↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された  作者: みみぢあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/58

39話 花嫁の準備


 使用人たちの手を借りて大急ぎで入浴を済ませると、腰まで伸ばした赤みが強い金の髪を綺麗に結い、後頭部の高い位置でシニヨンにしてもらった。

 エドガーから贈られた花束の中から、花が開きかけの白薔薇をいくつか選び髪に飾る。

 お化粧は唇と目元に薄くのせ、顔色を良く見せる程度でとどめた。

 

 そして私が選んだ金色がかった白色の、美しい生地で仕立てられたドレスを着て。最後の仕上げにお母様が用意した、足元まである長い長いベールをフワリと頭からかけて顔を隠す。


「……」

(こんなふうに、私の好き勝手に進めてしまって……本当に大丈夫かしら? もう少し慎重に考えてからの方が良かったのでは……)


 これまでずっと長女として義務と責任に縛られて、自分のことは我慢しながら男爵家のために生きて来た。私は自由に行動することに慣れていないから、今は躊躇いを感じている。


(人生を左右する決断を、自分勝手に情熱の赴(おもむ)くまま、本当に進めてしまっても良いのかしら?)


 普段の自分からは考えられないほど、無鉄砲になっていると自覚がある。

 ――だから、準備が進むにつれて段々と不安になって来たのだ。

(この先何か、落とし穴がありそうで嫌な予感がする)


「さぁ、お嬢様……」

「ええ…」


 使用人のマディに手を引かれ、私は姿見(全身を映せる鏡)の前に立つ。


(エドガーの妻になるなんて……まだ、信じられないわ。目覚めたらやっぱり全部、夢だったりして?)

 それにここまで、あまりにも順調に進み過ぎて。それがまるで嵐の前の静けさのようで怖い。


 でも、ありがたいことに女性の使用人たちは全員、私の味方をしてくれている。婚約解消騒ぎの時、同じ女性として私に同情し胸を痛めていたからだ。

 何より私にとどめを刺すように『他家へ嫁がせない』 ……と命令したお父様の仕打ちに、皆は腹を立てていた。


 男性の使用人たちは、全員が味方というわけでは無かった。だが、男爵夫人(お母様)の命令には逆らえず。見て見ぬフリをしている。



 姿見の前に立つ私の隣で、年の近い使用人のマディはうっとりと溜息をつき、鏡に映る私を褒めちぎった。


「ファゼリー伯爵夫人に相応しい美しさですわ、ジュリーお嬢様!」

「ありがとう」

「それに伯爵様はとても情熱的な男性だとお見受けしました。あんなに素敵な求婚をされるなんて……ハァ~…羨ましいです」


「まぁ、マディったら! ふふふっ……」

(素敵なドレスのおかげね。本当に自分で言うのはおかしいけれど、いつもより何倍も綺麗に見えるわ) 

 

 燥(はしゃ)ぐマディの顔を見るうちに。不安感で緊張していた私の顔から強張りが少し解けた。



 コンッ! コンッ! コンッ! 扉が廊下側から叩かれる音が室内で響き。マディが応対に出る。


「お嬢様、馬車の用意が出来たそうです!」


「分かったわ」

(どれだけ不安でも。……今、この部屋を出て行かなければ、私は一生男爵家に囚われてしまうわ)


 私はもう一度、姿見に自分の姿を映し。クルリと回って上から下まで見つめて、最終の確認をする。


 これまで男爵家と領地を守ることに、私は何の疑問も感じなかったけれど。ジョナサンがアリアーヌと結婚したら……私は都合よく道具のように使われる身となる。


(私のモノにはならない領地と男爵家を守るために、身を粉にして働かなければいけないなんて! そんな自分の将来を想像すると、あまりの虚しさで背筋が寒くなるわ!)


 今まで愛着を持って守って来たけれど。それは私が後を継ぎ、私が産んだ子供や子孫に伝えるためだと信じていたからだ。

(……それに、ジョナサンとアリアーヌの幸せな姿を眺めながら、一人孤独に一生を過ごすなんて嫌よ!)


 ジュリーは空色の瞳を閉じて、静かに深呼吸をして気持ちを整えると。覚悟を決めて、勇ましく鏡の前から扉へと向かった。



「さぁ、神殿へ行きましょう!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。