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蛍が丘高校野球部の再挑戦 ~悪夢の舞台『甲子園』へ~  作者: 日下田 弘谷
第6章 女子野球? ~秋季島根県大会~
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プロローグ

「秋。それは読書の季節」


 教室の窓から入った風が、机の上に置かれた数学の教科書をめくる。それと同時に彼女の茶色がかった短めの髪を優しく撫でる。


「秋。それは紅葉の季節」


 その教科書の上へ、オレンジ色の葉っぱが舞い降りる。


「そして秋――」


 さらに風が仁王立ちしている彼女の周りを駆け巡る。


「野球の季節だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「いいから復習テストの勉強するぞ」


 春馬は無理やり座らせて勉強再開。


「でも春馬く~ん。秋季大会も体育祭も近いんだよぉ? 勉強してる場合じゃないよぉ」


「テストは明日でもっと近いけどな」


 近江は毎回のテストで赤点を連発するほど残念な学力の持ち主。しかも「春馬君と一緒のクラスがいい~」と、あろうことか理系クラスを選択している。その結果、主に数学にて苦戦している様子である。


「もぅ、数学なんて分からないよぉ。こんなの勉強して何になるのぉ」


 勉強しない奴の決まり文句。アホ集団の蛍が丘高校では1日1回以上は誰かが言っているセリフである。


「読書の秋なんだろ? 数学の教科書でも読んでろよ」


「野球漫画読んでるからいいもん」


「高校生にして留年するぞ。こいつ」


 2年生にしてこれである。文系クラスならまだしも数学ⅢCがある理系クラスの場合、3年生では苦戦必至である。


「よぅ、新田。やってるな」


「春馬くん。近江ちゃん。おはよう」


 偶然一緒になったのであろう最上と楓音がそろって教室へ。


「こいつの学力壊滅だからすげぇキツイぞ。教員目指すのやめようかと思うくらいだ」


 第一志望は広島大学教育学部の春馬。将来の夢は高校教員なのだが、高校2年生にして心が折れかけているようである。


「もっと気を楽にもてよ、新田。まだ高校2年生だし諦める段階にねぇぞ」


「そうそう。近江ちゃんは特別、特別。私なんて春馬くんに数学を教えてもらったおかげで、苦手なところで70点も取れたし」


 物は考えようであり、現役の数学教員ですらなんとかできていないのが近江である。現役ですらなければ教育実習生でもない春馬に、彼女の数学力をなんとかしろと言う方が無茶である。


「そう言ってもらえて助かる」


「そうそう。ファイト」


「「お前がな」」「近江ちゃんがね」


 もっとも頑張るべきなのは近江であって春馬ではない。


「さぁ、やるぞ」


「ふへぇ」


 勉強を続けようとするなり、あからさまに嫌な表情を浮かべ始める。


「頑張れや。僕は何もできないけど、可能な限りで協力してやるから。学力オール1位の新田には及ばないけどな」


「じゃあさっそくだけど、今日の練習は任せた」


「何かあんのか?」


「生徒会の会議。この時期は体育祭やら野外活動やら行事が多くてな。それも2年生の」


「そうか。分かった。野球部は僕に任せて頑張ってこい」


「頼んだ。終わり次第合流するから」


 春馬は野球部監督であると同時に、生徒会長・南の推薦により副会長にも就任。結果として文化祭や体育祭、さらに修学旅行がない代わりに行われる野外活動など。特に行事の集中する秋ごろは大忙しである。


「無理すんなよ。おめぇは他のヤツの何倍も働いているんだから」


「分かってるよ。だから無理せず休んでるだろ」


「サボってるじゃなくてか?」


 授業サボりについて指摘する最上に春馬は目を逸らす。


「その件に関しましては、担当者不在のためお答えできません」


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