表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
54/60

空を行く少女たち

「飛空艇がいっぱい……! 三年前の時以上じゃない!?」

「並んでいるだけとはいえ、こうも数多く揃っていると壮観だな」

 飛空艇発着場へとやって来た私たちは、そこに並ぶ飛空艇たちを見て目を丸くしていた。


 大人数を収容できそうな巨大なものから始まり、個人が乗れそうなもの。

 色取り取りの装飾で彩られたものなど、見ているだけでも楽しくなりそう。


「各大陸で建設中の飛空艇発着場が完成したら、ここに置かれている飛空艇たちが送られていくんですか?」

「ええ、その予定です。各種族の皆様で各々の飛空艇を製造した方が良いのですが、我々と皆様であまりにも大きな技術の隔たりがありますからね。事故等を起こすことなく、人々や物を運ぶ方が最優先ですので」

「全てをゴブリンとドワーフの方々に委ねるのは良くないが、中途半端な技術で飛空艇を作れば、まず間違いなく落ちるだろうな……。しかも空からともなれば命はない……か」

 強大な交通手段である空路を抑えられるのが、この国の最大の武器。


 海での移動は他の種族も可能とはいえ、空での移動とは比較するまでもなく速度が劣る。

 人の移動に物資の移動も自由自在となれば、他の大陸は太刀打ちできないだろう。


「まあ、各種族の皆様から魔力の提供が無くなれば、飛空艇も飛ばせなくなってしまいますからね。あまり無茶な要求をする気はありませんよ」

「飛空艇が飛ばせなくなっちゃったら、ウチらも空を移動できなくなっちゃうじゃないですか~! シルバルさんたちが有利なことには変わりないと思いますよ!」

 飛空艇が使えなくなった後のことを想像して動揺するミタマちゃんと、ハッハッハと笑いだすシルバルさん。


 飛空艇が使えなくなったとしても、別の方法で有利を取れば良いだけ。

 技術で大きな隔たりがある以上、私たちではどうしようもないんだろうなぁ。


「事実、それを狙って技術の提供をすべきでないという声も上がっていますが……。まあ、いま話すことではありませんね。さあ、飛空艇へとお乗りください。インヴィス空中大陸に向けて出発しましょう」

 シルバルさんに勧められ、飛空艇へと乗り込む。


 いくつも並ぶ鉄の扉を無視して操縦室へと入り、そこに用意されている席へと腰を下ろす。

 揺れから身を守るためのベルトを体に巻き付け、緊張を帯びた呼吸をしていると、機械の駆動音が飛空艇を揺らしていく。


「それでは出発いたします。離陸まで強い揺れが発生しますので、ご注意を」

 嫌そうな表情を浮かべるイデイアちゃんを無視するように、飛空艇は揺れを強くする。


 やがて体が浮き上がるような感覚と共に、前方に取り付けられている窓から見える景色が下がっていき、白い雲を抱く青空へと向いていく。

 目的地は大空に存在する大陸、インヴィス空中大陸!



「あの白い雲の中に、インヴィス空中大陸があるんだったよね? いまは座標が分かってるから迷うことはないんだろうけど、初めて向かった時は良く見つけられたね」

「空中大陸を隠している雲は、時間で変化することがないの。それでも、その特徴に気付くにはしばらく時間がかかったよ」

 飛空艇でのフライトが続く中、座席から離れた私たちは窓のそばに移動し、景色を眺めていた。


 白い雲が近づいていき、その真横を通り過ぎていく。

 地上では絶対に見られない景色を楽しんでいると、イデイアちゃんが小さく笑みを浮かべている様子が横目に入る。


 揺れが落ち着いているおかげか、不調に陥っている様子は微塵もない。

 どうやら彼女の乗り物酔いは、飛空艇での移動に関しては問題ないようだ。


「う~ん……。むぐむぐ……」

 寝ぼけたような声に振り返ると、そこにはもぞもぞと動く一つのカバンが。


 くすくすと笑いながらそれに近づき、封となっているボタンを外す。

 中からは小さな角が勢いよく飛び出し、頭部、腹部、尻尾と内で眠っていた存在が這い出てくるのだった。


「おはよ、ラタちゃん。エルル大森林を離れてからず~っと眠りっぱなしだったけど、大丈夫?」

「大丈夫ですよ~。いっぱい眠って元気いっぱいです~。むしろ、眠り続けていた私のことを運ばせてしまって、申し訳ありません~」

 大地の竜ニーズヘッグ様の娘であるラタトスク――ラタちゃんは、小さな翼をはためかせて宙に浮く。


 そして、飛空艇に取り付けられた窓から外の景色を見て、キラリと瞳を輝かせた。


「わぁ~! 高~い! パパから譲ってもらった記憶の通り、空の上は素敵な光景ですね~! 機械の力でここまでの高みにたどり着くなんて、人の皆さんはすごいです~!」

「すっごいよね~! ウチも、感動しっぱなしだよ~。あ、でも、いつの日かラタちゃんも、自分の翼で空を飛べるようになるのか。自分の意志で大空を移動できるの、やっぱり羨ましいな~」

 ラタちゃんを交えての楽しげな会話が続く中、これまでとは少し異なる揺れが飛空艇に発生する。


 イデイアちゃんじゃないけど、少し気分が悪くなりそうかも。


「もう間もなく、インヴィス空中大陸の空域に入ります。強い揺れが発生する可能性がありますので、座席へと座りベルトで体を固定してください」

 指示された通りの行動を終えると同時に、飛空艇はさらに高度を上げる。


 前方に存在していた白い雲を乗り越えるように進んでいくと、突如としてそれが晴れ、眼下に色とりどりの植物をたたえる美しい大地が姿を表した。

 ここが今回の目的地、インヴィス空中大陸だ。


「驚いた……。お前たちから何度もこの大陸のことは聞いていたが、こうも美しいとは。頭の中での想像と、実際にこの目で見るのとでは、やはり違うな……」

「この景色を見ただけでも、レイカちゃんの旅についてきて良かったって思えるほどだよ……。ウチらを連れてきてくれて、ありがとね!」

「ふふ~ん。これだけで満足するのは早いと思うよ? 風の聖獣であるフェンリル様と、まだ会ってすらいないんだからね!」

 室内に笑い声が響く中、飛空艇はインヴィス空中大陸の大地に向けて降下をしていく。


 お腹の底に響くような振動に顔をしかめつつ、ベルトを体から外し、座席から立ち上がる。

 心地よい風が流れ込む乗降口から体を出すと――


「お待ちしていました! 風狼フェンリルの子、テペス! 皆さんをご案内します!」

 緑色の毛を有すオオカミ、テペス君が、私たちを歓迎してくれるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ