞い、エリスは機械の巨体の懐へと潜り込む。


『――脅威度【S】。排除手順ヲ更新』


 エリミネーターが左腕のプラズマ・キャノンの銃口を向けようとした。過去二回、エリスが吹き飛ばされた致命の一撃。


「知っています……! そこが、弾くタイミングだということを!!」


 エリスは回避せず、オメガの双剣を交差させて真っ向からプラズマの銃口に叩き込んだ。


 ドゴォォォォンッ!!


 暴発。砲身の内部で炸裂した超高熱のプラズマが、エリミネーターの左腕を根元から吹き飛ばす。


「いける……!」

 カズが後方で拳を握りしめた、その時だった。


幻聴:(……殺せ!……すべて終わらせろ!……)


「くっ……ッ、あぁぁぁっ!!」


 エリスの動きが、空中で不自然に硬直した。

 強大な敵との交戦ストレスがトリガーとなり、彼女の器に封じられていた『狂乱』の呪いが、一気にその精神を蝕み始めたのだ。


 エリスの右目が、禍々しい真紅に染まり上がる。白磁の太腿に刻まれた術式が、ドクドクとドス黒い瘴気を放ち始めた。


「エリス!!」

 カズが思わず叫び、一歩前に出そうになる。


(駄目だ……俺が助けに行けば、またあのループに戻る……!)


 カズは、奥歯から血が滲むほど噛み締め、自らの足をその場に縫い付けた。


「ガァァァァッ!!」

 理性を失いかけたエリスが、獣のような咆哮を上げてエリミネーターの装甲に斬りかかる。だが、動きは単調になり、残った右腕のガトリングによる殴打をモロに受けて吹き飛ばされた。

 床を転がり、血を吐くエリス。


 赤い瞳の奥で、破壊衝動と殺意が暴れ狂う。


(……殺してやる……先輩も……全部……!)


 呪いが完全にエリスの心を塗り潰そうとした、その極限の淵で。

 彼女の脳裏に、死に戻りの事実を打ち明けてくれた時の、カズの必死な顔が蘇った。


『お前一人で、狂乱に飲まれずに倒してくれ。……エリスなら、絶対にできる』


 そうだ。

 「先輩は、私を信じてくれた。

私を護るために命を落とし続けてくれた先輩が、初めて、自分の命を私に預けてくれたんです。

 こんなドス黒い殺意なんかに 私は負けません。」


「……私は……私はもう……」


 血まみれのエリスが、ゆっくりと立ち上がる。


「私はもう……先輩を殺す『器』じゃない!! 私は、先輩のメイドだぁぁぁぁぁッ!!」


エリスの魂からの絶叫が、地下迷宮の通路を揺るがした。

 その瞬間、奇跡が起きた。


 エリスの全身から噴き出していたドス黒い闇の瘴気が、ガラスが砕け散るような甲高い音と共に弾け飛んだのだ。


 真紅に染まっていた右目が、深い、透き通るような海のサファイアブルーへと戻る。

 そして、闇が晴れた彼女の身体から、神々しいまでの**『金色の雷光』**が迸った。


それだけではない。エリスの手に握られていた『オメガ』の闇の双剣が、彼女の強い意志と共鳴するように眩い輝きを放ち始める。


 ピキッ、とドス黒い闇の刀身が砕け散り、その内側から顕現したのは――神々しい金色の光と雷を纏った、一振りの**『光の聖剣』**だった。

 

『おぉー!! ようやく我の真の力で目覚めよったか!!』


 カズの胸元から、黄金の精霊シフティが勢いよく飛び出し、目を輝かせて叫んだ。


「シフティ!? お前の力……いや、違う!」


 カズは気づいた。カズが【アルファ】の力で浄化したのではない。

 エリス自身が、その強靭な愛と意志の力で『狂乱』を完全にねじ伏せ、シフティの光(黄金)の属性すらも自力で引き出し、己の力へと昇華させたのだ。


 金色の雷光を纏ったエリスは、さながら舞い降りた戦乙女ヴァルキリーのようだった。


 「……お掃除の、時間です」


 パチッ……と、空気が()ぜる音だけを残し、エリスの姿が消失する。


『――目標ロスト。センサー応答、無シ――』

 エリミネーターのAIが混乱をきたした瞬間。


 ズバァァァァァァァァァンッ!!!!!


 空間に、眩い黄金の十字の軌跡が刻まれた。

 エリスの振り抜いた光の聖剣が、エリミネーターの巨大な胴体を、中核である『錆びた心臓』ごと、寸分の狂いもなく四分割に両断していた。


『――機……能……停……止……』


 数秒後、重装甲の巨体が轟音と共に崩れ落ち、大爆発を起こして完全に消滅した。

 

     *


 静寂が戻った。

 金色の雷光がゆっくりと空気中に溶け、エリスはふらりとその場に膝をついた。


「エリス!」


 カズが駆け寄ろうとして――ハッと足を止め、背後を振り返る。


 全身の神経を研ぎ澄まし、アルファ・レオンを構えて、虚空を見据える。


 一秒、二秒、三秒、四秒、五秒……


 ……来ない。

 俺の心臓を貫いた、あの『漆黒の刃』は、現れない。


「先輩……」


 エリスが、煤だらけの顔で微笑み、カズに向かって両手を広げた。


 カズはアルファ・レオンをホルスターに叩き込むと、全速力で駆け寄り、エリスの小さな身体を力強く抱きしめた。


「……よくやった。本当によくやったな、エリス!! 最高だったぞ!!」


「えへへ……私、やりました。先輩の力、借りずに……」


 エリスがカズの胸の中で、安心したように意識を手放す。

 カズは彼女の銀髪を撫でながら、確かな「生」の鼓動を噛み締めていた。


 そして、鋭い視線を誰もいない通路の奥へと向ける。


(……そうか。分かったぞ)

 カズの脳裏で、これまでのすべての死のピースが繋がり、一つの答えを導き出していた。


(あの理不尽な死のループは、俺を殺すための単なる罠じゃなかったんだ。……俺が【アルファ】の力でエリスを救い続けている限り、エリスは本当の意味で『俺を護り抜く強さ』を得られない)

 カズは、自分の胸を貫いた『見えない敵』の目的を確信した。


(俺が甘やかす未来を切り捨てるために……あいつは俺を殺して、やり直しをさせていた。エリス自身が、自分の意志で狂乱をねじ伏せ、自力で覚醒すること。それこそが、この死の運命ループを破る唯一の『正解フラグ』だったんだ……!)


 だとしたら、俺を殺し続けていたあの刃の正体は。


 エリスを極限まで追い詰め、強さを引き出そうとしたあの『見えざる敵』の意志は――。


「……悪趣味な神様だな、まったく」


 カズは誰に言うでもなく小さく悪態をつき、腕の中の少女を愛おしそうに抱き直した。


 越えられなかった十九回目の壁。

 彼らは今度こそ、本当の意味でその絶望を叩き割り、新たな未来へと足を踏み出したのだった。


 ――だが。


 この後、更なる数々の残酷な試練がカズたちを待ち構えているとは、この時の彼らはまだ知る由もなかった……!!


第三章 第30話へとつづく

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。

ついに……ついに、越えられなかった19回目の死のループを突破しました!!

カズの「死に戻りの記憶」を利用した攻略情報からの、エリスの自力覚醒。

闇の双剣オメガが砕け、神々しい【光の聖剣】と金色の雷光を纏うエリスの姿は、書いていて最高にテンションが上がりました! カズの推測通り、見えない敵の目的は「エリスの自立と覚醒」だったのか……謎は深まるばかりです。

▼ 次回予告:第30話

絶望の壁を越え、光の聖剣を覚醒させたエリスと共に、一行はいよいよマザーサーバーのさらなる深部へと進軍します。

しかし、これで終わりではありません。オブシディアンの真の闇はここからです。

次なる階層で彼らを待ち受けるのは、カズの知る「優しかった面影」を完全に捨て去り、巨大な『死神の大鎌』を携えた、あの少女……!?

次回、再びカズの精神を抉る絶望が幕を開けます。

※「光の聖剣カッコいい!」「でも最後の不穏な一文が怖いけどつづき気になる」と少しでも心が揺さぶられましたら、ぜひページ下部の**【★】での評価や【ブックマーク】**での応援をよろしくお願いいたします!

皆様の応援が、彼らを待ち受ける次なる試練を描き切るための最大の原動力になります!!

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