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第四話:我が家が「他人」に変わる時

#奈良井宿の灯火 | 我が家が「他人」に変わる時。

江戸エドの店の木扉を叩く音は、客を招くような穏やかなものではなかった。それは苛立ちに満ちた激しい衝撃となって、凍てつく奈良井宿の静寂を打ち砕いた。


江戸は荒い息をつきながら目を覚ました。頭はまだ作業台に置かれたままで、頬には未完成の木製の車が押し付けられていた。彼は感覚のない足を必死に引きずり、扉へと向かった。


「はい……今……。孫かい? ああ、孫が来たのかい……?」

消え入りそうな枯れた声で、江戸は呟いた。


しかし、扉が開いた瞬間にその希望は打ち砕かれた。そこにいたのは瞳を輝かせた少年ではなく、氷のように冷徹な表情を浮かべた、黒いスーツ姿の男が二人。彼らは分厚い書類鞄と、忌まわしい赤い紙――差し押さえの赤紙を手に持っていた。


「江戸さんですね? 銀行の者です。支払いの猶予期限は三ヶ月前に過ぎています。本日をもって、この建物は正式に差し押さえとなりました」


江戸はよろめき、朽ちかけた門柱に必死に掴まった。「そ、そんな……待っているんです。孫が……あの子が来るんです! 店が閉まってしまったら、あの子はおじいちゃんをどこで探せばいいか分からなくなってしまう!」


職員の一人は大きな溜息をつき、埃にまみれた薄暗い店内を見渡した。「おじいさん、ここを見てください。ここは家じゃない、ただのガラクタ置き場だ。誰も来やしませんよ」


江戸の嘆きなど無視して、彼らは古い旋盤や展示棚に次々と赤紙を貼り始めた。そして――最も残酷なことに、江戸が大切に磨き続けてきたあの小さな椅子にまで、その赤い紙が貼られた。


「やめてくれ! その椅子だけは、お願いだ!」江戸は痩せこけた体で職員を遮ろうと叫んだ。「それは孫のものなんだ! あの子が座るんだ! 汚い手で触らないでくれ!」


江戸は軽く押し戻され、冷たい床に尻餅をついた。涙で霞む視界の中で、彼が作り上げたおもちゃたちが、無造作に段ボール箱へ放り込まれていく。


「こんなものに価値はありません。一時間以内にここを明け渡してもらいます。鞄一つに入る分だけ私物を持って、出て行ってください。残りはすべて廃棄します」


江戸は床を這い、職員の一人の足に縋り付いた。「お願いだ……隅っこに置かせてくれるだけでいい。何も食べない、何も欲しがらない。あの子が来るまで……あと少しで来るんだ……」


職員は嫌悪感を露わにして、震える江戸の手を振り払った。「いい加減に目を覚ませ、じいさん。あんたの息子さんが相続放棄の書類にサインしたんだ。家族はもう関わりたくないと言っている。なぜあんただけが、まだしがみついているんだ?」


江戸の世界が音を立てて崩れ去った。その言葉は、今まで彼の肌を傷つけてきたどのノミよりも鋭く深く突き刺さった。息子自身の手で、見捨てられたのだ。


残された力を振り絞り、江戸はまだ封印されていない唯一の品――職員がただの木屑だと思い込んで放置した、最後の手作り自動車を掴んだ。彼はそれを胸に強く抱きしめ、トラックに荷物が投げ込まれる騒音の中で、声もなく嗚咽した。


外に広がる壮麗な奈良井宿が、まるで彼の破滅を嘲笑っているかのようだった。


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