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泣き顔は見せない

 もうかれこれ2ヶ月中学で練習はしていない。まああれがイレギュラーな出来事だったことは十分承知しているハズだが。俺はあの子に名前を伝えなかったたことを後悔している。


 現在9月。文化祭で何やるかとか。そんなことをバンドメンバーと話しているとこだ。バンドメンバーは同じクラス。

「うちのクラスなにすっか」

立本が言う。

「んなことは、あっちの陽キャに任せて俺らはライブだろう。」

岡嵜が、即答する。

俺は特に何も言わず、どちらにも頷いといた。


「琉生は。」

「メイド喫茶。」

「ははっ。ちげーよライブだわ。曲の話」

岡嵜が呆れ顔で言う。あの子ライブ来てくんねーかな。


「こいつ聞いてねーぞ。」

「賢者タイムじゃね。」

岡嵜と立本がコソコソといった。


「おうい、りゅー!あんた軽音部なんだから、文化祭でステージ使うんでしょ?この紙書いてって生徒会が。」


神崎優衣(ゆい)女子軟式野球部。一応幼なじみだが。最近はなんか胸が大きくなってきて色気付いている。困ったものだ。やや上で結んだ少し長めのポニー。若干タレ目気味だが気が強い。


「あ、今日ちょっと校門ら辺で待ってて部活今日ないから。んじゃ。」


俺は返事をしていない。


「お前しっかりゴムはしろよ。しくしく」

岡嵜はどーてーらしい。俺もだが。


優衣の約束通り俺は岡嵜達と話しながらダラダラ校門へ向かった。そして、校門近くで岡嵜達と別れた。

少々駆け足で校門に向かうと校門の死角からなにか飛び出してきた。途端に腹部に強い衝撃を感じた。


「ぐう!!?」

「おっせーよ。」


態度と胸は大きいのに声はロリ声なのが何となくむかつく。


「すまんすまん。」


しかし、待ってたんだと思うと罪悪感が込み上げてくるものだ。すると校門から、同じクラスメートの女子村田すゞ(すず)が歩いてきた。


「うわ、琉生スカート覗こうとしてんの?」

みぞおちに食らったので屈んでいるだけだ。


「あ、ゆい。上から見てたけどなんであんなうろちょろしてたの?なんか悲しそうだったし落し物でもしたんかと思って委員会の仕事早めに....」

「ああああ、あったあった!今見つけた。ほら、キーホルダー!」


優衣はすゞの話を遮るように動揺しながら、かばんに付いているキーホルダーを指さした。


「え?優衣かばんに付いてんじゃん。」

「そ、それは、、」

「まあいいや、じゃあねーー。」


なんか気まずいな。


「お、おい!りゅう!か、帰るぞ!。」

「はいよ。」


なんでそんな動揺してるんだ。まあいい。

「野球最近どうなの。」

俺が聞くと、急に不安気な顔して俯いた。


「来月大会。んとね..私は中学硬式のクラブ入ってたから、みんなから期待されちゃって。今まで完璧を装って来たけどもう無理そうで。」


いつもの彼女とはまた違った雰囲気だ。こんなことを抱えていたなんて。


「あ、ああうん。そっか。」


こうゆう時なんて声かければ。出そうで出ない言葉たち。喉の奥で突っかかる。気の利いた一言も出せない情けない男を再認識した。


「でもお前はすごいじゃん。」


小学生1年生みたいな言葉が出た。


「え?何が?」


ちょっとにやけながら、ジト目で見つめられた。でもすぐそっぽを向かれてしまった。


「まあいい!ありがと!頑張るよ私!」


俺は見逃さなかった足元にぽつぽつと水が落ちたこと。いや水じゃない涙だった。空に満点の星があったから。あえて言わないでやろう。あいつは俺の前で泣き顔を見せたことないもんな。

少し心に響いてくれたならいいが、なんとなくこそばゆいな。





 

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