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婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された  作者: みみぢあん


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45/58

45話 高貴な客人


 重苦しく不安な空気に包まれた祭壇広間に、参列者席からニッコリと微笑むマクシミリアン様の拍手が鳴り響いた。広間にいた人たちの視線が、一斉にマクシミリアン様へと注がれる。



「これはエドガーの勝ちだな!」

 ゆったりとした鷹揚な態度で、マクシミリアン様は言い争っていた私たちの元へ歩いて来る。

 突然のことだったので私は呆(ほう)けて、マクシミリアン様をボンヤリと見つめた。


 ――ただ歩いて来るだけなのに。高貴な雰囲気を漂わせたマクシミリアン様の優雅な姿に目が惹きつけられ。その姿に私は感嘆を禁じ得なかった。


 夫となるエドガーの前だから、心の中だけに感嘆の声はとどめた。もちろん、品格の高さならエドガーだって負けていない。

 でもマクシミリアン様はエドガーの上司だから、二人には従わせる者と従う者の上下関係がしっかりとあり。エドガーはマクシミリアン様の前だからか、有能な部下といった雰囲気なのだ。



「いったい君は誰だ⁉」


 お父様がマクシミリアン様へ問いかけると。その瞬間、エドガーは顔をしかめて黙りこんだ。


 いきなり話に割り込んで来た見知らぬ男の存在に困惑し。お父様は無礼者だと言いたげに、ジロリとマクシミリアン様を睨みつけた。


「マ、マクシミリアン様……!」

 エドガー側の助っ人として仲裁に入ろうとしてくれているのがわかり。ホッとする反面、私は居心地の悪さを感じた。

 

(恥ずかしいわ。今日、初めて会った人に親子で言い争う姿を見られてしまった)

 そのうえマクシミリアン様は、私たち親子の喧嘩の仲裁までしようとしている。

 

「……マクシミリアンだと? いったいどこの誰なんだ。余計な口出しをしおって!」

 名前を呼んだ私の声がお父様の耳に届き。お父様はムッとマクシミリアン様を見つめた。


「男爵、この話し合いは君の負けだ。ここは潔くジュリー嬢とエドガーの結婚を認め、祝福してやりたまえ!」

 マクシミリアン様が動くと、周囲にいた護衛騎士たちも一緒に付近の様子を警戒しながら動く。 


「私の負けだと……⁉ 他人が口出しを……っ」 


「旦、旦那様…っ!! いけません。お言葉にお気を付けください!」

 カッと腹を立てた男爵がマクシミリアン様に暴言を吐く寸前で、お母様が背後から大声で叫びお父様を制止した。


 お母様は顔を強張らせ、慌ててマクシミリアン様に頭を下げてから。お父様の元へ駆け寄りかん高い声で警告する。


「もうお止めください、旦那様!」

「何なんだ……⁉」


 突然、話に割って入って来た部外者が、護衛の騎士を引きつれて悠然と歩く姿に。お父様自身もようやく、ただならぬ空気を感じとったのか。私から視線を移しマクシミリアン様に注目する。


 田舎娘の私でも……マクシミリアン様の服装から、年齢は若くとも男爵のお父様よりも格上の貴族だとすぐに分かった。お父様もそのことに気付いたはずだ。



「どこかで見た覚えのある顔だが……マクシミリアンだと?」

 お父様はマクシミリアン様の顔をジロジロ見てから、ハッ! と息を呑んだ。どうやらお父様はマクシミリアン様の正体に、心当たりがあったらしい。


「まさか……⁉」

 激怒していたお父様が顔を強張らせた。


 エドガーはヒソヒソと、参列者たちに聞こえないようお父様に囁いた。

「セイフォード男爵。ここでは保安上の問題がありますから、けして王太子殿下の身分を明かされませんように!」


 エドガーの小さな声が聞こえる範囲にいた、お父様と私、そして神官様はギョッ! と目を見開く。


「なっ!!」

(王太子殿下ですって⁉ そんな……マクシミリアン様が王太子殿下⁉ 私……私……っ! 気安く名前を呼んでしまったわ! それも何度も。何度もよ? 嘘でしょう⁉」




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