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蛍が丘高校野球部の再挑戦 ~悪夢の舞台『甲子園』へ~  作者: 日下田 弘谷
第8章 サッカー部&野球部連合試合
73/122

プロローグ

 島根県高校野球


 今までで全国――甲子園大会での優勝校が出ていないエリアの1つである。直近のドラフト会議で1位指名を受けてプロ入りを果たした日野。彼を擁する大野山南高校をもってしても全国制覇を果たせなかった。


 その理由とは?


 人口が少ないために必然的に才能のある選手が少ないというものがあるが、また別の理由も存在する。



「やっほぉぉい」


 制服姿の近江がグラウンドに倒れこむ。手を突くこともしていないことから顔面強打は免れないのだが、彼女はケガひとつしなかった。


「にゃははぁ。すごい雪ぃ」


「ほんと、今年の雪は一段とすごいなぁ」


 春馬はそれにはまった足を引き抜く。


 東京都・大阪府のような都心でおきれば、間違いなく大規模な交通マヒが発生。それに伴い都市機能がダウンすることは免れないレベルの大雪である。


「この雪だとボールを使って練習できないし……どうするかなぁ」


 そう。島根県では『大雪』という、冬場の練習では障害になりえるものが存在するのである。


「去年はどうしたっけぇ?」


「去年はほとんど筋トレとか、休みの日は体育館を借りたこともあったな。もしくは走りこむか」


「走りこむの嫌だ。楽しくない」


 起き上る近江。彼女の制服は雪まみれである。


「じゃあ、どうする?」


 蛍が丘高校野球部の弱点は、連戦に耐えうる体力がないことである。ここで走りこんで、しっかり体力をつけておくのも来年に繋がることであろうが……


「ボール使って練習したいなぁ」


「白い雪がバックだとボールが見えないし、そもそも跳ねないし。それに冬の日にボールを受けると手が痛いし」


「じゃあ、体育館でシャトル打ちとか」


 シャトルというのはバドミントンのシャトルのこと。体育館の中でボールをかっ飛ばすわけにはいかないため、飛びにくいシャトルでバッティング練習をすることもある。


「体育館は他の部活で埋まってる。空いている時は確保()っていいけど、晴れているなら外でやりたい。けど、グラウンドと体育館の二重予約はできないんだよな」


 つまるところが雪によって野球部の練習が大幅に制限されているのである。


 練習手段が限られてきた中で不満そうに立ち上がる近江。制服姿で雪の上を転がっていただけに、体中雪まみれ。そして溶けた雪でびしょ濡れである。


「寒い」


「だろうな」


「……」


 近江はつぶらな瞳で春馬を見つめ、


「ぴょ~ん」


 飛びついた。


「く、る、な」


「寒いぃぃ。ぎゅってしてぇぇぇ」


「バカ野郎。そんなびしょ濡れのヤツに抱き着かれたら、こっちが寒くなるだろうが」


 温めてほしい近江と、それを拒絶する春馬の戦い。


 2人が馬鹿馬鹿しいような、微笑ましいようなやり取りをしていると、見知ったクラスメイト数名が出てくる。


「おぅ、新田。ここにいたか」


「なんのようだ。あっ、だから」


 手袋と毛糸のマフラーと、防寒はバッチリの最上。


「近江ちゃん、見た目からして何をしていたのか分かるよ……」


 横にいたのは、雪まみれの近江にあきれる楓音。


「新田。ちょっとお前に用があるってやつが」


「僕に?」


 近江のハグを拒否しながら最上の方へと目を向ける。


「よっ。春馬(ストライカー)


「鈴木。なんだ?」


 クラスメイトでありサッカー部キャプテンの鈴木。


「いやぁ、その、なんだぁ?」


 彼は頭の後ろをかきながら、


「サッカー部と野球部で試合しない?」


「……は?」


「へ?」


 春馬が近江の拒絶をやめてしまい、近江が春馬へのハグ要求をやめてしまうほどの提案であった。

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