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13 一筋の希望

 窓の外にはシスレーがいた。


「えっ? 嫌だなぁ、そんなに熱烈に歓迎されると照れちゃいますよ」


 3人の見つめられ、シスレーは少し照れたように顔をにやけさせた。


「いいや! ただ、びっくりしただけだ。ほんのちょっとだけ、だけどね!」


 逆にシエスタは少しムッとした表情で窓際まで歩いて行った。


「君は屋上へ行っていたはずだが、なんでまた窓にぶら下げっているんだ?

なかなかに器用なことだ」

「行ってきましたよ。

そしたら屋上に非常脱出用の縄梯子を見つけたんですよ。

それで戻ってきました」


 シスレーの言葉にシエスタは窓から顔を出し上を見た。

 確かに屋上のところから縄梯子が結ばれて窓際まで垂れ下がり、地面まで降りていた。


「ふむ。火事なんかで屋上へ逃げた人のための備えか。

先生方のご配慮に敬意を表するべきだね」

「ね、これで先輩を連れて逃げれますよ。

僕がおんぶして責任もって下ろしますから!」


 シスレーの真っ直ぐな目で見据えられたシエスタは一瞬、固まった。

 そして、じわりと顔が赤くなる。


「えっ? 先輩。もしかして照れます?

僕におんぶされるとこ想像して恥ずかしくなりました?」


 その言葉に、シエスタは口元を引き結び、やおらシスレーの両頬を左右に引っ張った。


「照れてなんかいない!

そういうことを臆面もなく言う口が恥ずかしいと思わないのか、君は!」

「イタタタタッ!

ちょっとタンマ、タンマ。本当に痛いですって。

落ちちゃう、落ちちゃいまふって」


 縄梯子を放すわけにもいかないシスレーはジタバタとしながらもシエスタのなすがままだった。


「あー、ちょっと。

お取り込み中のところ申し訳ないですけど、シスレー、本当に落ちそうだからその辺で止めてあげて」


 見かねたミランダがついに助け舟を出した。

 シエスタはぷいっと横を向くとそのまま自分の椅子へと戻り、乱暴に座った。

 頬がぷっくりと膨れていた。


「とりあえず中へ。

屋上の結果を教えてちょうだい」


 シスレーを部屋の中へいれるとミランダはそう言った。



「そう……、船着き場のルートは望み薄ということね。」

「はい。正門ルートはグランドにゾンビたちがたくさんいて突破するのは難しそうです」

「なるほどね。まあ、予想はしてたけど……」


 改めて事実を突きつけられるとやはりショックだとミランダは思った。


「なにかやはりゾンビたちの気を惹く方法を考えないと駄目ね」

「ゾンビの気を惹くですか?

でもどうやって?」

「さっき、その方法を考えていたのよ。

で、音に反応するんじゃないかって話をしていたところよ」

「音、ですか……。

じゃあ、遠くに石とか投げながら進むとか?」

「いや、石程度じゃ、すぐに効果がなくなる。グランドいっぱいにいるゾンビたちを一斉に引きつけるようにするにはかなり大きな音を連続で鳴らさないと駄目だと思う。

グラントを走り抜けるのに2分ぐらいはかかるからね」


 機嫌を直したシエスタが会話に加わってきた。


「グランド一杯に届くほど大音量を連続で、2分以上かぁ……。

クレアさんの魔法でなんとかなるんじゃないですか?」

「いえ、無理です。神聖魔法に大きな音を立てるような魔法はありません。

風魔法とかならあるのかもしれませんが。

ごめんなさい。

私、神聖魔法しか使えないのです」

「そうかぁ。残念ですね」


 重苦しい空気が再び部屋を包もうとしたその瞬間、ミランダはパチンと手を鳴らした。


「まあ、無いものねだりをしても仕方ないわ。

あるものでなんとかするしかないでしょう」

「そりゃま、そうなんですけどね。なんとかするっていっても……」


 ミランダの言葉にシスレーは口を尖らせて反論する。そして、ぐうと腹の虫を盛大鳴らした。


「あはは、まあ、その前になにか腹ごしらえしたいですね。

体動かしたらお腹すいちゃいました」


 半ばあきれ顔のミランダにシスレーが照れたように頭を掻いた。

 するとクレアが缶詰をそっとシスレーに手渡した。


「良かったら、これを食べてください。途中で手に入れた缶詰です」

「わあ、すごい。助かります。

えっと、……サワーキャベツ……

こ、こっちは、ホワイトアスパラガスですか……

これはきゅうりの塩漬け?! 

なんか、野菜ばっかりですね。」

「ああ、すみません。私、肉食とかあまりしてはいけないので。

お口にあいませんでしょうか」

「い、いえ、いえ。

食べます。

こちとらパーティのご馳走食べそこなって、腹ペコなんですから。

ウサギになった気持ちで食べますとも」


 シスレーはサワーキャベツをばりばりと食べ始めた。

 その時、突然、ミランダが大声で叫んだ。


「それよ!」

「うわ! びっくりした。

なんですか、ミランダ様。

突然大声上げて」

「それよ、それ!」


 ミランダは興奮したようにシスレーを指さしながら叫び続けた。


「え? それってなに? 

キャベツのことですか?」

「ちがう、ちがう、卒業パーティー!

ゾンビの気を惹く方法よ!!」

「ゾンビの気を惹く方法? まさかキャベツでおびき寄せるのですか?」

「花火よ。花火大会の花火!

卒業パーティーのために用意した花火を使うのよ!」

「「「花火……?」」」


 ミランダ以外の三人は互いの顔を見合わせながらつぶやいた。


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