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救星の英雄たち 壊星の陰陽竜  作者: 一木空
第六章 故郷の大地
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己のものとするために

「キャウ~ン……。ワウ……ワウ~ン……」

 悲しそうな声を上げながら、白い毛に覆われたオオカミのモンスターが逃げていく。


 あのモンスターは、プルイナ村のそばにまで近寄ってきていた個体。

 村に入り込み、人を襲ってしまえば、命を奪うことになっていたかもしれない。


 早め早めに対処をしておけば、人は危険な存在とモンスターたちに認識させることができ、人には近寄らないようにと子孫に教え込むようになっていく。

 そうすれば無暗に命を奪う必要が無くなり、お互いに穏やかに暮らしていけるってわけ。


「ホントに、レイカは強くなったよな~。俺らが束になってかかっても、敵わなさそうだ」

 共にモンスターへの対処をしてくれた、プルイナ村の猟師さんが称賛をしてくれる。


 以前の私とは、比べようにもないほどに強くなったと思っているけれど、手伝ってくれる人、助言をしてくれる人がいたからこそ、モンスターと楽に戦うことができただけ。

 地形やモンスターへの知識が無ければ、私がどれだけ強くたって、苦戦はしちゃうんだよね。


「ふ~ん、そんなもんか。でもまあ、お前が強くなったからこそ、俺の知識も役に立ったってことだもんな! 村の周りの安全も確保できたし、そろそろ見回りを終えて帰るか?」

「ですね! 戦う形で動き回ったとはいえ、体が冷えたわけですから、戻りましょう!」

 白い雪に覆われた道を、プルイナ村がある方向に向けて歩き出す。


 雪の大地だけあり、この辺りに暮らすモンスターは冷気に耐性を持つ個体が多い。

 ルクスル大陸という、より寒気が強烈な土地では、より強い耐性を持つモンスターもいるはず。


 ここでの戦いは経験になるため、腰を据えて取り組みたいとは思っているんだけど。


「さすがに一週間も進展しないとなるとなぁ……。一番頑張っているのはイデイアちゃんだし、おじいちゃんも協力しているから、文句を言うのはお門違いなんだけど……」

 プルイナ村に帰ってきてから、既に一週間が経過している。


 アディア大陸やインヴィス空中大陸の時とは異なり、見慣れた景色のためか飽きが出てくるのがかなり早い。

 そろそろ、他の所に行ってみたいって気持ちが強まってきたなぁ。


 道を進み続けた果てに、プルイナ村の入口が視界に入る。

 猟師の方とはそこで別れ、自宅へと向かう。


 玄関の扉を開いて靴を脱ぎ、畳に上がりながら部屋の中心にある囲炉裏へ。

 冷えた体を温めていると、家の奥へと繋がる扉が開かれた。


「帰ってきたか、レイカ。少しこれを見てくれるか?」

 扉の奥から現れたのは、イデイアちゃんだ。


 彼女が差し出した右手の上には、光り輝く魔法石が置かれている。

 もしかして、うまく魔力を宿らせることができたのかな?


「ああ、その通りだ。見ていてくれ」

 イデイアちゃんは別の石を左手に持つと、目をつぶり、集中を始める。


 彼女が持つ物は、何の変哲もないただの石。

 しばらく黙って見ていると、それは少しずつ変色していき、白く輝きだす。


 変化した石を彼女から受け取ると、それからは確かに魔力を感じることができた。


「すっごーい! ついに魔力を付与できるようになったんだね!」

「まだ通常の魔力だけだがな。しかし、鍛錬次第で各種属性に変換しつつ魔力を付与できるようになるはずだ」

 私の言葉に返事をしたのは、イデイアちゃんの後ろから現れたおじいちゃんだった。


 でも、基本の部分ができるようになったということは、応用もできる可能性が生まれたということになる。

 ルクスル大陸の調査に向けての準備が、大きく進展しそうだね。


「一週間とはいえ、私のために時間を使ってくれたからな……。必ず、この技術は完成させて見せる。ゴウセツさんも、付きっ切りでご教授をしていただき、ありがとうございました」

「気にするな。以前にも言ったと思うが、お前の技術を開花させることで、ワシの知識の拡充にもつながる。事実、新たな魔道具の設計図を思いついたほどだぞ」

 微笑みあう二人は、まさに師弟と言っていい関係だ。


 イデイアちゃんもおじいちゃんも、多くを語らない人物だけど、意外と相性はぴったりだったのかもしれない。


「本音を言えば、もう少しゴウセツさんの元で学ばせてもらいたいが……。そろそろ、旅を再開したいんじゃないか?」

「うえ!? なんでバレちゃってるの!?」

 早く旅を再開したいなどの愚痴は、他者には一言もしゃべっていない。


 いくらイデイアちゃんが鋭いとはいっても、気付かれるはずがないんだけど。


「わずか三年とはいえ、お前とはチームを組み、友人として歩ませてもらったんだぞ? ある程度のことであれば分かるさ」

「そういうもんかぁ……。私じゃ、イデイアちゃんの気持ちもミタマちゃんの気持ちも、分からないんだけど……」

 私がそう返すと、イデイアちゃんは目を丸くしてこちらを見つめる。


 寂しがるとか笑うとかなら分からないでもないけど、なんでそんな顔をするんだろう。


「いや、お前は良く助け船を出してくれるじゃないか。それなのに、分からないと言いだしたのはどうなんだと思ってな……」

「へ? 確かに助言とかはしたことあるけど、そういうのは――言われてみれば確かに、分かっていないとできないことかぁ。えへへ。私、二人のこと分かってあげられているんだ~」

 いつの間にか、二人とより深い関係になれていたことに気付き、口元が緩む。


 この関係をより深めつつ、強固にしていかないとね!

 そういえば、ミタマちゃんはどこに行っているんだろう?


「飛空艇に行くと言っていたぞ。テペスとラタが暇をしていないか、様子を見に行くつもりのようだ」

 テペス君とラタちゃんは、飛空艇で待機をしている。


 テペス君は緑色のオオカミ、ラタちゃんは子どもとはいえドラゴンとなれば、人の言葉を解す聖獣と言えど、人が住む集落に入れば驚かれるのは確実。

 特に、ホワイトドラゴンという知的好奇心にあふれた種族の集落となれば、違う意味で大騒ぎになっちゃうから、待機してもらうことにしたんだ。


「ラタちゃんたちにも、イデイアちゃんの能力が開花したことを教えに行かないとね! 飛空艇に乗っている研究員の方々にも教えれば、より早く強化ができそうだし!」

「う~ん……。前者はともかく、後者をした方が良いのは確かかもしれないが……」

 ここで突然、イデイアちゃんが悩むようなそぶりを見せだす。


 自身の強化に繋がる以上、頼っちゃった方が良いと思うんだけど、彼女には彼女で何か考えがあるのかな?


「いや、考えがあるわけじゃない。ただ単に、自分の力で強化していきたいと思ってしまっただけだ。ゴウセツさんにご指導を賜って開花した以上、真に自分の物になったとは言い難いからな。まあ、単なるわがままでしかないだろうがな」

「そっか……。そういえばお兄ちゃんも、圧縮魔の完成は自分の力で見つけようとしてたっけ。おじいちゃんの持論でもあるもんね、最後のカギは自ら見つけるようにって」

 お兄ちゃんも圧縮魔を作り上げる時に、どうしても分からない部分があり、おじいちゃんに尋ねに向かったことがある。


 だけどおじいちゃんは全てを教えることはせず、最後のカギだけはお兄ちゃん自身に探させるようにしたんだよね。


「自分で作り上げたという自覚と自信が、あらゆる技術において重要だからな。他者の力を借りたという謙遜の心は大事だが、自分の物だと思い切れなければ価値も魅力も、効力も弱まる。イデイア、お前がお前自身の力を信じたいというのであれば、さらに邁進してみると良いだろう」

「……分かりました! 真に自分のものとするため、しばらく独力で研究を続けてみようと思います!」

「本当に悩んじゃったら、私たちにも声をかけてね! 私たちだって、イデイアちゃんの技術が完成するのは、自分のことのように嬉しいことなんだから!」

 イデイアちゃんの笑みに微笑み返しつつ、実家を離れ、ミタマちゃんたちがいる飛空艇へと向かう。


 仲間たちにもイデイアちゃんの能力が開花したことを伝えつつ、旅の再開についての話し合いと準備を始めるのだった。

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