↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された  作者: みみぢあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/58

7話 再会


 乗馬服に着替え、支度を終えた私は自分の部屋を出て玄関ホールへと行くと。窓の外から庭を眺めていたエドガーが、私の足音に気づいたのかこちらを向いた。

 階段の途中にいた私を見あげるエドガーと目が合い、微笑みかけた。



「やっと会えたな、ジュリー!」

 エドガーは私の手を取り、礼儀正しくキスをする。


 その姿が板についていて、私のような田舎娘が隣に立つのが申し訳ない気がするほど。エドガーは凛々しく威厳まで備えた大人の男性になっていた。 


 私もエドガーに負けないよう、礼儀正しく挨拶を返す。エドガーと同様にいつまでも子供ではないと、大人になった今の私を見せたかった。


「お久しぶりです、ファゼリー伯爵様」

(驚いた! ……エドガーはなんて立派になったの⁉ こうしてエドガーと会うのは二年ぶりかしら。すっかり伯爵様が馴染んでいるように見えるわ)


 王都で忙しい毎日をおくるエドガーと会うのは、二年前に亡くなったエドガーのお父様、先代伯爵の葬儀に参列した時以来である。


 そして亡くなった先代伯爵の喪が明けるまではと、私とジョナサンの結婚式は二年延期され。ようやく喪が明けて準備が整ったと思ったら、今度はジョナサンに妹と浮気をされて婚約は解消された。


 こうして大きな災難でも起きないかぎり、私はエドガーに会うことさえ叶わない。幼馴染みがそんな遠い存在へと、変わってしまったことに寂しさを感じる。


 変わらないのは優しい金色の瞳ぐらいだ。茶色の髪でさえ、昔はもっと長くして馬の鬣(たてがみ)みたいだったのに。

 今はスッキリと短く切りそろえて綺麗に整髪している。


「やめてくれよ、ジュリー! ファゼリー伯爵様だなんて。幼馴染の君にまでそんな呼ばれ方をされたくないよ」


「ふふふっ……エドガー様とお呼びした方が良いのかしら?」

 感慨深い思いを抱きつつ。ファゼリー伯爵となった幼馴染を、私は首を傾げて見つめる。


「……っ」

 当のエドガーは苦笑を浮かべて嫌そうに手を振り。何かを追い払う仕草をした。


 そんなエドガーに私は高慢そうに見えるよう、わざと腕組みをしてツンッと言い放つ。


「まぁ、エドガー! あなたが伯爵様になったから、礼儀正しく、私はそうお呼びした方が良いのかと思いましたの!」

(そう言えば……昔からエドガーは恥かしがり屋だったわね。ああ、本当に懐かしいわ!)


 お互いが長男長女で、弟と妹の世話をする立ち位置だったからか。私は二歳年上の弟ジョナサンよりも、四歳年上の兄エドガーの方が良く気が合った。


「ははははっ! まったく君は……私を揶揄うなんて。子供の頃から生意気なのは変わらないな」 


 楽しそうにエドガーはカラカラと笑いながらも、さりげなく私にエスコートの手を差し出す。


「ごめんなさい、田舎娘丸出しで馴れ馴れしかったかしら? ふふっ……」

(王都暮らしが長いからか、紳士の服装も立ち居振る舞いも。エドガーの些細なしぐさ一つ一つが洗練されているわ! 地元の紳士たちとはぜんぜん違う。もちろん弟のジョナサンとも)


 見上げるほど背が高くて頼りがいもあり。昔から何もかも素敵だったけれど、大人の魅力まで加わっている。

(……エドガー、今のあなたは怖いモノ無しでしょう?)


 私の頬がポッと熱くなる。……きっと年頃の娘らしく、薄っすらと頬がバラ色に染まっているはずだ。


「いいや。王都で飼いならされた鳥籠の外を知らない小鳥みたいな、貴婦人たちに囲まれていると。君のように元気な女性は、かえって新鮮に感じる。ジュリーはとても魅力的だよ」


(まぁ! あんなに恥ずかしがり屋だったエドガーが、こんなにスラスラとお世辞を口にするなんて。……そんなに婚約解消をされた私に、同情しているのかしら?)


「あら、エドガー! あなたが私にお世辞を言うなんて……そうやって何人の令嬢を泣かせたの?」

 

 ニヤニヤと笑いながらとっておきの話題を口にすると、エドガーはすごく嫌そうな顔をする。


「ジュリー……その話、ジョナサンに聞いたのか?」


「ええ、あなたが王都で令嬢たちに、追いかけ回されているとね」

(王太子の側近をする将来有望な独身の伯爵なら、令嬢たちが目の色を変えて結婚したがる気持ちがわかるわ。……それにエドガーは裕福で魅力的だから、完璧な夫になれるはず)


 そんなエドガーを幼馴染みの気安さから、揶揄うことができる私は、会ったこともない王都の令嬢たちに少しだけ優越感を持った。 


 ハァ――ッ……とため息をつき。私は楽しい気分を噛みしめたくて瞳を閉じる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。