↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/20

19 戻ってこい!

「息してません。

死んじゃいました、クレアさん、死んじゃいましたぁ!」


 シスレーが大声でわめいた。


「まさか……、いや、やはりと言うべきか。

多重詠唱は体への負担が大きすぎんだ。

多分、心臓が保たなかった」


 シエスタは沈鬱な表情で言った。

 

「ちょ、ちょっと、なに言ってんの!」


 ミランダが怒鳴り声を上げた。


「だから、クレアはあなたを助けるために命を掛けたんだよ!」


 シエスタも負けずに怒鳴り返した。

 しかし、ミランダは体をよじり身を起こすと、クレアに向かって這いずり始めた。


「もう何もかも遅いんだよ!」


 そんなミランダに向かって、シエスタは諦めの声を浴びせた。

 しかし、ミランダはそんな言葉に耳を貸そうとはしない。


「まだよ! 

まだやれることがあるわ。

シスレー、早く私の縄をほどきなさい。

急いで!」


 シスレーは言われるままにミランダの手の縄を解く。


「起きなさい、クレア。起きなさい!」


 ミランダはクレアの頬を何度か叩き、覚醒を促す。しかし、目を覚ますことはなかった。


「ダメ……、息してない。

心臓も止まっている。

えっとこういう時はどうすんだっけ……」


 ミランダは懸命に昔、受けた救急医療の講習のことを思い出す。


「胸骨の下、指三本ぐらいのところを、両手を重ねて……肘を曲げずに、体重乗せて……、押す、押す、押す」


 ミランダは心臓マッサージを始めた。

 シエスタとシスレーはその動きを奇異な目で見つめるだけだった。


「……28、29、30」


 押しながら30を数えると、今度はクレアの口に自らの口を当て、息を吹き込む。


「……ミランダさん、なにやってるんです?」

「なにをやっているのか分からないけど。なんだろう、クレアを助けようとしてるのは分かる。

異世界の魔法のようなものかもしれない……」


 必死に心臓マッサージと人工呼吸をするミランダを見守りながらシスレーとシエスタは囁きあった。

 そんな2人に構うことなくミランダは必死にクレアの蘇生を続けた。


「ああ、駄目よ、駄目。戻ってきなさい。

貸しっぱなして、逃げるなんて私が許さない。

戻ってきて。

戻ってきて……私に貸しを返させなさい!

戻って来い! この、バカ聖女!!」


 大粒の涙をこぼしながらミランダは叫んだ。

 と、その瞬間。

 クレアの体が突然海老反り、大きく息を吐いた。


「かはっ……ゴボ、ゴボ……」

「ああ、クレア、クレア……」


 ミランダはポロポロ涙を流しながらクレアを抱きしめた。


「……ミランダさん……

私、バカ聖女じゃないです……」


 抱きしめられながら、クレアは弱々しくクレームをつけた。


「全く……、そう言うこと言うからバカ聖女なんていわれるのよ」

「ひどい……、私、こんなに頑張ったのに。

ミランダさん、もうゾンビになんかならないですよね」

「ええ、あなたのお陰よ。

本当にありがとう」



「すごい! クレアさんが生き返った!

ミランダさんも神聖魔法が使えるんですかね?!」

「さぁ……、分からないけど。

あの2人は良いコンビだね。

って、ちょっと、待て。

どこ行こうとしてる!」


 クレアたちの方へ歩いていこうとするシスレーをシエスタが慌てて引き止めた。


「もう少し2人だけにしてやりなさい。

それより私たちにはやる事があるでしょう」

「えっ、やること? 

やることってなんでしたっけ?」

「忘れたのかい? 

私たちがここへ来たのは花火でゾンビたちの気を惹くためだろう。

その準備をするよ」


 シエスタは抱き合うミランダたちを置いて、花火の仕掛けを作る準備を始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。