ごめんね、未来を見てしまった
悩んでいても朝はやってきて、目を開けたりつぶったりを繰り返しているうちに窓の外から細く光が差し込み始めた。
…今日が在宅ワークでよかった。
ただでさえ頭が回らないのに、出社して玉地と顔合わせながら仕事なんて手につかないことが目に見えてる。
「はぁ…とりあえずコーヒー…」
キッチンで昨日から氷出ししていたアイスコーヒーを取り出して、たっぷりミルクをいれる。
とにかく糖分が欲しくて、クッキーやチョコレートを一掴み掴んで部屋に戻った。
薄暗い早朝の少し冷たい空気の中、ベランダにでてコーヒーを啜る。
ベランダにしいた人工芝は裸足の足にちくちくと刺さり、何故か実がならないかぼちゃは青々と葉を茂らせている。
パツパツといつでも元気な多肉植物の群れをぼけっと見つめながら、クッキーを囓る。
もぐもぐと食べながら、ふと、この心地よい少し冷たい空気が貴重なものだと気づいた。
ここ数年記録を更新し続ける茹だるように暑い連日の猛暑と、日頃の運動不足を思い出す。
…歩くか。
歩きながら考えよう。
こんな家に閉じこもって考えていたって、昨日と思考は変わらない。
「…いってきまーす」
小さく呟いて、静かに玄関をでた。
公園に咲く大きな花を横目に通り過ぎながら、夜通しの思考を整理する。
―なぜ私は葵くんと別れたいのか。
玉地と付き合いたいから?
違う。
「…」
…ただ、葵くんと付き合っていると、息苦しい。
―葵くんが嫌いなの?
違う。
人として、尊敬している。
努力家で、優しい人。
…でも、彼の自傷的な努力は、見ていたくない。
嫌なことがあればある程度逃げてほしいし、自分で自分を守れるようになってほしい。
私の器は葵くんのものとどうしても異なる。
私は葵くんを受け入れられないし、きっと葵くんも私を受け入れられない。
私達は若くて未熟で、だから上手くこなせないだけなのはわかってる。
でも、きっと、この瞬間感じた苦しみや不安感はこの先どんなに付き合っていてもついて回る。
私は葵くんといると、苦しくて、疲れる。
疲れると、葵くんを嫌いになってしまう。
良い人である葵くんを嫌いになる私は、どんどん歪んでしまう。
そして私といると、葵くんは、停滞し続ける。
「…」
生ぬるい風が吹いて、昇ってきた太陽に目を細めた。
だから、別れなきゃいけないんだ。
玉地とか、セックスとか関係ない。
私と葵くんの未来の問題だ。




