第二章: 偽りのぬくもりと錆びた心臓-第16話:時空の来訪者と、交差する『未来』の記憶
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▼ 前話(第15話)のあらすじ
施設の最下層『極秘エリア』へと足を踏み入れたカズたち。巨大な時空転送装置の傍らにポツンと置かれていた古い作業台から、エリスは10歳の頃にアリスと共に父親へ贈った「誕生日プレゼントのホログラムキューブ」を見つけます。
大好きな父親の笑顔と自分たちの無邪気な姿に、声を殺して涙を流す白銀の姉妹。
しかし、その心温まるメッセージの後に表示されたのは、未知の【新規メッセージ】の通知でした――。
――今回は、その続きとなる第16話。
震える指で(YES)を押したエリスたちを待っていたのは、第一章の『あの悲劇の夜』に直結する、あまりにも衝撃的な真実。そして、最下層の空間を引き裂く異常事態の発生。
怒涛のSF展開と、まさかの「新キャラクター」登場で、物語は誰も予想しなかった方向へ加速します!
(※ここから第16話の本文スタート)
【 新規メッセージが1件あります。 再生しますか? 】
【 (YES) / (NO) 】
最下層の極秘エリア『巨大地下空間』
巨大な時空転送装置の傍らに置かれた古びた作業テーブルで、エリスが震える手で(YES)のホログラムボタンを押した。
ピピッ、と短い電子音が鳴り、ホログラムの映像が切り替わる。
そこに映し出されたのは、無傷だが、ひどく汗をかき、焦燥しきった様子の二人の中年男性だった。
カズの父、一ノ瀬拓也。そして――エリスとアリスの父親、イアン・フィッツジェラルド。
「……エリス、アリス。この映像を見ているということは、拓也が遺したあのアンドロイド(ミオドロイド)が、君たちをここまで導いてくれたのだな」
イアンが、カメラに向かって早口で告げる。その背後で、イデア・ジェネシスの社長であるはずの拓也が、狂ったようにキーボードを叩き、何かのデータを必死に消去しているのが見える。
「真実を伝えよう。拓也は狂った科学者などではない。彼は……イデアを影で操る『ある巨大な闇の組織』に脅迫され、操られていたんだ。ミオたちを冒涜するクローン計画を強要したのも、すべてはその組織の差し金だ」
その言葉に、カズは息を呑んだ。
世界を牛耳る巨大企業イデア・ジェネシス。その社長ですら逆らえない、真の黒幕が存在するというのか。
「もう時間がない。奴ら(裏の組織の暗殺部隊)が今夜、俺たちを消しに来る。……これからそれぞれの屋敷に戻り、子どもたちを守る防衛システムを起動しなければ……ッ」
今夜。それぞれの屋敷に戻る。
――それは、あの「悲劇の夜(1月)」の直前に録画された、最後のメッセージだった。
あの夜、一ノ瀬一家を襲い、隣の屋敷のイアンを殺害したのは、暴走したクローンだけではなく、その『裏の組織』が放った暗殺部隊だったのだ。
「拓也の息子よ。いつかお前が、この悲しいループを断ち切る『最強の器』になると信じている。あの組織の全容、そしてお前と同じ顔を持つ『金髪の男』の正体……その全ての答えは、必ずお前が見つけ出してくれ」
イアンのその言葉を最後に、ホログラムの映像はプツンと途切れた。
『――権限、移譲。プロジェクト【アーク】ノ全テヲ、マスター・カズヘ託シマス』
メッセージが終了した瞬間。
背後に鎮座していた巨大なリング『時空転送装置』がいきなり異常な光を放ち、地響きと共に起動音を鳴らし始めた。
『――空間転送ゲート、強制起動。エネルギー充填、九十パーセント』
ビィィィィン!! ビィィィィン!!
けたたましい警告音が鳴り響き、巨大なリングの内側の空間がぐにゃりと歪む。リングを這うようにバチバチと強力な青白い稲妻が走り、地下の部屋全体を強烈な光で満たした。
「おいおい! 今度は何が起きやがった!?カズ! 嬢ちゃん達、隠れろ!」
咄嗟にアダムが叫び、カズたちはコントロールパネルの死角へと身を潜め、リングの方向を鋭く伺う。
「下がって!! 空間が歪んでいます! 何か良くないものが来るかもしれません!?先輩に近づけないで!」
エリスがオッドアイを赤く光らせ、カズの前に立ち塞がって闇の双剣を構える。
同時に、電磁加速鞘がギュィィィィィンと音をたて、居合のチャージ状態にし居合の構えで待機するアリス。
光の輪の中から、足元から徐々に上へと人体が形成される(3Dプリンターのような)不気味で美しいエフェクトで、二つの人影が現れた。
「マヂで、きもぢぃわるい……空間転送完了。マジでこの移動、胃袋が裏返りそうになるから嫌いなんだけど」
最初に口を開いたのは、オーバーサイズの黒いダボダボのウインドブレーカーに白のショートパンツ姿の少女だった。インナーカラーのオレンジが映える黒髪を気だるげにかき上げ、手には漆黒のSMGが握られている。
「文句言わないの、けっこう楽しいじゃん……へぇー、ここが旧イデア施設の最下層。私たちが使った『向こうの入口』と規格は一緒じゃん」
もう一人は、目を惹くような金髪に、毛先が水色のグラデーションになったツインテールの少女。どこかの高校の制服のようなチェックのスカート姿で、手には厳ついARを構えながら、好奇心旺盛に辺りを見渡している。
「ちょっと!、夏帆。言わなかった? あまり目立つ格好で来ないでって。タダでさえその金髪と水色のグラデは目立つのに、なんでその服装なわけ? ほんとっ人の話し聞いてないんだから……」
黒髪の少女が、心底呆れたように深いため息をつく。
「えぇーっ、いいじゃん別に! だってさぁ、この時代(2100年)のファッションってなんか平面的と言うかぁ、サッパリしすぎと言うかぁ……見てよ、このチェックのスカートにこの上着! なんかさぁ、めっちゃかわいいでしょ? これね、何十年前の学校の制服だったんだよ。超可愛くない⤴︎!?」
夏帆と呼ばれたギャル風の少女は、緊迫した空気など全く意に介さず、くるりとその場で回ってみせた。
「夏帆のそのコスプレの影響で、私までこんな服着せられて……」
「うんうん!でもめっちゃ似合ってるよ明日香! そのインナーカラーのオレンジに、黒がまたイイ感じゃん♪」
明日香は夏帆のその言葉にまたため息をついた「はぁーっ」
コントロールパネルの死角から、カズは信じられないものを見るように、ゆっくりと立ち上がった。(……明日香?)
黒髪の綺麗なストレートの髪。少し不機嫌そうに目を細める、その顔の面影。
小学生の頃、図書室でいつも一緒に本を読んでいた、一つ年下の幼馴染の姿そのものだった。
十三歳の時に彼女が両親の都合で遠くへ引っ越して以来、ずっと会っていなかったはずの。
「……明日香、だよな!?」
カズの震える声に、銃を下げていた明日香がハッと振り返る。
その瞬間、明日香の端正な顔が、一瞬だけ信じられないほど引き攣った。
明日香の心の声:(――えっ! なんで!? ヤバくない?、こんな所に居るなんて聞いてないし!ってか、絶対に見られたよね『転送』!? なんでそもそも『隊長』が、この旧イデアのしかも最下層にいるの!?)
明日香の内心は、パニックに陥っていた。
彼女たち二人は、この2100年から少し先の未来――2102年の世界からやってきた、防衛軍の戦士だ。そして、未来の世界で彼女たちを率いる『防衛軍の隊長』こそが、目の前にいる一ノ瀬和なのだ。
未来では毎日顔を合わせ、厳しい命令を下してくる頼もしい隊長。その彼が、なぜか(過去の姿)でこんな場所にいるの。
「久しぶり……一ノ瀬和だ。覚えてるか? 俺たち、十三歳の時までよく一緒に――」
カズが、懐かしさと驚きが入り混じった顔で、一歩前へと歩み出た。
明日香の心の声:(なんか話しかけて来てるし……そっか。ここで過去に隊長と私が、13歳ぶりに再会したんだっけ? 未来では毎日顔合わせて、普通に話してるからなんか変な感じ……まぁ、とりあえず未来のことは隠してってもう絶対怪しまれてるよね!?、話しするしかないよね )
明日香は瞬時に表情をクールに取り繕い、小さくため息をついた。
「……カズ君。久しぶり。まさか、こんな場所で再会するなんて思ってなかったけど。何でこんな場所に?」
「あ、ああ。お前こそ、全然変わってない――」
カズが幼馴染との感動の再会に顔を綻ばせた、その瞬間だった。
背後に立っていたエリスの纏う黒いオーラをメラメラ燃やし、いや、何か別の『苛立ち』を孕んで、どす黒く膨れ上がった。
「……先輩、誰ですかこの人達は? 感動の再会の最中に、大変不躾な質問で恐縮なのですが」
赤眼のまま、エリスが双剣をチャージさせ、明日香に向かって静かに歩み寄る。メイド服のスカートが、どす黒い殺気で揺らめいていた。
「先輩は『カズ様』です。部外者が気安く、図々しく、このイデアの深淵で先輩の名前を呼ばないでいただけますか? ……消しますよ!!」
「おいおいおい、エリスちゃん! 落ち着けよ、この二人はカズの知り合いなんだろ!?」
アダムが慌てて割って入るが、エリスの殺気は収まらない。
「知り合いかどうかなど、どうでもいいです! 先輩の、この『19回目の箱庭』に、先輩の思い出を共有する部外者など……存在そのものが不快です! ……目障りです……!!それとも……消されたいですか!?」
エリスの言葉は、容赦のない毒舌となって明日香に突き刺さる。その裏には、「お前たちのせいでせっかくの感動の思い出と、そのあとの訳の分からない展開でとさらに湧き上がる嫉妬」という、エリスの理不尽な苛立ちが隠されていた。
「……はぁ? なんなのこのメイド。いちいちムカつくんだけど」
明日香はため息をつきながら、挑発的にSMGの銃口を床に向けたままエリスを睨み返す。
「カズ君を『先輩』って呼ぶメイド? なるほど、先輩、軍を抜け出してこんな可愛いけど性格の悪いメイドと遊んでたんだ?」
「……遊んで? くだらない。私は先輩を守る『最強のメイド』。先輩の思い出の塵芥など、ここで私が全て一掃して差し上げます! ……キモイです!、このニセモノ黒髪が!!」
「ニセモノって誰に言ってんの? やる気?」
激しい火花を散らす、銀髪のメイドと、黒髪の幼馴染。
カズの過去と未来が交差するこのアビスの底で、誰も予想しなかった『ヒロイン戦争』の火蓋が切って落とされたのであった――。
第二章 第17話へとつづく
いつも『19回目の殺意を紅茶に添えて』をお読みいただき、本当にありがとうございます!作者のくろねこパパです。
今回は、二人の父親が遺した衝撃の真実からの、まさかの「幼馴染(武装JK)」登場という、ジェットコースターのような回でした!
カズと幼馴染の感動の再会……になるはずが、黙っていられないのが我らが最強のメイド、エリスです(笑)。オッドアイを赤く光らせての容赦ない毒舌と殺気、そしてそれに一歩も引かないクールな明日香。
過去と未来が交差するアビスの底で、ドローン戦よりも恐ろしい『ヒロイン戦争』が勃発してしまいました。
▼ 次回予告:第17話
一触即発の銀髪メイド vs 黒髪の幼馴染!
バチバチに火花を散らす二人の間に挟まれたカズは、果たしてこの修羅場を収拾できるのか!?
そして、明日香と夏帆という二人の少女は、なぜこの時代(2100年)の、しかも誰も知らないはずのイデアの最下層に「転送」されてきたのか……。
少しずつ見え隠れする『未来』の断片。次回の展開も絶対に見逃せません!
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