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セフレもち男を好きになるということ  作者: 一華花
第一部 23歳のもやもやする初恋
10/58

クズも葛藤する[2]

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「―花火?」


『うん。今年も行かないかなって思って。』


「あ~、そうだねぇちょっとスケジュール見てみるね」


あまりにも唐突かつ後ろめたさの最高潮というタイミングだったせいで、鳴り続ける葵君からの着信が切れるまで画面を凝視しかできず、30分後にかけ直した。


かけ直すと、花火大会の話題が出てきた。


地元が近かった彼が一人暮らしを始めてから会う頻度が減って、電話も久しぶりである。

その声を待ち焦がれた時もあったはずなのに、今、一言言葉を発する度にかなりのエネルギーを消耗しているという現実がつらい。


…そして、空白のスケジュール帳を見てどう断ろうかと必死になっている自分に、反吐が出そうになる。


別れをきりだそうと決意したその日にこんな電話が来るなんて、皮肉すぎる。


「…えーと、ごめん。

花火大会の期間ちょっと大事な予定が入っちゃって…」


『あらら。そっかぁ、3日間全部だめそう?』


カレンダーの空白を爪で引っかきながら、必死に声を取り繕った。


「う…ん、ごめん」


『…そっか。

じゃぁさ、ちょっと遠いんだけど車出すし、来週にもあるみたいなんだけど、』


「あ~来週、か…えぇと」


なんでこんなに食い下がるんだろう?と冷や汗をかきながらふと疑問に思って、そして、心臓がぐっと苦しくなった。


―彼が花火に誘ってくれるのは、半年前に花火と彼氏の着物姿を見たいなと私がぼやいたからだ。

葵くんはそれをきっと覚えていて、誘ってくれている。


まっすぐで素直な人だから、私のへたくそな嘘にも気づいていない。


「…花火、覚えててくれたんだね」


『ん?あぁ、僕も見たかったから。

着物着るなら車の方が都合もいいだろうし、どうかな?』


あぁ、私は、

―彼がこれから私を想って提案してくれるもの全てを、どう断ろうか悩むんだ。


気づいた瞬間に、あんなにも喉で渋滞していた言葉が滑り出てきた。


「―ごめん葵君。来週もちょっと遠出はできなさそうで、でも近場なら会えるから、会いたい。

葵君来週実家に帰るでしょ?


最寄駅まで行くから、少し時間もらってもいいかな。」


『ん?そっかぁ、分かった。了解』


「急にごめんね。…花火も、ごめん。」


『ん~?全然気にしないで。』


「…ありがとう。

明日も仕事だし、そろそろ寝ようか。

おやすみなさい」


『ん、おやすみ』


通話の切れたスマホをもった手をだらんとおろして、ソファに沈み込んだ。

精神か体力か分からないけれど、ぐっと消耗して、暫く力が入らなかった。


最低だなぁ私。


あまり連絡頻度も高くないし、デートも多いわけではない。


でも葵君は仕事に悩んで落ち込んでいるときでも私を出迎えてくれるし、私を好きだと目で、口で語ってくれる。


その彼氏の気遣いを、無下にすることに消耗している。


「…っとに、最低すぎるな、私」


0時を過ぎても全く寝れる気がしなくて、でも何もする気が起きなくて、同じ動画をぼーと繰り返し見ていた時、LINEの通知が来た。


『猫飼いて~』


なんてことない玉地からの暇LINEを見て、止める間もなく満たされた気持ちになって、そしてすっと体の中が冷えた。


「まぁじ、さいてー…」


葵君からのおやすみメッセージと玉地のメッセージが並ぶ画面を見ていられなくなって、スマホの電源を落としてベッドの中で胎児のようにきつく、丸まった。


眠れる気はしないけど。


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