プロローグ
「やっぱり蛍が丘の野球部はオリジナリティをコミットする必要があるわけで、でもルールを破るのではなくてコンプライアンスは重要だと思う」
「……学校来てそうそう悪いが、新田。こいつ、何を言ってるんだ?」
「蛍が丘高校は独自性を確約する必要性があるが、ルールはしっかり守ろう」
「いや、そうじゃなくてだな……」
学校に来たばかりの最上に対し、近江がおかしなことを言いだす事案が発生した。何やら主張する彼女に、春馬は面倒くさそうに日本語訳。楓音は分からない単語を電子辞書で検索。
「企業系のドラマを見たんだと」
「あ、なるほど」
流行に流されたタイプらしい。
「かと言ってとにかくブラッシュアップするわけじゃなくて、ビジョンをしっかり持って、シナジーも考えつつ、クリエイティビティを持ってイノベーションを起こすべき」
「かと言ってむやみに練習すべきではなく、将来的な目的を持って、相乗効果も考えつつ、創造性を持って革新を起こすべき」
「新田はよく分かるよな」
「私も検索が追いつかないよ」
「まぁ、こいつの使う横文字なんて程度が知れてるしな」
「だから、藪からスティックなトークだけど、トゥデェイもプラックティスを頑張ってトゥギャザーしようぜ」
「だから藪から棒な発言だけど、今日も練習を一緒に頑張ろう」
「近江ちゃん、なんか違うの混じってる」
「まぁ、あれはある意味時代の先駆けだよなぁ」
実際のところアレとソレは、言語的な面での大差はそれほどないのである。
「それはそうと、新田。そろそろ次の試合だよな」
「だから近江があんなことを言ってたわけでもあるんだがな」
そうでもなければ仮に企業系ドラマを見たからと言って、すぐに近江が不慣れな横文字を使いだしたりはしないだろう。基本的に彼女は野球バカなのである。
「きっとミーたちなら、次の相手にもウィンできる」
「散々『Yes we do』と言ってたのに、そこの私たちは『ミーたち』なのな」
そろそろ腹が立ってくるところだが、近江のバカ発言と思えばスルーもできる。
「ただ気になるのが、ここまでずっと県内での戦い」
春馬は次の一戦にひとつの思いがあった。
「死に霊の悪夢以降、初めてとなる県外対戦か」




