32話 求婚4
エドガーが口に入れてくれた砂糖菓子を噛み砕くと、私の口の中で濃厚な桃の果汁がトロリと広がり、天国(行ったこと無いけど)のお菓子みたいに幸せな味がした。
「んんんんん〰〰〰〰っ……!」
(まぁ、何て美味しいの⁉ こんなお菓子は初めて食べたわ!)
エドガーが次の砂糖菓子を包み紙から出したから、私は一つ目のが口の中で溶けて無くなると。小鳥の雛のように口を開けて、エドガーがボンボンを入れてくれるのを待った。
二つ目の砂糖菓子は……噛み砕いた瞬間、濃厚なワインの香りが口の中で広がり、食べ過ぎたら酔ってしまいそうな大人の味がした。
(んんんん〰〰〰っ!)
思わずうっとりと瞳を閉じて、口の中の大人の味を堪能する。
「ジュリー? ほら、口を開けて!」
「……っ!」
(まぁ、エドガー! またくれるの?! 嬉しいぃ!)
子供のようにあ~ん……と口を開けて待っているとポイッ! とエドガーが三つ目の砂糖菓子を入れてくれる。三つ目のはオレンジリキュール味だ。
柑橘系でさっぱりとしているのに華やかな甘みが、リキュールのアルコールと一緒に私を酔わせる。
「んんん〰〰〰〰っ……!」
「王都で貴婦人たちに人気がある店の菓子らしい。どうだ、ジュリー……? 少しは幸せになったか?」
「うんっ!」
(幸せ……? ええ、幸せよ! 私がお父様に男爵家から嫁がせないと言われたことを、エドガーはジョナサンに聞いて。私を慰めるために美味しいボンボンと、貴重な青い薔薇の花束を用意してくれたのね。本当に優しい人だわ!)
エドガーは四つ目を包みから出して、また私の口に入れる。
「んん〰〰っ!」
(ああ、もう! お礼を言いたいのに、エドガーったら! 次から次へとボンボンを私の口に入れるから、お礼を言う暇がないわ! うふふっ……でも、こんなに美味しいお菓子を、拒むことなんて出来ないわっ!)
エドガーは四つ目のボンボンを、私の口に入れながら唐突に言った。
「……ジュリー、結婚してくれ!」
「……っ⁉」
ゴクリッ! 四つ目のボンボンを口の中で味わう前に、私は驚いて丸呑みしてしまう。
緊張した表情で、五つ目のボンボンを包みから出したエドガーは……
「ジュリー、口を開けて……」
「……」
(あら……今、求婚されたと思ったけれど? やっぱり私の聞き間違いだったのかしら⁉)
呆然とエドガーに言われるまま、私は口を開けてボンボンを入れてもらう。
せっかくボンボンを口に入れてもらったのに。私は五つ目のボンボンが、何味か分からなかった。
「ジュリー……うん、と言ってくれ!」
「うん………?」
私は自分の耳が信じられず。エドガーを見上げたが……言われるがまま何も考えず。『うん』と答えてしまった。
「よし!!」
私の答えを聞いたエドガーは嬉しそうに笑い、六つ目のボンボンは入れず。私の唇に素早くキスをする。
「……っ⁉」
(私に何が起きてるの⁉)
突然、自分に起きたことが信じられず。私は空色の瞳をパチパチとまばたきして、エドガーの金色の瞳をマジマジと見つめ続けた。




