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婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された  作者: みみぢあん


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25話 兄弟げんか2


 いくら私が短気でも普段の自分からはかけ離れて、弟のジョナサンに対してカッと熱くなり過ぎだと自覚はあった。たぶん生まれ育った故郷に戻って来て、昔の自分が顔を出したのだ。


 故郷を出て以来、王太子殿下の側近をしながら何年もかけて身に着けたのに。私の忍耐力はまともに働こうとしない。


 馬に乗り子供の頃の思い出の場所へ出かけた。そこでジュリーの悲し気な涙を見た時から……私は元婚約者の弟に、激しい嫉妬の炎を燃やしていたからだ。


 野蛮な感情を抑えようと、何とかジョナサンの襟を放し。

 スゥ――ッ……、ハァ――ッ……、と深呼吸をして落ち着きを取り戻す。



「それでお前は……何があって酒浸りになったのか、いいかげん話せ! これ以上、男爵家とお前の間に問題が起きては、私の求婚の妨げとなるだろう?」

 もう一度、私はジョナサンに問いただした。


 数分前までの怒りを爆発させた威嚇ではなく。冷ややかな瞳で威圧して、ジョナサンを静かに追い詰めるつもりだ。


「兄上……本気なのか⁉」


 さすがにジョナサンが怯む。


 子どもっぽく拗ねて反抗していても。昔からジョナサンが、密かに私を尊敬していたことを知っている。

 その私が一生を左右するかもしれない求婚を、自分の元婚約者にしようとしているのだ。

 ――それもジョナサンとは何かと対立することが多かった、天敵とも言えるジュリーにだ。


「何度も言うが、ここで冗談を言うほど私は暇では無い!」


「くっ……ははっ……あはははははっ! 兄上がジュリーに求婚だってぇ? あの真っ黒に日焼けした醜い女に⁉ あんな気が強い生意気な女のどこが良いんだよ!」

 突然ジョナサンは品性の欠片も無い、ゲラゲラと下品な態度で笑いだした。


「……っ」

(この愚か者は、まだ酒が抜けていないのか? やはり手加減するのはやめた方が良さそうだ)


 努力して鎮めていた激しい怒りが、ジュリーを侮辱するジョナサンの言葉で、いっきに爆発した。私の拳をジョナサンの顔に叩きこんだ。


 ゴツッ…! 

「……があっ!」


 汚い侮辱の言葉を吐いたジョナサンの口を、一番最初に私の拳で封じた。

 

 ドスッ…! ドスッ…! 

 続けてヒョロリと細いジョナサンの腹部に、容赦なく私の拳がめり込む。 

「うぐっ……ぐふっ! うっ……」


 ゴキッ…! 

「あっ…ぐうっ……!」


 最期のとどめは、ジョナサン自慢の顔の真ん中に打ちこみ、細く高い鼻を綺麗に折った。


「……っこの、クソ野郎! お前がどれだけクズなのか、もう少し自覚しろ!」 


 私の怒りの強さが拳にあらわれ。一発では止まらず、顔と腹に三発、四発と……ジョナサンが絨毯に倒れるまで、手加減無しで拳を打ち込んだ。


 それでも理性が利き、致命傷を負わせるほどの殴打はしないよう、我慢したのだから。私的にはかなりの譲歩だった。 


「恥を知れ! お前がここまでクズだとは思わなかった! 今までジュリーがどれだけお前に我慢してきたか、想像できる! 彼女と婚約解消になって正解だ!」


「ううっ……鼻が…! ううっ……ひどいよ…兄上……! うっ……」

 鼻が折れ、ついでに歯も砕けたジョナサンは、顔を押さえて泣きだした。


「それで、ジョナサン。そろそろ酒浸りになった理由を、話す気になったか?」



 フンッ! と鼻を鳴らしながら、もう一度たずねた。




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