プロローグ
ねぇ、あんた、本気なの?」
夕焼けが照らす学校の屋上。
「あぁ、本気だぞ」
春馬は夕焼けを背に振り返る。彼の背から差し込む光は神を照らす後光のようでありながら、どこかはかなげであった。
「でも、い、いくらなんでも――」
彼女は少し言葉に詰まりながら視線を落とす。
「いくらなんでも、世界の為に命を擲つなんて」
そこで彼はやや笑みをこぼしながら、
「仕方ない。もし僕1人でこの世界が救われるなら……」
「誰かの犠牲のために成り立つ世界なんて何の意味があるの?」
「誰かの犠牲によって成り立ってきたのが、この世界の歴史なんだろう」
春馬と南は見つめ合い、もとい自らの決意を伝えるがごとく目を凝視し続け――
「やめろぉぉぉぉぉ」
「やめてぇぇぇぇぇ」
「えぇぇぇ、面白そ~なのにぃ」
春馬、南、両名が机を叩いて近江を封殺。近江は不満そうな声を上げる。
南は黒板を叩いてさらに追撃。
「この案は悪くないけど、こんな小恥ずかしいこと言えるわけないでしょ」
「まったくだ。シナリオがおかしい」
珍しく春馬も南へと同調する。
『文化祭 出し物案
・食べ物屋台
・映画
・メイド喫茶 』
そう。文化祭である。
かたくなにメイド喫茶をしたがっている集団もいるが、今年は用意だけして遊びたいとのことで、文化祭は事前準備だけしてあとは流すだけの映画案も支持される。そこで近江が提案したシナリオが……アレである。曰くその手の映画をレンタルで見たらしいのだが、どうも流されやすい子である。
「じゃあ~」
近江はほんのり笑みを浮かべつつ、唇に指を当てる。
「私と春馬君のラブロマンスの方がい~い?」
「殺すぞ」
なお、3年4組による文化祭の出し物は映画に決まった。
因みにメイド喫茶は3年1組がやるとのことである。




