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高鳴り

 体育館は半々で分かれている。分け目にネットを挟んで自分たちはステージは側で、バレーはネットの裏。

「おーい聞いてんのかって。」

岡嵜の呆れた声で我に返った。立本がからかうように言う。

「可愛い子いたんか。」

「ばかいえ。」


 今回のコンクールは、有名曲をカバーすることにした。

言い忘れたけど自分がボーカルなので結構神経使う。ギターと歌の両立。全く練習が足りていなかった。


「ちょ便所行ってくる」


バレー部も片付けに入っていた。嫌いなフレーズが頭でずっとリピートされる。ひとつため息を着いてトイレのドアを開けると、同時に隣の女子便所のドアが開いた。言うまでもな。い()()()だった。気まずそうに、あの子はすぐその場を後にしようとした。


「あっ!バレー部の...」


反射的に出た声を中途半端に飲み込んだ。本能が叫んだのだ。俺は悪くない。なんて照れ隠しのために思ったが、もういっそ殺して欲しいくらいに恥ずかしい。

一方あの子は、首を少し傾けた。短い髪が微かに動いた。


「バレー部ですが、、、、どうかしましたか?」


「イエ!」


緊張で声が裏返り、背中が真っ直ぐになった。消えてぇ。


「くす...」


あの子は下を向いた。なんとなく空気が軽くなった気がした。

「あのぅ..どうかしましたか。。。。」

「どはははははは!」

あの子は大声で笑いだした。口を大きく開けて口元を人差し指隠しながら。

「笑わせないでくださいよ〜。」

小さな口が右に上がって、八重歯がチラリと見えた。

天使みたいだなと思ったが生意気だなとも思った。


「そんなおもしろいかな」


「面白いよククク。そういえばなんかいいかけてなかった?」


にしても生意気だ。こんなキャラだったとは思ってたんと違う。


「いや、あれは、、その、、。」


また八重歯を見せてクスッと短髪をなびかせる。

俺は今まで好きだった子にSNS上の会話だけめっちゃ喋ったせいで、現実の会話のハードルが上がってしまっていた。だが今は違うまだ俺のキャラが定まっていない。

ここで陽キャアピしとけば、、、、。


「な、名前ー教えてぇ、、、くんねー、、。」


どわー。頑張ってる。なんでこんなズッコけなきゃいけないのだ。


「なんかキモいですね。」


え。女から拒絶された。初めてでは無いかもだが。ホラー映画でびっくりさせられた時の胸の高鳴りがよく聞こえる。


「うっそ。私は荒川仁奈(にいな)。覚えていてください!それでは!」


振り返った時、髪からいい匂いが香った。下半身はまあ肉付きが丁度よく....。帰って落ち着かせよ。

 立本と向かい合っていた岡嵜が振り返って言った。立本はニヤけている。見られたか。




「遅かったな!げりだな!な!!」



「ちげーし。」











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