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竜③

 朝日が昇る前に3人は準備を始めた。軽く身体を動かしたり、荷物をまとめたり。漂ったりしていた。


 アドニスが運動を終え佳唯が荷物を並べ整理してる横へやって来た。その中から竹筒を持ち上げる。ちゃぷんと水の音がして中の液体が動く振動が伝わる。


「ああ、のどが渇いた? どうぞ飲んで」


「水筒、ですよね? 昨日から飲んでも飲んでも減らない気がするのですが……」


「それは私の故郷の山の湧き水と繋がってるの。いつでも美味しい水が飲めるのは重要な事だもの」


「仙女の道具なのですか?」


「あはは! そうよ。……ありがとう」


「何がですか?」


「魔女と言わないでくれて」


こちらを見ずに言う佳唯にアドニスは何か思ったはずだったがすぐに消えてしまった。

不思議な道具を使い、不思議な力を使う彼女を魔女と言わずになんと言うのか。そう決めたのは誰なのか。そんな考えが浮かべば、するりと消えてしまった。


「アドニス、はいどうぞ」


「これは?」


「月餅……ビスケット? プチフール? 中にナッツが入っている焼き菓子で、保存が利くから私は旅の時に持つのよ」


佳唯の手のひら程の大きさの、丸くて分厚い焼き菓子を手渡される。思ったよりもずっしりしていて、中が詰まっているようだ。


「甘い物を食べると落ち着くもの。アドニス、良く寝られなかったでしょう?」


「……ありがとうございます」


 ほろほろと口の中で崩れて、優しい甘さが沁みていく。それを、冷たい水で飲み下す。甘みは流れていくのに、クルミなどの香ばしさがいつまでも鼻を抜けていった。

 これが心情を表しているのなら、一体クルミは何になるのだろうとアドニスは思った。



「俺にも寄越せ」


「食べるの? 大丈夫?」


 伸ばしてくるルシュフの手に佳唯は触れない様に優しく月餅を乗せた。

 くんくんと失礼な程の匂いを嗅いで、眉を思いっ切りしかめてからルシュフは一口囓って、すぐに月餅を佳唯の手に戻した。

 眉はいつまでも寄せられたままだった。


「……以外」


 ルシュフは口の中が落ち着かないのか、もごもごと舌を動かしながら、佳唯の呟きに首を傾げた。


「不味いって言われて捨てられるか、握り潰されるかと思った」


「……まずい」


 失礼な、と反論しなかったのは、自分でも不思議に思ったからだ。確かに今までなら食事は不味ければ捨てていた。

 にこにこと佳唯が、渡された月餅を齧る。アドニスから水筒を受け取って水を美味しそうに飲む。

 そんな佳唯を見ながら、ルシュフは少し喉の渇きを思い出していた。






 それから4時間程歩いて、ようやく頂上へと辿り着いた。息を切らす者はいない。


「何もありませんね」


 アドニスは辺りを見回した。岩と石と砂利しかない。


「そうなの。どこぞのように、どうやって持ち上げるんだと言うような大きな岩の門でもあれば良いのにね」


 くすくすと笑って佳唯は言った。


「逆にね、あれは現在使っておりませんっていう意味なの。下手に目立つ物を置いておけば人間がやって来るでしょう? 人間に見つかって放棄された(ゲート)を遠くから見ても分かるように石を積んでおくのよ」


 あ、そうだ、と佳唯はルシュフを呼んだ。


「ちょっと辛いけど、頑張ってね」


 胸の前で握りこぶしを二つ作り、顔だけは割と真剣に佳唯は言った。


 地面が光が走る。3人どころか、二小隊は包めそうなほど広がった光は、花のような模様を描いていく。

 音も無く行われる筈だった展開はルシュフの呻き声で満たされた。









 光が晴れると見渡す限りの平原だった。

 高い木どころか遠くに山も無い。ずっと遠くの景色は空に続いていた。

 だが、アドニスはそれを確認できない。それよりも目の離せない、視界いっぱいの、目の前に立つものに釘付けだった。


 力強く空を覆う巨大な翼をもったそれは、トカゲと言うにはあまりに神々しく佇んでいる。

 首を擡げた姿は、7mはあるだろうか。屋敷を見上げるのと変わらない。

 尻尾は長く体長の半分を占めていて、それをくるりと前に持ってきている。先端にはそれだけで凶器となりそうなヒレがあり、今は扇の様に畳まれていた。

 太い首の上にある顔には、鋭い牙を覗かせた口、炎のようにうねりながら伸びる二本の角、そして白目の無い穏やかな瞳があった。


 アドニスは神話の世界にいるのだと確信した。



「紅い、竜……」


「ごめん、ちょっと待って。思ったよりルシュフが大変」


「……やっと名前を呼んだと思ったらこれか。クソ!」


 それだけ呟くと眉間に皺を作ったまま気を失ってしまった。それでもまだ、じゅうじゅうと全身から黒い煙が上がっていく。

 洞窟で見た時よりも酷そうだ。


 仙女の気で開いた扉は、太陽よりも吸血鬼を焼いた。





私、小隊と連隊の説明してませんね、、多分。


補足説明。小隊=25人、中隊=小隊×8=200人、大隊=中隊×4=1000人、連隊=大隊×3=3000人

という計算をしています。

連隊は必要に応じて大隊が増えてきます。

連隊長は他の作品で言うと大将ですかね?


また完結したら適切な場所に説明移します、、、。

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