↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された  作者: みみぢあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
57/58

57話 後継者


 ――結婚してから数年後。



 王都の閑静な一等地に建つファゼリー伯爵家のタウンハウスで、元気な赤ん坊の泣き声が響いた。



「男の子ですよ、伯爵様!」

「……義母上!」

「さぁ、あなたの息子を抱いてあげて」


 満面の笑みを浮かべた私の叔母であり、義理の母でもあるセイフォード男爵夫人が、産まれたばかりの赤ん坊を抱いて寝室からようやく出て来た。


 イライラと廊下を歩き回りながら待っていた私は、義母から赤ん坊を手渡されて慌てて受け取った。


「ああ……髪はジュリー譲りだ」

 私は元気そうな子供の真っ赤な顔を見てホッ……と笑った。まだ産湯で濡れている息子の金色の髪にキスを落とす。


 ギュッと目蓋を閉じているから瞳の色はまだわからないが。髪色と同じように瞳もジュリーに似た空色だと良いなと思った。


「やれやれ、これで一安心ね……」

 義母上も私の腕に抱いた産まれたての孫を眺めながら、幸せそうに笑っている。


「義母上、妻は? ジュリーは大丈夫ですか?」

「ええ、元気よ。今回は産まれるまでが早かったから」


 産まれたての息子は三番目の子で。上に長男のサディと長女のファニーがいる。

 私は再びホッとため息をつく。


「ジュリーと話せそうですか?」

「そうね……眠たそうにしていたけれど、まだ起きているわ」

「それなら眠る前に、妻を労わないと!」

「ふふっ……そうね。そうしてあげて」


 私はもう一度小さな息子の柔らかい髪にキスを落とす。視界のすみに立つ弟のジョナサンと目が合い息子を渡す。

「……ほら、ジョナサン!」


「えっ⁉ わぁ……」

 ジョナサンはぎこちない手で、いきなり私に渡された小さな赤ん坊を受け取るが。オロオロと動揺し私に助けを求めて来た。


「あっ! 兄上??!」

「抱き方は長女(ファニー)で覚えただろう? 産まれたばかりの子は首が座っていないから、頭を支えてやるんだ!」


 小さな私の息子にビクつくジョナサンに、助言をしてニヤリと笑った。


「ああ、は……はい!」

 最初はオロオロとしていたが、腕の中の赤ん坊を見つめるうちに、ジョナサンからも笑みが零れた。


「ふふふっ……どうだ、ジョナサン。産まれたての赤ん坊は、小さくて可愛いだろう?」

「ああ、本当に可愛いよ!」


「すみません義母上……“ヘクター”をお願いします」

 産まれる前から私は、息子の名前を決めていた。


「ええ…」





 静かに扉を開けて寝室へ入ると。ちょうど医師がジュリーの脈をはかり終え、診療記録に書き入れているところだった。

 ベッドに横たわるジュリーを見ると。……眠っているのか、頬をバラ色に染めたままぐったりと瞳を閉じていた。


「医師(せんせい)、妻と話しても良いか……?」

 私はジュリーを見つめながら、医師にたずねた。


「ええ、伯爵様。私はしばらく席を外しますから。奥様を疲れさせないように気を付けて下さい」

「はい」


 ジュリーの汗で濡れた額にキスをした時、普段よりも額が熱くなっていると感じた。出産直後で微熱が出ているようだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。