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婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された  作者: みみぢあん


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11話 成長したジュリー2


 馬で目的地の丘の上まで来ると、子供の頃から慣れ親しんで来た景色を眺め、ジュリーの前で堪能するフリをした

 そうやってさりげなさを装い、気分屋の弟ジョナサンがやらかした一方的な婚約解消を、どうやってジュリーに謝罪しようかとその機会を慎重にうかがった。 



「……」

(よし! まずはジョナサンの話題を出そう。それをきっかけにして礼儀正しくジュリーに謝罪すれば良い)


 昨日、ジュリーの父親と話し合いをすませた後。伯爵邸へ帰った私はジョナサンの自慢の顔を殴って、兄弟流の制裁を与えたことを面白おかしくジュリーに話した。


 私の狙い通り機嫌良く笑い出したジュリーに、謝罪の言葉を口にしようとしたその時――

 ケラケラと明るい声で笑っていたジュリーが、不意に泣き出した。



「ジュリー……?」


「ご……ごめんなさい、エドガー! あなたが笑わせるから、涙が止まらないの! ふふふっ……もう、困ったわ…!」


 涙を流しながらジュリーは笑った。

 声だけ聞けば明るい笑い声だが。顔を見ている私が言葉を失い胸に痛みを感じるほど……ジュリーは寂しそうに笑っていた。


「……っ!」

(クソッ! ジョナサンの野郎ッ! やっぱりジュリーは少しも平気そうではない。どう見てもボロボロじゃないか!)


 恐らくジュリーはこれ以上、誰かに傷つけられたくなくて。弱みを見せないよう必死に痛む心を隠していたのだ。


 内心ではひどく焦りを感じながら、私は黙って自分のハンカチを差し出した。

 ……あとはどうやって慰めようかと少し迷ったが、ジュリーをそっと抱きしめてみる。


「ごめんなさい……エドガー! 恥ずかしいわ」


 グスッと鼻をすすり、ジュリーは涙声で何度も謝った。

「本当にごめんなさい。エドガー」


「気にするな」

 我慢させずに思いっきりジュリーを泣かせてやりたくて。私は震える背中をトンッ、トンッ、と叩く。



「……」

(ああ、そう言えばジュリーは幼い頃……自分が泣きたくても先に妹のアリアーヌが泣いてしまうから。妹をなだめるために自分は泣くのを我慢していたことが良くあった)


 両親に『長女なら泣くな!』『姉なら身体の弱い妹を守れ!』と厳しく躾けられていたジュリーは、子供の時から人前で泣くことを許されなかったのだ。


「…っう……」 


 そのジュリーが私の胸で、声を殺して泣いている。涙を我慢できないほど、ジュリーは傷ついていた。

 久しぶりに会いに来た私の前で、元気に見えるように我慢していただけだ。


(ジュリー、君は……それほどジョナサンを愛していたのか? 弟はそんなことはないと、強く否定していたけれど) 



 私の中に訳が分からない激しい嫉妬心が込みあげて来た。

 寂し気に泣くジュリーの細い身体を抱きしめる腕に、無意識のうちにギュッと力を込めた。




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