3話 男爵と伯爵
王太子殿下から秘密裏に命令が下され、殿下の側近を務める私は、南部貴族による武器密輸に関する噂の調査を行った。
調査の結果、武器密輸の疑惑は単なる噂ではなく。実際に行われていたことが判明し、南部の大貴族と呼ばれる名門貴族家を、断頭台へと送ることが出来た。
それはつまり……武器の密輸に関わった者たちによる、王家への謀反の芽を水際で摘むことが出来たということであり。ホッと胸を撫でおろしたのも束の間。
――謀反騒ぎの次は、私が暮らす王都のファゼリー伯爵家の屋敷に、田舎の本邸から弟のジョナサンが早馬で急ぎの連絡を寄こした。
「まったく……ジョナサンにも困ったものだ! いったい何事かと思ったら。婚約者を姉から妹に交代させろだと⁉」
深夜に近い時間だったが、ちょうど執務室で溜まりに溜まった大量のファゼリー伯爵家関連の書類を、片づけている最中だったため。直接、私はジョナサンの使者から手紙を受け取ることが出来たのだが……。
手紙の内容があまりにも無責任なうえに、子供っぽくて弟に腹が立った。
読み終えた手紙に八つ当たりをして、手の中でグチャグチャに丸めて暖炉の火にポイッ! ……と放り込んだ。
「ジョナサンの頭の中はどうなっているんだ? 一度、割って中を見てやろうか! 我が弟ながら理解に苦しむぞ。クソッ!」
ガシガシと頭をかき混ぜ、ハァ――……とため息をつく。
「私が毎日、寝る暇も無いほど忙しく働いていた時に……よりによって婚約者の妹と浮気をしていただと⁉」
学園生時代に散々遊びまわっておいて。父上が亡くなり、ようやく落ち着いたと思ったら……ジョナサンはまた、面倒な騒ぎを起こしたのだ。
自分はいつまで弟の尻拭いをすれば良いのかと……イライラが募る。
ジョナサンから連絡を受け取り一週間後――
問題を解決するべく私は急遽、王都から地方にあるセイフォード男爵邸へ駆け付け、男爵と話し合うこととなった。




